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アーリーステージのスタートアップのリアルを覗いてみよう in 令和 │ Interview #04 柘植 亜美(コーポレート)

こんにちは、株式会社Things 公式note編集部です。

私たちは、バリューチェーンの改革を推進する製品開発プラットフォーム「PRISM」の提供を通して、製造業のデジタルトランスフォーメーションに取り組むスタートアップです。

前回は、テックリード 加藤が中心となり、PRISMが日本の製造業に浸透した未来についてお話しました。

さてThingsは創業期のスタートアップ企業ですが、メンバーはそれぞれの強みを活かし、バイタリティ溢れる働きぶりで活躍しています。

中でもコーポレートの柘植は、コーポレート職を前提に入社しながら、未経験だったマーケティングの領域でも活躍しています。これまで二度、展示会の手配を担当し、二度目の展示会は初回の6倍以上ものお客さまにブースを訪問していただけるという実績を残したほどです。

今回、柘植を囲んで話をしたところ、「創業期のスタートアップの裏側」がまるごと見える内容になったので、トコトンお届けします!

柘植 亜美(つげ あみ)

ファストフードやクラブのバーテンダーなど飲食業界を経験後、教育業界のエージェント企業にて人事・総務責任者を担当。エンジニア特化のエージェントでバックオフィス部門の立ち上げ、デザインファームでの新規事業立ち上げを経て、2023年6月にThings入社。

聞き手:鈴木(CEO)、加藤(テックリード)


水面下では常にもがいている

鈴木(CEO、以下「鈴木」):僕が最初に採用媒体で柘植さんのプロフィールを見たときに、ご経験の幅の広さに惹かれたんです。そんな柘植さんが入社してくれた理由を、改めて聞かせてもらえますか。

柘植(コーポレート、以下「柘植」):前職がデザインファームで、デザイナーがプロジェクトの上流から参画し高いパフォーマンスを出す姿を見ていたので、デザイナーの重要性を理解してる会社がいいなと思っていたんです。その会社によって、デザイナーが上流から入るか、出来た要件に合わせて手を動かす人になるかが分かれるなって。

鈴木:Thingsの主力製品「PRISM製品開発管理」は、導入初期は製造業の上流にあたる設計部向けに価値を発揮するソフトなのですが、設計ってデザインなんです。製造業では設計、すなわち上流工程をちゃんとやっておくことで、後工程もスムーズになるというフロントローディングという考え方があります。

加藤(テックリード、以下『加藤』):なるほど、それって、実はソフトウェアの開発も一緒かもしれません。

鈴木:仕様検討段階でデザイナーの視点がないと、実装しても使い勝手の悪いものになってしまいます。Thingsでは要件定義の段階からデザイナーやエンジニアに深く関与してもらうことで、手戻りの少ない実装を実現しています。

加藤:世の中的には、どうしてもデザイン=UIデザイン、ビジュアルというイメージがありますが、そういう捉え方もできるんですね。

鈴木:柘植さんは入社してそろそろ半年が経とうとしていますよね。スタートアップのアーリーステージなので色々仕事はお渡しできると嬉しいな、という期待はあったのですが、入社前と入社後で何かギャップはありましたか。

柘植:これまでバックオフィスの立ち上げなどコーポレート業務全般を中心にキャリアを広げ、新規事業の企画も経験していたので担当領域が広いことには慣れていました。しかしThingsに入社して改めて業務時間を集計してみると、コーポレート業務は1割以下で、残り9割はコーポレート以外に時間を費やしており、その点に関しては意外でした(笑)。

加藤:展示会の仕切りをほぼ1人でやったり、商談まで設定したりしていますもんね。初めて取り組む領域もそつなくこなしているイメージがあるので、「どうやって初めての業務をこなしているのか」というのが今日聞きたいところでした。

柘植:そつなく見えるのは、アヒルや白鳥のような感じで、外から見えるところでは澄ました顔で、水面下ではかなりもがいているんです(笑)初めての領域に取り組むときは、まずは検索するんです。たとえば展示会であれば、「展示会 やり方」みたいに。

加藤:なるほど、ググるんですね。

柘植:その領域の知識や用語をインプットしながら必要なことを構造化しつつ、実行してみないとわからないところまで調べ尽くしたら、やりながら修正したり、予想外なことが起きれば動きを変えていきます。なので1回目は失敗前提です。相当、もがいています(笑)

鈴木: もがいているとはいえ、実際数字として表れていますよね。展示会で前回の6倍以上のお客さまがブースを訪れてくれました。状況がごちゃごちゃしてる中でアウトプットする力は、柘植さんならではですよね。

柘植:経験を深めながら、過去の経験から使えそうなことを引っ張り出してくることも同時進行でしているかもしれません。たとえば「この仕事はコーポレートのあの業務と一緒」だな、とか。あとは私、以前、海外の雑貨を展示して販売するイベントを運営したのですが、お客さまへのご案内方法や魅力的に見せる工夫など共通している部分があることに気づいたんです。会場でその感覚が降りてきた瞬間がありました。

