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【2020年12月】 読んだ本6冊

2020年も、もう終わりますね。今年は特に後半に、たくさん本を買って読みました。(積ん読本も増えましたが。笑)

そして昨日、無事仕事納めをしたので、仕事初めの1月2日(あゝ接客業)まで、ひたすら本を読んで過ごそうと意気込んでおります。

それでは、12月に読んだ本6冊をご紹介します。

・流浪の月/凪良ゆう

2020年本屋大賞受賞作。恋愛でも友情でも家族でもなく、他人からは理解されないけれど唯一無二の「関係」「自分の居場所」について描かれている作品です。内容だけ聞くと難しそうですが、読み口がライトで、4,5時間で一気に読めました。

主人公たち二人の関係性は美しく表現されていますが、それを取り巻く人々や世界はあまり気持ち良いものではないので、好き嫌いが極端に分かれる作品だと思います。でも、人間関係、特に恋愛において「こうあるべき」という考えに縛られたくない人には、とても刺さる作品なんじゃないかなと思いました。

主人公の境遇が、若干わたし自身の境遇と似ていて(両親がいないこととか。警察沙汰の事件には巻き込まれてませんが)「なんか、わかるかも…」と感じる部分がある度に、少し変な感覚になりました。この気持ちはなんだろう。。


・コンビニ人間/村田沙耶香

第155回芥川賞受賞作、かつ2017年の本屋大賞ノミネート作品。こちらも『流浪の月』と同様「普通って何?」また「就職、恋愛、結婚、出産って何?」ということを問う作品です。

「普通」の人間になれない女性が、現代的で無機質なコンビニという場所で、社会の歯車として働くことに喜びや自分の存在価値を感じるという内容。作品全体に「普通じゃない」感(不穏感、不安定感と言いますか)がずっと漂っているのですが、最後に救いのようなものがあって、良かったです。

作品そのものもさることながら、作者の感覚がおもしろく、興味深く感じました。(「青い小鳥を焼き鳥にして食べる」って!)著者の村田沙耶香さんには「クレイジー沙耶香」という異名があるらしく、相当ユニークで変な方なのだと確信しました。他の作品にも興味しんしんです。


・窓の魚/西加奈子

人気作家、西加奈子さんの初期の小説。読後の余韻からなかなか抜けられず、職場でしばしぼーっとしてしまいました。結末を知ってからもう一回読み直したくなる作品。間違いなく良作です。

「男女」「秘密」「不穏」「温泉旅館」「夜」「事件」「死」というキーワードにピクッと来た方にはおすすめです。男女4人それぞれの視点から語られると、同じ出来事が全く違って感じられて、彼らが決して互いに交わらないことが描かれています。

冒頭から物語全体の空気感を漂わせていて、ゾクッとしました。(読了後はさらに感じられます。)

バスを降りた途端、細い風が、耳の付け根を怖がるように撫でていった。あまりにもささやかで、頼りない。始まったばかりの小さな川から吹いてくるからだろうか。川は山の緑を映してゆらゆらと細く、若い女の静脈のように見える。(西加奈子『窓の魚』)

西さんの書くエッセイが楽しくて大好きなのですが、明るく愉快な西さんの暗部や繊細さを感じられました。

「サラバ!」が手元にあるのにまだ読めていないので、近いうちに絶対読もうと心に決めています。


・ナイン・ストーリーズ/J.D.サリンジャー

世界中で熱狂的な読者を有する作家サリンジャーの短編集。「今回の翻訳は私達が生きている今という時代の空気を強く帯びていて、おそらく自分の他のどの翻訳よりも早く古びるだろう」ということを訳者の柴田元幸氏ご本人が仰っている通り、確かにとても現代的で読みやすい訳となっています。

「フラニーとズーイ」好きなわたしとしては、「バナナフィッシュ日和」(個人的には野崎孝訳の「バナナフィッシュにうってつけの日」というタイトルの方がしっくり)を読んで、これからもグラース家とその長男シーモアを理解するために、根気強く挑戦しなければいけないなあと思いました。難解です。いや、むしろ永遠に理解できないことを楽しむべきなのか…。

次は「大工よ屋根の梁を高くあげよ/シーモア-序章-」を読もう。あとアニメの「BANANA FISH」もおもしろいらしいのでちゃんと観たいです。


以上、読んだ小説4作の紹介でした。次は新書2冊です。

・夜を乗り越える/又吉直樹

芸人で芥川賞受賞作家の又吉直樹氏の、本を読むこと、文章を書くこと、太宰治や日本近代文学についての考えが書かれている本。新書ですがエッセイのようで読みやすいです。

「なぜ本を読むのか」という、本好きなら「そこに本があるからだ」と簡単に答えてしまいそうな疑問に、真摯に向き合って答えを見つける又吉さんの姿勢に、尊敬の念を感じました。読書家のの鑑だと思います。

そして、なんと言っても太宰治の章で書かれている「夜を乗り越える」ことについて。

死にたくなるほど苦しい夜には、これは次に楽しいことがある時までのフリなのだと信じるようにしている。(中略)その瞬間が来るのは明日かもしれないし、死ぬ間際かもしれない。その瞬間を逃さないために生きようと思う。(又吉直樹『夜を乗り越える』『東京百景』)

うんうんと何度も頷きながら読みました。この後に続く化物のくだりがとても好きです。こちょこちょ。

もし太宰治も同じように考えられていたら、あの一夜を乗り越えられたかもしれないのに…と考えてしまいます。


・知の体力/永田和宏

細胞学者、大学教員、歌人でもある永田和宏氏が、大学で学ぶ若者をメインターゲットに、学ぶ姿勢や読書の大切さ、何事にも答えがあると決めつけないこと、言葉に出来ないことを大切にすることなど、「知性」を自分自身で身につけて生き抜くための考え方が書かれています。

個人的には最終章の「『輝いている自分』に出会うには」の内容がとても良かったです。「愛する」ということについて、モヤモヤと考えていたことの答えを得ることができ、「そういうことだったのか」と腑に落ちました。

以前に「〈他者〉を知ることによって初めて〈自己〉という者への意識が芽生える」と書いた。(中略)その視線が気になる時、視線の送り手たる〈他者〉はその他大勢としての他者ではなく、特別の存在であるにちがいない。〈他者〉から〈相手〉という存在に変わる瞬間である。
そんななかで、ある特定の〈相手〉の前に立つと、自分がもっとも輝いていると感じられることがあるとすれば、それはすなわち相手を「愛している」ということなのだろう。その相手のために輝いていたいと思うことが、すなわち愛するということなのである。(永田和宏『知の体力』)

一番刺さった部分は引用していません。この章を読むことができただけでも、この本を買って良かったと思えるくらい、わたしにとっては濃密な、これからの人生で大切にしていきたい考えとなりました。もし読む際には、最後まで読み切ることをおすすめします。


以上6冊が、今月読みきった本でした。

実はここしばらく小説と疎遠になっていたので、月に4冊も小説を読むのは本当に久しぶりです。でもやっぱり、物語の世界に没入するのは楽しいなあ。

仕事にかまけて読書モチベーションがずっと低かった反動で、今は本を読みたい欲がむんむんしています。

冒頭で述べたとおり、積ん読本がたーっぷりあるので、行く年来る年は読書に勤しみます。

それではまた。


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