発売直後の入手困難 〜再販制とは編
さて、回答編…の前に少し再販制というものについて説明しておきたいです。
わりとこの再販制というものも誤解されている部分が多いような気がします。
これまで書いてきたような仕組みで本というのは書店さんを通してみなさんに届いているわけです。我々出版社が作った本をなるべく多くのみなさんに読んでほしい、買ってほしいという意図のもとに行う経済活動です。
ところがこの経済活動という意味においてもうひとつの欲望が顔を出します。
それは
全部売り切りたい
という気持ちです。
作ったものをすべて売り切りたい=廃棄をなくしたい
まあこのこと自体は当たり前の気持ちだし経済活動としても正しいと思われます一見。
返品と改装というのをしています
出版には返品というシステムがあるのはみなさんご存知かと思います。
書店さんは本を仕入れて店頭に並べ、一定期間がたっても売れなかったものは出版社に戻す、という仕組みですね。
そして出版社はその戻ってきた本を「改装」します。
具体的にはまず戻ってきた本のカバーと帯を外して捨てます。
そして天地と小口と言って、本の綴じられている以外の3辺を研磨します。
最後に新品のカバーと帯をつけます(帯はつけないこともあります)。
そしてこの改装が終わった本を再出荷します。
これが先達たちが作り上げた再販制という偉大な出版ビジネスモデルです。
「再販制」とは
・価格維持(いつでもどこでも値段がいっしょ)
・委託販売制(書店さんに預けて売れなかったら返本される)
・再出荷(返本された本を改装してもう一度出荷する)
大きくこの3つに分解されます。
再販制というと価格維持の部分がクローズアップされがちですが、そもそも再び販売する制度っていうくらいだからどちらかというとこの再出荷が先にポイントとしてあって、価格維持はその再出荷をうまく機能させるためにあるんだと思います。自分解釈ですが。
売れなかったら返本、ではない?
返本って悪いイメージがあると思います。売れなかったから返すわけですから。
いつしかそんなネガティブなイメージで知られちゃった。
でもですよ。これそんなに悪いことじゃないんです。大きく見れば。
たとえばどこかの書店さんに10冊入荷してその書店さんで半年かけて3冊が売れたとします。
そうなるともう半年たったしここに置いておいてももう売れないかなあ、と書店さんは6冊を返本します(1冊は残して棚に挿しておくことが多いです)。
で、その6冊を改装して1冊は痛みが激しかったので廃棄して、5冊はキレイに仕上がったのでまた他の書店さんに出荷します。
そう、見方をかえれば返本とは売れなかったお店から売れるかもしれないお店に本を移動させる仕組みなのです!
良くできてないですか?
この返本からの改装再出荷を繰り返すことで出版社は非常に効率の良い利益を生み出すことができました。なにせ製造費をめちゃくちゃ抑えることができます。再出荷を繰り返すことで5000部しか刷らなかった本でも延べで言えば10,000部や20,000部を超える出荷が可能なのです(理論値)。魔法じゃん!
ところが、この魔法が近年通じなくなってしまいました。
歯車が大きく狂ってしまったのです。
理由は当然社会の変化。
本が読まれなくなったから?書店さんが減ったから?新刊が出すぎるから?面白い本が減ったから?
全部違います。
長くなりましたがようやく次回、発売日直後の入手困難の原因と、それが生まれた理由編です。
解決編ではありません。
とても悲しいことなのですが。
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