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Things開発チームが語る2024年の展望「フルサイクルでありつづけたい」│ Interview #森田秀幸(エンジニアリングマネージャー)

こんにちは、株式会社Things 公式note編集部です。

私たちは、バリューチェーンの改革を推進する製品開発プラットフォーム「PRISM」の提供を通して、製造業のデジタルトランスフォーメーションに取り組むスタートアップです。

前回は、コーポレート兼スーパージェネラリストの柘植を囲んで、創業期のスタートアップ企業で働く楽しさについてお話しました。

今回は、「プロダクトと開発組織の来し方・行く末」というテーマで、エンジニアリングマネージャーの森田が登場。

エンジニア歴約20年、小学生でプログラミングをはじめ「英語のifよりも先にプログラムのif文を覚えた」というギークなエピソードを持つ森田が、CEO鈴木、テックリード加藤と、膝を突き合わせて話しました。

製造業のDXを推進する当事者による、”中の人”トークをとくとご覧ください!


森田 秀幸(もりた ひでゆき)

株式会社リクルートにて十数を超える新規サービス開発プロジェクトに従事し、サービスシステムの開発責任者や事業責任者などを担当。その後ストリートアカデミー株式会社にてCTOとして技術基盤や開発体制の構築・改善を務める。2023年8月Thingsに入社。


ギークであり、ビジネスの視点もある

鈴木(CEO、以下「鈴木」):「PRISM」の正式リリースを発表して半年が経ちました。プロダクトをすくすくと育ててくれた開発チームを代表してお二人に、今日はさまざまな視点で話を聞かせてもらえたらと思います。まずは出会った当初、森田さん、加藤さんの間でこういう会話したなあとか、思い出を教えてください。

森田(エンジニアリングマネージャー、以下「森田」):順を追って言うと、2022年の夏ごろに加藤さんがテックリードとしてジョインし、その約半年後、2023年初頭に僕がエンジニアリングマネージャーとしてジョインしたという流れでしたね。

加藤(テックリード、以下「加藤」):開発定例の初期で2人でmiroを見ながら色々話した時に、サービス品質や開発体制などの課題について解像度がどんどん上がり、すぐにアクション実行できる所まで落とし込めました。否定せず丁寧に吸い上げてくれた事も安心感につながりました。

鈴木:今の開発チームには、お客さまへのヒアリング、要件定義、実装までできる頼もしいメンバーが揃っていますが、その中で森田さんは精神的支柱のような存在ですよね。エンジニア歴に加え、経営レイヤーのご経験は頼もしいです。

加藤:鈴木さんは、森田さんと初期にどういう会話をされたんですか?

鈴木:ジョインしていただく前に、ご飯を食べながら色々と議論をしたことが印象的でした。エンジニア歴が長いのでギークな方なのかな、とイメージしていたのですが、0→1での事業価値の創り方・磨き方や、技術が貢献できる部分に関して独自の価値感をお持ちで。SaaS事業として複合的にプロダクトを重ねるためには創業初期とは言え、先々まで見据えたアーキテクチャ設計が不可欠ですが、森田さんであれば同じ目線で事業を創っていけそうだな、と感じました。

森田:それは多分、過去の失敗が活きています。前職以前に、社内公募で新規事業に挑戦したことがあるのですが、売上が30万円くらいしか立たず、どう見ても失敗という経験をしたんです(笑)。エンジニア歴が長いからプロダクト開発はある程度できるけれど、形にしたからといってそのビジネスが成功するとは限らない。だからビジネス視点を身に着けようと。ちなみに、加藤さん・鈴木さん間の第一印象はどんな感じだったんですか?

鈴木:加藤さんは副業からのジョインでしたが、コアな機能をほぼ一人で担って頂いていたため「加藤さんいつ休んでるの?」と当時のプロジェクトマネージャーと良く会話していました。

加藤:個人的にも社会的にもバリューを出してもっと情熱を燃やしたい!とアウトプットの場を求めていた時期で。余暇をほぼ「PRISM」の開発に充てるという関わり方をしていました(笑)。

鈴木:その時はコアメンバーが僕1人で他全員業務委託副業メンバーという構成だったのですが、プロダクトはどんどん作られていくという状況でした。資金調達の時にも、驚かれたんです。「どうやって作ったんですか?あなた非エンジニアですよね?」って(笑)。

左から森田(エンジニアリングマネージャー)、鈴木(CEO)、加藤(テックリード)


正反対の開発方法にトライした2023年

鈴木:2023年、開発界隈の一大トピックといえば、生成AIの出現でしたね。世界がサム・アルトマンを中心に回っている1年でした(笑)。我々もAIをプロダクトに取り入れて提供価値を広げていますが、実際いかがでした?