事前の準備とその場の改善によって、リアルタイムにお客さまの反響が変わるのが面白く、展示会は更に極めたいと思っています。

鈴木:新たな課題にもどんどんチャレンジしていただきたいです。初回の展示会ではそもそもブースに来てもらえないという状態から、2回目ではしっかり来ていただけるようになったと。今後は次のフェーズ、お客さまにとってプロダクトの良さを実感していただくことに取り組んでいきたいですよね。

柘植:会社の課題がどんどん移動している感はありますよね。今はPRISMのヘルプページ用のコンテンツ作成や、インサイドセールスの立ち上げに取り組んでいます。

加藤:ビジネスまわりで、一番課題が強いところに柘植さんがいる(笑)

鈴木:まさに0→1のフェーズですね。

これまでの困難、これからの挑戦

加藤:とても頼もしい柘植さんですが、困難だったこととか、乗り越えられなかったことはありますか。

柘植:製造業の知識のキャッチアップは現在進行形で一番困難です。自分なりに本を読むなどはしているのですが、やはり経験していないことは想像の域を出ないこともあります。「製造業ってアルファベット3文字多すぎない!?」とか(笑)。

鈴木:略語は多いかもしれません。PDM、BOM、MES…。なるべく沢山書籍を購入して、新しいメンバーもキャッチアップしやすい環境にしていきたいですね。「Things図書館」のようにして、自由に貸し出せたらと思います。

柘植:鈴木さんは製造業のご経験がありますが、加藤さんはないですよね。そのキャッチアップはどうやっているのでしょう。

加藤:まだキャッチアップが及んでいる自信はないのですが、自分はエンジニアなので、プロダクトへのフィードバックから普段の動きを想像して、知識を蓄えてるっていうのはありますね。

鈴木:「PRISM」で扱うBOMやデータ構造といったテーマは、製造業の中でも抽象度が高く、課題が顕在化していない分野なんです。打ち合わせを重ねる中で、今ある課題の根幹がBOMの断片化にあると気づくお客さまもいらっしゃるほどです。Thingsはその課題の啓蒙という、ある意味一番尖ったところに挑戦していますよね。加藤さんは何か困難だったことあります?

加藤:僕は最初は副業でジョインしたので、限られたリソースの中で大きな課題をどう解決するか、というのはしんどかったかもしれません。時間的に『PRISM』にフルコミットできるわけではない一方で、プロダクトの課題は見えていたり、お客さまから要望を頂いたりするので、「あれもやらなきゃ、これもやらなきゃ」と、気持ちが追いつかないことはありました。また、その副業時代にプロダクトの根底の仕組みを変えたのですが、短期間で大きな課題に取り組むのも、しんどかったですね。

柘植:副業で大きな課題に挑戦するというのはハードですよね。ちなみに鈴木さんは「社長ならではの困難で、今だから言えること」ってありますか?

鈴木:2回目の資金調達の前でしょうか。その頃はまだ、投資家の方々を説得する材料に乏しかったんですよ。一方で日々の残高は減っていくわけです。なんとか投資家の方々を説得し、投資委員会も通ってジャッジを待つだけ、というところまでは漕ぎつけながらも、最後の方は日繰り表を作成して「何月何日にいくら支払い」を見える化し、じっと眺める日々が続き、最終的にはキャッシュが底を尽きる数週間前で無事調達できました。「スタートアップ社長あるある」かもしれませんが、本当に胃がキリキリする思いでした。

柘植:ご家族や生活がかかっているメンバーを思うと、余計胃が痛いですよね。

加藤:あの時期は全体的に緊張感がありましたね。

鈴木:それから、今後起きそうなことで言うと、いま、多数引き合いを頂いてお客さまが増えることでオペレーションが複雑になってきて、「絶対ミスれない、何か」が増えていきますよね。

加藤:適法性も厳しく求められてくるでしょうし、今までは許されていたことが、気づいたらこのオペレーションじゃまずい規模まできていた、という山が何回かありそうですよね。

柘植:今、商談がかなり増えているので、その管理であったり、お客さまの情報をみんなで共有する仕組みは整えたいなと思っています。

加藤:チームから組織になっていく段階なのでしょうね。


究極のやりたいこと:CEOから仕事を剥がす

鈴木:今まで展示会や未知の領域を色々と経験したと思うのですが、今後挑戦したいことについて教えてください。

柘植:コーポレート業務は月次で処理するなど定型的なものも多いので、効率化に努めてきたんですけれど、まだまだ改善できると思っています。私、面倒くさがりなんですよ基本性格が(笑)

加藤:コーポレートの仕事で、「PRISMコンテナ」※を使い始めたって言ってましたもんね。

※「PRISMコンテナ」とは、「PRISM製品開発管理」の関連プロダクトで、図面や文書を一元管理し高度な検索ができるプロダクト。文書管理や検索機能はコーポレート業務にも応用可能。

