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昔好きだった映画

「この映画3回観に行った!」
と自慢げに話す知り合いが昔いた

当時学生の私は
映画1500円もするのに一回観た内容を何回も観に行くなんてもったいない
どうせすぐBlu-rayとか発売されてレンタルすればいいのに
と全く理解できなかった

オチを知った上で観るとより面白くなるような作りの映画もあってもう一度観たくなるようなものがあったりはするが
この知り合いはそのような映画ではなくただ単に世間で流行った映画というだけだった

その映画を私も一度は映画館で観たが2回目を観に行くことはなくすぐに地上波や配信サービスで放送され複数回観た
確かに面白い映画だったがそれでも映画館で見るのは一回でいい

学生時代映画館まで近くて自転車で15分くらいの距離に住んでいたのでその頃の趣味は1人映画鑑賞であった
どの曜日かは忘れたが安くなる曜日があって
多い時は毎週通って一本見てPOPを持って帰り
家に飾っては次はどの映画が公開されているから見に行こうというのが楽しみであった

私は1人行動が好きだ
1人が好きというより複数で群れるのが嫌いだ
その原因は学生時代に人間不信となるような出来事があったことで人と付き合わなくなり
本来無理をして群れていたことに気付いた

1人で楽になったとは言え寂しさや晴れない感情を抱えていたことは定かであり
簡単にいうと病んでいたんだと思う

そんなある時に観た映画がとてもとても刺さった
ボロボロ泣いた
登場人物と自分を重ね
心の中がすーっと浄化されていった

こんな映画と出逢えるなんてと衝撃が走り
気付けば先述した知り合いへの非難を忘れ2回目の映画館へ足を運んでいた
原作になった本を買いBlu-rayも買って
著者をフォローし続編となる本も買った

正直世間ではそこまで流行っておらずここまで一本の映画に囚われたことが不思議だったが
そんなことはどうでも良かった
まるで自分だけの世界のようで逆に心地よかった
それからは時折本や映画を観ては感動を呼び起こし
辛い時のセルフケアとなっていた


時は流れ歳をとりいつしかその映画や本を手に取ることはなく数年ぶりに物の整理をしていた時に見つけ
懐かしんで観ることにした


あれ
面白くない
響かない

あれだけ好きで心を支えてくれた物を今はもう愛せないのかと悲しかった

数年経った中でいつの間にかその映画を必要としないくらい心が育ったのだ
でもそれはもともと映画が必要なかったことにはならず
むしろその映画で支えられていたからこそ心は育ったのだろう

改めてその映画に感謝をし
もう観ることはないだろうから心の中で別れを告げた
観れば観るほどこの映画の価値が私の中で薄れていく気がしたからだ

Blu-rayと本のセットはネットフリマで中古販売することにした
またこの作品を必要とする人がきっといる
自分ではない他の誰かの心と人生をまた支えてあげてほしい

私の心の中ではその作品は亡くなったペットのようにそっとしまっておこう

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