森田:生成AIは応用性が高い技術ですよね。今は「PRISM」の周辺機能で活用している状況ですが、今後はコア機能にもどんどん取り入れられると思います。

加藤:東京大学松尾研究室のLLMサマースクールを受講したことで、Things社内のAIと向き合う意思がまとまりましたよね!

鈴木:生成AIは学術的に解明されていない部分も多く、日々発見される技術にアカデミアが後追いになってるのも刺激的でした。それから、今年は「PRISMコンテナ」のβ版リリースとともに、コア機能である「目的別BOM」をリリースできました。あらためて「PRISM」の技術的な意義や提供価値についてはどう捉えていますか。

森田:階層型のデータを扱い、しかもそれがWebで実現できるというのは他社にはない強みです。たとえば汎用的な業務アプリ構築サービスは、色んな事ができる反面、最大2階層しか使えないという弱みもある。製造業のBOMは通常10階層以上、プロジェクトによっては50階層という世界なので、階層データの扱いは重要ですね。とはいえ階層型データをWebで扱うのは簡単ではないので、入社以前から技術領域として個人的に興味を持っており、鈴木さんと初めて会って「PRISM」のプロダクト詳細を伺った際にとてもワクワクしたのを憶えてます。

鈴木:前職のメーカーでDXを推進していた際、現場の発案をすぐに形に落とせるノーコードツールの強力さに感動し、技術部門での活用も検討していました。しかし、加工組立型の製造業にとって不可欠な階層構造のデータベースを扱えるWebシステムはほとんど存在しておらず、その時は断念しました。いざ起業して開発してみると、階層構造を扱うことがこれほど技術的なハードルが高いとは予想していませんでした。

加藤:開発初期は、ビジョンは壮大だけれど機能は実現できてない状態だったのが、100%ではないにせよギャップが埋まってきたというのが、今年後半の大きな変遷ですね。機能もどんどん増えていますしね。

鈴木:「PRISMコンテナ」のβ版をリリースしたことで、UXも大きく進化しました。構想から1カ月半でリリースに漕ぎつけたのも、大きなチャレンジでしたね!

森田:10月の展示会でデモを見ていただくことをターゲットにしたことで、余計なモノを削ぎ落して、本当に必要な機能を搭載してリリースできましたね。良いモノを作ろうと思うと、どうしても実装に時間がかかってしまう。タイムラインに制限がある中で「これだけは絶対に必要」と炙り出した結果は意外と悪くなかったと思います。

鈴木:「PRISMコンテナ」は、大元のデータモデルに手を加えずに、主にフロント側の工夫でUXを進化させたプロダクトなので、比較的短期間でMVPまで漕ぎ着けました。反対に「目的別BOM」は議論に徹底的に時間をかけましたよね。

森田:「目的別BOM」はプロダクトの根幹的な価値に関わる、コアな機能開発だったので試しに作ってみるという進め方ができなかったですよね。実現の仕方がさまざまある中で、中長期視点で「PRISM」にとってのベストはこれ、という結論を出すのが難しかった。

鈴木:6月ごろから議論をはじめ、実装に入ってもらったのが10月の後半ぐらい。リリースが11月の後半でしたので、実際にコードを書いている期間は一ヶ月ほどでした。コミット量が尋常ではなかったですよね。Githubを見るとこの時期の森田さんのコミット数がスパイクしてます(笑)。

森田:徹底的に議論したからこそ作るべきものは見えており、後はコードを書きまくればいいっていう状態だったんです(笑)。

加藤:「PRISMコンテナ」のタスクも差し込みで入っている中、10営業日で目的別BOMを仕上げねばと言いつつ、ミスなくちゃんと仕上げてたのはさすが百戦錬磨の凄みを感じました!その様子を見たエンジニアの清水さん「森田さん、ブルドーザーのように一気にタスク消化してますね…!」と言っていたのが印象的でした(笑)。

教え合える組織って良いよね

鈴木:2人はエンジニアリングマネージャー、テックリードを担っていただいてますが、日々の業務ではどのように役割分担しているんでしょうか?