柘植:「PRISMコンテナ」がコーポレート業務にも活かせることに気づいたので、業務で使い倒して、お客さまに良さを伝えられるレベルまでいきたいです。それから、究極は「鈴木さん=CEO」から仕事を剥がしたい。まだまだ鈴木さんがお客さまのところへ飛び回る段階だと思うので、いつでも「出張行ってらっしゃい!」と言えるようにしておきたいですね。

加藤:自分、その点は想像が及ばないのですが、仕事を剥がすってどういう流れで剥がし取ってるんですか。

柘植:先日は、鈴木さんの業務全体を一旦miroで見える化し、「どれならもらっていいですか?」と直接聞きました。

鈴木:権限移譲はどんどんしていき、鈴木の確認を経ずに物事が前に進むような、信じて託せる組織にしていきたいです。

柘植:今は成果物の確認が鈴木さんに集中してしまっていますもんね。

鈴木:Slackの「後で」が夕方には10件ぐらい溜まるんです。細かい確認事項は即レスするようにしているのですが、資料を通読して確認する系のタスクは、やっぱどうしても後回しになっちゃうんです。これをどんどん権限移譲して、会社としてのアウトプットの総量を上げていきたいです。

柘植:長期の目線では、上場を目指す会社で働くのが初めてなので、その上場の準備をする監査などの一連の流れはコーポレートとして経験してみたいです。これまだ先の話だと思うのですが。

鈴木:日々積み重ねたオペレーションの、ある意味での答え合わせが上場準備なるのかなと思っています。たとえば先月は展示会のオペレーション、今月はユーザーマニュアルの更新、セールスの体制構築…など。組織が拡大しても踏襲できるプロセスに昇華することでIPOにも耐えうる体制になっている。理想から逆算して会社の様々な体制を構築できるのは、創業期から関わる醍醐味かもしれません。

プライベートの時間管理も意志を持ってやる

鈴木:2人にはハードなことをお願いしていると思うのですが、Thingsで働くこととプライベートは両立できていますか?

柘植:この質問、一番悩みますね(笑)個人的な性格は、ワークライフバランスというよりは、ワークアズライフなタイプなので、その時期によってバランスを取っているんです。たとえば展示会の直前はプライベートの時間が少なめになっていますが、落ち着いたときにプライベートの時間を取れればよいと思っています。なので、両立できているということになります。

加藤:自分もワークアズライフのタイプなので同感です。仕事とプライベートを分けすぎるとそれはそれできついなっていうんですよね。仕事でもプライベートも予想外のことは起きるし、常に柔軟に動かなければいけないので、むしろスイッチできることが大切なのかなと思ってます。

柘植:アーリー期に入る人って多分、時間管理をプライベートの時間も含めてある程度割り切ってできるタイプが向いているのかもしれません。「今週はここまで絶対やりきる!」「このタスクは来週でも大丈夫だから今日は退勤する!」「これはもう少し突き詰められるかもしれないけど、思い切って提出しよう!」というように。そうじゃないと、期待されるがままにずっと働くことになってしまう。

鈴木:スタートアップってスプリントを想像されがちなんですけど、IPOまでどんなに早くても5年、長ければ10年以上という、長期モノなんですね。そこで一番大事なのは、長きにわたってパフォーマンスを出し続ける、いわばライフタイムパフォーマンスになります。常に疲弊する働きかたを強いられて途中で倒れるよりは、持続的にパフォーマンスを発揮できるチームの方が強いという経営判断なので、それを支える環境や自分でペース配分を選択できる自由がある環境を意識しています。

加藤:リモート前提で出来上がってる会社なので、その働き方にフィットしているところもあるかなと思います。

ゼロイチを楽しめる人と一緒に働きたい

鈴木:スタートアップでの働きがいってどんなことだと思います?

柘植:どんな職種であっても、自分がやった施策が全てダイレクトに反映されていくので、その結果が良かったにせよ、振るわなかったにせよ、自分に返ってくるということでしょうか。

加藤:自分が生み出したインパクトの大きさを実感できると思います。もし結果が目標に及ばなかったときに、それが責められる社風ではないにせよ、挫折感や、その結果をシビアに受け止めることは必要かもしれませんが。

柘植:あとは、役割に線引きをしない人。特に今のフェーズでは、全職種がお客さまと向き合うことが大事ですよね。

鈴木:今いるメンバーの特性なのか「顧客の生の声を聞きたいマン」が多く、自分からインタビュー同行を指示した事が今までありません。柘植さんが展示会で直接お客さまと話すこともそうですし、エンジニアも皆「参加させてください」「参加しておきますね」と、当たり前のようにお客様と会話して、課題聞いて、解決しようと動いている。そういうメンバーに囲まれて働くのはシンプルに楽しいです。

柘植:そういったことも含めて、0→1ができる人というよりは、楽しめる人がいいんだろうなって。孔子の言葉で「これを知る者はこれを好む者に如(し)かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如(し)かず。」という言葉があり、つまり、「知識がある人はそれを好きな人に及ばない、好きな人は楽しんでいる人に及ばない」という意味なんです。このフェーズを何か無理に頑張る人ではなく、楽しめる人が長く働けるのではないでしょうか。


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