005.官能小説と一般小説を書き出しだけで見分ける力を養うnote

ここは、古今東西の様々な小説の一行目だけを読んで、それが一般小説なのか、或いは官能小説なのかを見分ける力を養うための場所です。
以下に示す4択の文章はいずれも、実在の小説の書き出しを引用したものです。
ひとつだけ隠された官能小説の書き出しを見極める訓練をすることで、あなたも官能小説とそれ以外の小説とを書き出しだけで判別することができるようになるかもしれません。



<Room.005>
次のうち、官能小説の書き出しを1つ選べ。


A.だれにだって忘れられない夏の一日があるよな。

B.男はいくつになっても幸せを求めている。

C.男は今まさに悪魔を呼び出そうとしていた。

D.この世は、円と線でできている。






<Room.005>解答

A.『キング誕生 池袋ウエストゲートパーク青春編』/石田衣良
B.『h+ エッチプラス』/神崎京介
C.『圧迫』/大田良馬
D.『眩 くらら』/朝井まかて

解説

正解はB.『h+ エッチプラス』/神崎京介 でした。
A.あります。忘れられない夏の1日、あります!やっぱり夏は官能の季節です。出典は超名作ドラマの原作シリーズ。B.「いくつになっても〜求めている」と断言することで普遍性と真実味を感じさせ、官能とまでは言えない男女のシビアなアレコレ小説の様相も呈している。まずはコレかな。と当たりを付けておこう。C.全く続きが想像できない。悪魔?魔法?異世界?それとも宗教、陰陽系?前択と同じ主語であることから、どちらかが正解と想像する。D.これは得意のメタファですか?だとしたら円ってなんですか。線て、もっとなんですか。出典は葛飾北斎の娘を描いた小説『眩 くらら』より。こんなクイズをやるよりも、こちらを読まれることを強く推奨します。

※おことわり

以上は、あくまでも私的な言葉遊びであり、原作者、作品を貶める意図はありません。
使用させていただく文章は全て小説の書き出しですが、短編集やアンソロジー作品の場合、問題の構成を考慮して必ずしも書籍の冒頭箇所ではない場合もあります。

「(前略)官能小説は性欲をかきたてるためのものではなく、もっと感性の深くにある淫心を燃えたたせるものです。(後略)」 

永田守弘 『官能小説用語表現辞典』ちくま文庫



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