加藤:副業の方へのパス役は、以前は自分だったのを森田さんに、という細かい分担はあるのですが、役割に明確に線引きはしていないですよね。開発に関しては清水さんも含めた3人で、リソース的に余裕ある人がカバーし合う感じで動いています。

森田:各々がなるべくフルサイクルを担う体制が今はフィットしていますよね。清水さん・加藤さんは高いパフォーマンスを発揮できる方なので、基本的にケアが必要ない。もう少し組織として大きくなっていくと、自分が誰かをケアするという流れが生まれていくのかなと。

加藤:自分もある程度裁量を持たせてもらって頭を使いながらやる方が好きですし、今のやり方はフィットしています。

鈴木:相互に補完しあうことを通して、教え合う文化が形成されつつあるのかなと思っています。清水さんもインターンの方にプログラミングを教えたり、僕もたまにプログラミングを教わったりしているんです。また、SaaS事業である以上将来必ず採用がボトルネックになるので、新しく入社した方が早くキャッチアップできる、チームとしてサポートする体制をより強化したいですね。

森田:若い世代を見ていて思うのは、ソフトウェア開発の系譜や、技術のコンテクストを共有していくのは僕ら年寄りの役割だなと。マウントを取りたいわけでもないし、それを踏まえていないとモノづくりができないかというとそんなことはないのですが、ある新しい技術や考え方がなぜ生まれてきたのかという文脈を踏まえることで、「PRISM」に限らずソフトウェア開発や技術の未来を見通してく力が身につくかなと。

加藤:技術のルーツは、過去の歴史の中で積み上げられたベストプラクティスもセットになっていることも多いですよね。たとえ同じ判断であってもそうした背景を踏まえた上のものであれば、組織的な納得感も一段階上がります。 

組織作りの軸は「フルサイクル」

鈴木:組織のあり方はその事業の成長と一緒にアップデートしていくというものだと思うのですが、将来を見据えて、開発組織をこうしていきたいという展望はありますか?

森田:まだまだアーリー期が続くと思うので、デリバリーやソフトウェアの価値形成のサイクルを速めるためにも、個々が設計・開発から運用・サポートまでを担う、フルサイクルで動ける組織作りを継続したいとは思っています。一方で、これを10名以上の規模にするのは難易度が高いと思うので、「エンジニアとしての幅を広げていきたい!」という思いを持っている方を受け入れることも必要でしょうね。「今はフロントエンドしかできないんですけど、バックエンドも極めたいんです」という思いとか。その上で、ある程度フルサイクルにやっていきたいというWillを持ってる方が今は合うかもしれません。

Things開発メンバー

加藤:そのフルサイクル志向がある種、今のThingsにフィットするモチベーションかもしれませんね。

森田:ただThingsがもっと大きな会社になって上場も見据える時には、組織で大きなアウトプットを出していくフェーズになり、その時には僕らの立場や役割も違うものになっているでしょうね。

加藤:どのような組織に属するにせよ、ある程度のソフトウェア開発の文脈や知識、基礎的な技術は身に着ける必要があり、それが一定固められてるっていうのは、エンジニアとして一つ大事なことかなって思ってて。加えて、今はLLMが出現するなど環境が変わってくる情勢なので、柔軟に振る舞いを変えられる人がエンジニアとしては貴重なのかなとは思いますね。

鈴木:新しくThingsにジョインしたエンジニアは、2~3年後にどんな成長パスを描けますか?

森田:自分でオーナーシップを持ってプロダクトを創れて、それを事業として成立させるスキルを身につけられるコミュニティになれると良いと思います。こう言っては元も子もないですが、真のエンジニアであれば技術に関しては勝手に学んでいくと思うので、技術以外のことも学べると良いですよね。

加藤:自分も将来的には経営人材として存在感を発揮していきたいんです。その前段階として、エンジニアとして価値を発揮すると同時に、経営的な考え方や経験も吸収しながら働けているので、成長につながっている実感があります。ビジネスとエンジニアリング、両側面を把握できてるっていうのがやっぱり大事ですね。


ビジネスとの距離にエンジニアはどこまで肉薄できるか?

鈴木:最後に、2024年に向き合うであろう、エンジニア組織の課題について教えてください。

森田:技術的負債の解消が課題になってくると思います。コードベースも大きくなっていますし。これまではスピードこそが至上命題でしたが、中長期的にはそれに加えてプロダクトを安定して作り続けられる状態を担保したいですね。

鈴木:技術的負債が溜まれば余分な実装負荷という形の金利を払う羽目になる。負債が増え続けると利息が収益を圧迫して、その内債務超過になる構図に似てますね。意識的にリファクタリングをして、綺麗なコードベースを保てると良いですね。

加藤:リファクタリングのタイミングは大事だと思っています。大型の機能を追加するときまでになるべく整えて、今後の開発速度に悪影響を及ぼさないような状態を維持していくというのを今の開発チームでやりたいです。

森田:それから、どれだけ幅広い視点を持っていたとしても、エンジニアは作ったものをビジネス成果につなげることから一定の距離ができてしまうものだと思うんです。でも、距離がある上でどこまで肉薄できるかということに向き合う組織でありつづけたい。今作っているものがどのように「PRISM」のプロダクトバリューとなり、事業の成長につながっているのか、という状態を頭の中で描けていて、その上で日々のモノづくりができているという状態に組織力を高めていければいいかなと思っています。


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