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入院日記

耳の軟骨のピアスの痕がケロイドになったことで私は、三泊四日の入院・手術を余儀なくされたのです。

そしてこれから綴っていくのは、入院中にスマホのメモに記録していた日記に、加筆修正を加えたものとなります。

7月16日(木)

14時頃、入院開始。6人部屋。みんなカーテンでしきってて挨拶とかそういうのは無い。衣擦れにさえ気を遣う、沈黙の部屋。
2泊3日の予定が4泊5日まで延ばされかけ、慌てて3泊4日の許可を(一応)取る。
11階にある自分の病棟からの毛呂山の夜景がとても綺麗で、トイレに行くたび眺めた。
函館のFMいるかの皆方流THEナイトに、スピッツの「スターゲイザー」をリクエスト、採用される。
函館の夜景が見たい。
夕食:ごはん、あんかけ豆腐ハンバーグっぽいやつ、ひよこまめとかのレモンマヨ和え的なもの、小エビの入ったおひたし、細く切ったかまぼこのお吸い物
ひよこまめのが美味しかった!

7月17日(金)

朝の放送で起きた。

朝食:ごはん、ひじきのふりかけ、きのこと豚肉の煮物、カボチャのサラダ、菜っ葉のお味噌汁、きゅうりとだいこんおろしの酢の物

朝から患者さんが配膳のカートにぶつかって朝ごはん落っことしてた。

私の手術開始時間がぐんぐん延び、病院の説明不足で夫が9時に来るも、11:30にまた来るように帰される。看護師さんがなかなか病室に来ないし、重病の患者さんばかりで自分からはナースステーションにも行きづらいので、コミュニケーションがうまく取れない。

他の患者さんが看護師さんや先生と楽しそうに話してるのがちょっとうらやましい。私は否応なしにステルスモモになってる。

昼食:ごはん、れんこんと厚揚げの煮物、ホタテの貝柱ともやしの酢の物、菜っ葉とベーコンのお浸し、ヨーグルト

ヨーグルトまじうまいやばい!完食したのを看護師さんに喜ばれてほっこりする。

手術が全然始まらない。イライラから、同室の人の医療器機の機械音(心拍数のやつみたいな感じ、だけど心拍数のでは無い。あれいったい何だったんだろう)で、精神崩壊しそうになる。病院の文句は言いたくないけど、とにかく患者への細かい変更とかそういうのはちゃんと伝えて欲しい。前の人の手術が遅れてるとかそういう情報だけでもいいんだよー…命にかかわらない手術とて、どうしてもこっちは不安なのだ。家族も別室で待たしてるし。

経路を取る?とかで先に刺してあった、点滴の管を入れる用のやつが痛い。

看護師さんに、さすがに手術の時間について訊く。今日の担当の看護師さんがとてもいい人で、謝られて私もほろほろ泣く。いい人に文句を言うのはつらい。

手術はとにかく痛かった。麻酔があんまり効かないのかなんなのか痛すぎた。始終泣いていた。顔の横でなんかされてるのはほんと怖い。同じ症状の人には全身麻酔をおすすめする。でも先生は出来るだけ耳をいい形に仕上げようと頑張ってくださった。名医!ドアにぶつかったり聞き間違いをしまくるドジっ子看護助手?さんがいた。手術着からおっぱいさらけ出してしばし放置はちょっと恥ずかしかった。私の腫瘍はホルマリン漬けにされるらしい、何に使うんだ?

手術後の放射線治療はあっさり終わった。先生がものすごく優しい。

FMいるかを聴く。皆方さんに激励の言葉をもらってほっこり。

夕食:和風カレー、ごはん、白菜のゆでたやつ、アジフライ、いかフライ、オレンジ

カレーなんて出るんだね!

点滴抜きたいのに他の仕事が立て込んで、看護師さんバタバタ。抜針されないまま放置される私。看護師不足なのかな、ここの病棟はけっこう、医療従事者さんたちとの意志疎通がうまくいかないようだ。同室の人の話からもなんとなく伝わってくる。人不足のせいだとしたら、どうしたらいいんだろうね。

痛みがやばい。

この日から現れた声のでかいじいさんが消灯後も騒いでた、やべーやつだ。

7月18日(土)


