アイデア(what)と企画(how)をつなぐのは、「Why?」という問い。

ーーー
有料note(100円)ですが、最後まで無料でお読みいただけます。ご購入いただくと、僕のnoteがプレミアムにアップグレードされ、予約投稿が可能になり、定期更新が捗ります。よければポチリとご支援ください。
ーーー

こんな本を書いたことが、あるんですよ。まったくパワポの話はしないけど、パワーポイントの名前を冠した、看板に偽りあり本。

こちらのnoteでも書きましたが、タイトルやテーマを、著者が好き勝手に決められるようになるには、実績が必要だったりするんですよ。これは、致し方ない事なのです。

そんな愚痴はさて置いて、この本で書きたかった(し、実際それを書いたつもり)のは、「アイデアを如何にして企画という形にまとめ上げるべきか」というお話です。

このテーマは、ある意味、僕の仕事におけるメインテーマの一つと言っても良いのではないかと思ったりもしているんですよね。折に触れて、ずーっと考え続けています。

この本を世に出したのは、3年前(2017年6月)なのですが、その2年後=今から1年前に、僕はFacebookに以下の投稿をしていました。

「企画書をかける」という人は多いが、多くの場合「フォーマットがあって、それを埋める」ということをやってるだけだったりする。
それは、本当に、文字通り「企画書をかける」だけであって「企画を作れる」とは違うんだよね。
企画書のフォーマットは、効率的に物事を進めるためには(書き手にとっても読み手にとっても)便利なのだけど、企画ってもっとクリエイティブなものだから、もっと柔軟に考えて行く必要がある。枠組みを外す/枠組みから外れることが大事。
最終的に、決められた企画書フォーマットに落とすのは構わないけれど、最初からマス目を埋めに行ってはいけないのだ。

そして、つい先日、友人と語り、こういう結論に辿り着きました。(こちらは、今年のFBへのポストです)

アイデアはwhat.
企画はhow.
両者の間を繋ぐのはwhy.

企画の人は、アイデアマンのwhatを、whyを通じて拡張し、howに落とし込む。
自分が企画の人なのか、アイデアの人なのかを見極めた方がいい。(僕は、完全に企画の人。)
線引きを曖昧にして「どっちもできる」ということにしてしまうケースが多いけど、軸足がどっちなのかを見誤ると、コケる。

僕の言いたいことは、このポストに集約されていると思うのですが、なんのことだかわかりにくい(というか、解釈の余地が多い)のではないかと思いますので、もう少し詳しく解説を試みたいと思います。

アイデアと企画の関係

アイデアはWhatです。つまり、「こういうことをしたらいいんじゃないか」というお話です。これが大正解なのか、やや正解なのか、大外れなのかは、この時点ではわかりません。

企画はHowです。正確に言うと「Howまで明確化されていて、実現可能な状態になっている」ということです。正確に言えば、What+Howなのですが、アイデアがWhatなので、まぁ、「企画はHow」としておくほうが分かりやすいかなと思います。

両者をつなぐのはWhyです。Whatは多くの場合、単なる思い付きです。この思い付きをそのままHowまで落とし込んでも、良い結果に繋がらないケースが多いんですよね。徒労に終わる、って奴です。そこで、Why?という問いをぶつけます。

・なぜ、それが良いと思うんですか?
・なぜ、それを思いついたんですか?
・なぜ、他のアイデア(あるいは既存のアイデア)ではダメなんですか?

テクニカルな話としては、5W1Hの残りを全部詰め込んで「誰のため?」とか「どういう場合に?」とか質問すればいいんですが、本質的にはWhy?を繰り返すという形がシンプルでしょう。

これを繰り返すとWhatの裏側にある、意思や意向、背景、事情が見えてきます。そういうものを組み込むことで、Whatがブラッシュアップされて行きますし、検証すべき仮説(ターゲット顧客、マーケットサイズ、競合優位性、実現難易度・・・など)が分かります。これらが分かると、より精度の高い企画に落とし込むことができるようになります。

画像1

アイデアマンか、企画マンか

そうしたときに、考えるべきは「自分が、アイデアの人なのか、企画の人なのか」ということです。

人は、そんなに万能じゃないので、得意不得意があります。能力の偏りがあります。神は二物を与えてくれないんですよね。

そこで、便宜上、アイデア寄りの能力の人をアイデアマン、企画寄りの能力の人を企画マンと呼んでおきましょう。どちらもできる人は、さしずめ「スーパーマン」というところですが、そんな人は、きっと、このnoteなんて読んでないはずなので忘れましょう。

画像2

アイデアマンは、アイデアを出すのが得意です。思いついちゃいます。もちろん、楽して生きている、というわけではなく、日々、いろんな情報源に積極的に触れて、自分自身の引き出しを増やしている方が大半だと思います。ただ、彼らの価値は「どうやって思いついたか」ではなく「何を思いついたか」によって決まるので、アイデアを生み出すプロセスの再現性とか言うものには、そんなに興味が無いケースが多いんですよね。「だって、おもしろいんだからいいじゃん!」とか言います。

