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名前のない関係が時には自分を救う

#5夜明けの全て


あなたに向けた作品

本作はパニック障害の山添と重度のPMSに悩む藤野が主人公。
これだけ聞くと、自分には関係ないと思う人は多いだろうが、
現在、外見だけではわからない持病を抱えている人は多い。
きっとあなたの周りにもいる。
その人と関わりを持ったとき、あなたは彼らとどう向き合いますか?
本作は病気を抱えている二人だけでなく、彼らの周りにいる人々にも
スポットを当てて見ていただきたい。
また、このような題材の映画は重いと思われがちだが、
全くそんなことはなく、逆にクスッと笑える箇所がいくつもあり、
とても見やすく、逆に気持ちが楽になるような素敵な映画です。

救いの連鎖

自分自身がマイノリティ側になるという経験はとても大切だが、
人の弱さを知る経験も同じだけ大切なのではないだろうか。
それは自分自身の弱さであっても、誰かの弱さであっても、
”弱さ”という部分に向き合った経験は、
いつか必ず誰かを助けることができるのではないだろうか。
本作でも”優しい人”がたくさん出てくるが、
彼らは生まれ持った優しやではなく、
過去の”経験”で”その優しさ”を持ってる。
そしてその経験から藤野を救い、救われた藤野は山添を救う。
そんな救いの連鎖が起こっていた。
辛い経験をしたことがあるから、かけられる声があり、
弱い立場になった経験があるからこそ、
助け方を知れるのではないだろうか。

名前のない関係が助けになる

彼らは恋人でもなければ友達でもない。
仲が良い同僚というわけでもなく、ただ辛い時は助け合う。
そんな絶妙な距離感で、まさに名前のない関係。
その関係性が時にはとても重要で必要なのではないだろうか。
二人の間にセクシャリティな出来事がないのが
本作の良いところなのだ。
同性だからこそ傷つけてしまったり、分かち合えないこともある。
そんなとき助けになってくれる相手が異性であっても
必ずしも恋愛関係になるということはない。
また恋愛が絡まないからこそ依存関係でなく共存関係になれるのでは
ないだろうか。

16ミリフィルムが映し出す世界

本作はストーリーはもちろんですが、映像が素晴らしい。
16ミリフィルムが映し出す世界が映画のタイトルでもある”夜明け”のような淡く儚い世界で、ずっと見てられるような心地よさがある。
不安に感じる夜も、孤独を感じる冬も、本作は温かく、本来の美しさを
見せているそんな映像だ。
本作でキーワードとして何度も出てくるプラネタリウムとも重なるように感じた。
恐らく今後、自分が辛い時、この作品はセリフよりも、映像で
自分を癒してくれるだろうと思う。
今年のベスト10に入るであろう作品でした。








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