耳は痛いけれど思ってたほどでもない。
今日は夫の誕生日。LINEで、タンスに隠しておいたプレゼントこと超兄貴のCDのことを伝えたら喜んでた。
朝食:ジョアのマスカット味、ごはん、高野豆腐の煮物、お浸し、を大豆のマヨネーズで和えたサラダ、えびみそ
とうとうジョア!嬉しい!えびみそは残した…今までえびみそ以外は完食
9時から放射線治療に。
放射線科へは一人で行ってきてとのこと、看護師さんマジ忙しそう。
一人で向かって迷う。受付の人が気付いて声を掛けてくれてどうにかなった。
放射線の先生たちはやっぱりみんな異様なほど優しい、放射線治療ってなんか不安になるからかな?
この間治療の説明してくれた看護師さんに会ってほっとする。知ってる人はやっぱ落ち着く。
家に電話、なにげにはじめて。
午前はオーケンの小説を読んで時間を潰す。ひっそり涙する。
あまりに忙しいらしく、9:30の検温が11:30だった。
昨日は先生が9件も手術したらしいし、これは…件の女子医大だかのもちょっと納得する。
初めて自販機でコーヒーを買う。ドトールの濃いやつ。それまでは何となく遠慮して水かお茶に限ってた。
昼食:つけ汁うどん、鶏肉の煮物(うどんにのっけるやつ?)、冬瓜らしき煮物、ごぼうのサラダ…デザートが欲しい。
予約とかいろいろ面倒そうだし他の人も使いたいだろうし、シャワーの利用は断った。
同室の人がおいおい泣いてた、入院生活は不安なようだ。そりゃそうか。
実家に電話、入院の先輩な母親にいろいろ病院あるあるを語られる。土曜日のお昼は大概麺類なんだってさ。
Jヒーローズの動画見てぼんやり過ごす。
夫は友人と秩父の浦山ダムでダムカレー食べてるそうな
薬剤師さんから退院後の薬をもらう、高校時代に話す仲だった薬科大行った男子がいま働いてたら、こんな感じだろうか…って感じの薬剤師さんだった。ちょっと感慨深かった。
俳優さんが亡くなったとのこと、ここでは誰もその話題に触れない、そういうところだもんなあ…と思ったら、ラスト処置のあとに見た看護師さんたちが廊下で普通に話してた。
普通なら「病んでたのかなあ」って言いそうなところを「精神疾患かなあ」って言ってたのが看護師さんらしいなあと不謹慎ながらも感じた。
ラスト処置は歳が近そうな先生だった。
よく廊下で行き合う、入院して最初に話したおじさんと会話。おじさんはまだまだ入院するそうな。ああいう気さくな人がいることで案外、入院患者さんは救われるんだよな。
持ち込んだ雑誌を読みながら「名前という呪い」は、私が名前を無くせば解けるのかなんてことを考えた。
夫は家で友達と「マフィアVSアマゾネス軍団」という映画を見ているらしい。
退院の時間が決まる。やったー午前中!
耳の痛みが全然ない。びっくり。
夕食:ごはん、スイカ、きのこの煮物、しゅうまい、あと確か一品あったけどスイカのインパクトで覚えてない。
家に電話、猫の様子を聞く。
精神科に入院してた時とはやっぱり違う、と改めて思う。
今夜が一番暇な夜になりそうだ。
談話室に、本を読む車椅子のおじいちゃんがぼっちでいた。ペットボトルを捨てたあと、おじいちゃんの近くで窓から夜景を眺めた。会話はない。
看護師さんは程よく人に寄り添う感じで、あまり人に入れ込まない程度がちょうどいいんだろうなと感じた。目の前で亡くなっていく人も多いだろうし、当然か。
障がい児保育とは患者(利用者)との「心」の関わり方が違うなと感じる(どっちがいいとかでは無くてね)。では介護職だとどうなるんだろう…中間?ただ障がい児保育は、児童に気持ちを込めすぎて共依存的になっている人も多かったので、もう少し距離感を持つのこそ、本来はいいのかも。難しいな。
ところで看護師さんが看護師さんを注意してるとことか見てると、自分には絶対勤まらないなと思う。注意の迫力が私の受けてきたものとは違う。
私の高校のクラスメイト女子の多くは看護学校に行ったけど、みんな看護師さんやってるのかなあ。検査技師とかお医者さんとかになったはずの人たちも、みんな今もやってるのかなあ。
私だけが全然関係ないところにいる気がして不思議な感覚になる。
トイレの帰りに廊下の窓から夜景を見てたら、知らない看護師さんに、スカイツリーが見えるらしいですよ、と話しかけられる。入院生活は心が孤独になりがちだからそういうのが嬉しい。ありがとう、眼鏡っこの可愛い看護師さん。

7月19日(日)


退院の日の朝。長かった。
アウェーで暮らすのはというか新生活を送ることにはそこそこ慣れているはずだったけれど、やっぱり辛かった。
入院もそれなりにしてきたけど、精神科とはやっぱり違う。致し方ないんだけど距離感が違う。いろいろ不安になる。それはけして看護師さんたちが悪いわけでは無い。難しい。
よく眠れなかった。
買っておいたコーヒーを飲む。糖分も制限させられている人もいたのを思うと、幸せなことだ。健康って、大事。
俳優さんの死を本当に悼んでいるのはどれくらいの人なのかと思っていると、格闘技の話題を見かける。両者の名前が日本神話っぽくてすげえっす。
声が大きい人に世論は動く、それは高校の教室の中でも同じだ
今朝の夢・下北っぽい街に母の(架空の)恋人と二人で訪れる。その人は私にまで手を出している、という設定。途中寄ったスーパーで、昔の知人二人を見かけて慌てて隠れる。内一人は高校時代の親友で絶縁したコ。すっかり大人びた彼女に私は怒りにも似た気持ちを抱いている。今の私の性格なら、このコと喧嘩しても、私を理解してくれる人もいただろう。私は未だに当時を引きずっている。あのコも孤独を、死にたくなるほどの絶望を、味わった上で今を生きていればいいとすら思う。まだ許せてないや。
朝食:食パン、マーガリン、ミートボールのケチャップ煮、フルーツポンチっぽいの、昨日と同じジョア
初めて食欲があまり出ず、でも完食した。ごはんが勝手に出てくるのも今日で最後だしありがたくいただく。ジョアが美味しい。
看護士さんが夜勤明けに遊びに行くって話してた。元気だな。
外は久しぶりの晴れ。札幌の西区の緑が多いとこみたいな景色だなと思う。滝野とかじゃなく西区。大宮の方まで見えそうで、でもあっちは靄がかかっているようなぼんやりとした景色。コロナは怖いけど早く遠出したい。
実家に電話。なぜか子供の話。うちは作らんよ。
もうすぐ退院。実感がない。天気がいいからお洗濯したい。
ありがとう病院。願わくばもう入院しなくてもいい人生を送れますように。

最後に、お世話になった病院の医療従事者の皆様、そして各所でご心配くださった皆様、本当にありがとうございました。


頂いたサポートはしばらくの間、 能登半島での震災支援に募金したいと思っております。 寄付のご報告は記事にしますので、ご確認いただけましたら幸いです。 そしてもしよろしければ、私の作っている音楽にも触れていただけると幸甚です。