企画マンは、企画に落とし込むのが得意です。アイデアマンに「Why?」を投げかけ、アイデアの裏側に隠れた思いを突き止めます。そして、実現可能な形に整え、いろいろな仮説を確認しながら、最終的な製品・サービスに昇華していきます。(プロトタイプを作りながら進める、というケースでも、やっていることは同じです) 「再現性を高める」とか言います。

先ほども述べましたが、両方できる人は稀です。正確に言うと、「両方完璧な人は稀」です。どちらもある程度できる、という人は割といるんですけど、軸足がどっちなのか(両方とも得意だがこっちの方が好き、も含む)は認識しておいた方が良いです。

得意領域を見誤る、という「ありがちな悲劇」

アイデアと企画の話に限らず、自分の得意領域を勘違いしたまま生きていると、ガッツリ躓いてしまい、自分自身のみならず周囲も巻き込んだ大惨事を引き起こすことが多いんですよね。

アイデアマンが、企画マン的な立ち位置で仕事をすると、他の人を説得する/納得させることができなくて困ります。他の人というのは、上司などの意思決定者の場合もありますし、チームメンバーの場合もあります。何がしたいのか、それは、なぜなのか。それにあたって、どういうハードルがありそうか。そもそも、ちゃんと儲かるビジネスになるのか。このあたりを潰しこんでいく作業で躓きます。その結果、チームの推進機能・運営機能が阻害されます。これでは、せっかくの良いアイデアが実現に至りません。

企画マンが、アイデアマン的な立ち位置で仕事をすると、求心力がありません。優れたアイデアはパワフルです。人を巻き込んで、どんどん大きくなります。そのアイデアをロジックによって整理し、成功の確度を上げていこう、という取り組みが企画です。得意じゃない人が無理してアイデアをひねり出すと、魅力的じゃないアイデアに対して、論理でこねくりまわす、という「厨二病が書いた小説」みたいな企画ができあがってしまいます。まぢコケる気しかしないわー。

もちろん、必ず、アイデアマンと企画マンのツーマンセルで行動しましょう、なんていうのは、100億円ゲットしてから起業しましょう、というようなものなので、アドバイスとしては役に立たないのですよね。

ということで、実践的なアドバイスをするならば
■ アイデアマンは自分でWhyを突き詰めよう。
■ 企画マンは、アイデアにはこだわろう。
です。

自分の得意領域で戦いたくなるんですが、良きパートナーがいないなら、足りないファンクションを満たすために、意識的に踏み込んでいきましょう。それだけで、失敗のリスクを大きく下げられます。

※ちなみに、チーム組成におけるファンクション充足については、こちらのnoteでも書きました。

僕の場合=企画マンの生き方

さて、ここからは毎度恒例の自分語りです。有益なことは殆ど書いてありませんが、本日解説した「コンセプト(概念)」の「具体例」としてお読みいただく感じでお願いできればと思います。

僕は、アイデアマン・企画マンで分類すると、完全に企画マンです。自分でやりたいものがあるわけではなく、誰かのやりたいことに寄り添っていくスタンスです。

僕のコンサルティングスタイルにも、明確にその傾向が表れています。

僕は「こうすべきだ」を持ってプロジェクトに臨むことは、殆どありません。もちろん、仮説はありますが、基本的には「あなたは(あるいは、みなさんは)どうしたいんですか?」を突き詰めていくスタイルです。突き詰めていく中で、論理的な矛盾があれば、何がその矛盾を引き起こしているのかなどをしっかり明確化していくため、後半に差し掛かると、まるで「僕の意思」であるかのようにプロジェクトの参加者の皆さんから勘違いされたりもしますが、僕が目指す立ち位置は「場の代弁者」です。

そのため、論理性、再現性にこだわります。アイデア(もしくは、アイデアの種)は、クライアントの中にあり、僕は、それに対してWhy?をぶつけていくわけですが、ここで「僕の主観」に囚われてしまうと、議論が、アイデアでの殴り合いになってしまうんですよね。ですから、「論理的に考えるとどうなるか」「再現性はあるか(仮に失敗しても、次に活かせるか)」という観点でWhyをぶつけ、その答えを整理・体系化していきます。

時折、アイデアを求められるケースもあるのですが、その場合は(自分のアイデア力には自信がないので)拙著に書いたように、論理的にアイデアをひねり出すという再現性重視の荒業に頼っています。尚、この時も「これまでの議論を通じて得られたインプット群」を論理的に整理・体系化して、その重なり具合や抜け漏れ具合などを俯瞰した上で、重複部分に着目して深掘りしたり、空白部分の穴埋めをしたり、というようなかたちで、あくまでも「場の代弁者」としてのスタンスでアイデアを出しています

こういう風に「自分が得意なのはどこなのか」と「それをどういう風に使えば、(個人としてもチームとしても)価値が大きくなるか」を考える事が、事業を成功に導くために、極めて重要なことだと思うんですよね。

餅は餅屋、というやつです。あなたが何屋さんなのかを意識して、事業・ビジネスへの関わり方を決めていただくと良いんじゃないでしょうか。

ここから先は

0字

¥ 100

いただいたサポートは、このnoteで紹介する書籍の購入に使わせていただきます。