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ボトルパームが教えてくれた事

私は今、ぺルー、リマ南部の港町からこの記事を書いている。

住んでいたMiraFloresが、あまりのCOVID19の爆発的感染に、

家族を守るために家を借りて避難したのだ。

ちなみに人口3千2百万人のペルーは日々1万人の感染者を出し、

感染者数で世界5位、

感染率はアメリカを抜いて世界一である。


借りている家は部屋が7つあり、只々広い。

庭やプール、ビリヤード台、卓球台、ダーツ、

バーベキュースペースに、ピザを焼く窯まである。

身の丈に合わないこの物件は自ら望んだ訳ではなく、

外出禁止令が出ていた5月当時は選んでいる時間もなかった事による。

オーナーもコロナ下で借り手が付かず困っていたところ、

私とマッチングした。

後は値切りに値切って、

なんと交渉スタート時の3分の1の家賃で借りられることになった。


現在は外出は控えているので時間はあるし、

あるものは使った方が良いので、ビリヤード台に向かったりもしている。


ボトルパーム

また家の中にたくさんの観葉植物があり、

手入れもしなければならない。

廊下には7つの植木鉢にボトルパームが揺れている。

風が吹くと

「Hola Como estas?」 (やあ、元気かい?)

と笑顔でささやいてくるのだ。


数週間はただ水をやっているだけだったのだが、

心なしか幾つかのパームがだんだんと葉が細ってきている感じがした。

別のは黄色がかって来て、

手入れをする必要が出てきたのだ。


植物に触れるのは、

大学卒業後働いたアメリカ農場時代以来になる。

もう23年も前の事だ。

昔取った杵柄と思いシャベルを買い、

バーベキューで出た灰を混ぜてみることにした。

すると数日後、グングンと新しい葉が突き出し、

黄色がかっていたのが、鮮やかな緑へと変わっていった。

重たそうに、苦しそうに頭をもたげていたパームが、

両腕を広げて立ち上がる姿は見ているこっちがうれしくなる。


大手術

しかしその中で一本のパームの葉が枯れかかり、

明らかに弱っているのが見てとれるようになった。

さてどうしたものか、と思いながら、

洗剤を混ぜたタオルで優しく拭いてみたりしたのだが、

一向に良くなる気配はない。

そこで思い切って一番外の枯れかかっている葉を剥がしてみることにした。

このボトルパーム、幹が花弁のようになっていて、

外側の葉が枯れると、内側から新しい葉が出てくるのだが、

まだ枯れていない、生きている葉を剥がすのは

パームにとって痛みを伴う事であるのは間違いない。

私も心に痛みを覚えたが、思い切って実行へ。

枯れていれば楽に剥がれるのだろうが、、、


「ミリッ!」


途中で引っ掛かった。

人間でたとえるならば、

爪の甘皮がめくれているのを無理に引っ張って血が出た感じだろうか。

「うわ!すまん!」

と思いながら、それ以上は引っ張らずに

カッターを探してきて剥がれきれない葉を切った。

こうして5分に渡る大手術は無事に成功し、

しばらく様子を見ることにした。


ボトルパームからのメッセージ

すると数日後、、、

弱りかかっていたパームがまた元気に上を向き始めているではないか!

「良かったなあ」

と思いながら、葉を拭いてあげていると、

こう言われている気がした。

「新しく健康に生きるためには、痛いけど悪い部分は切り取らなきゃね」


私はここにいたるまで幾つかの決断をしてきた。

勿論みんなそうだろう。

が、その中に本当にこれで良かったのだろうか、と思う事もある。

思い出すと胸が痛くなることだってある。

だが前に進むためには、決断が良かろうが、悪かろうが、

今の自分のいる場所から、

前を向く、上を向くしかないのだ!

過去は全て将来辿り着く場所へのプロセスであり、

必ずこの経験がプラスになるんだ、と信じて。


調度、痛みの中にいて前を向こうとしていた私。

痛みは振り返ってしまうのは仕方がないが、

痛みに捕らわれず、

前を向いて生きよう。

ボトルパームからの、応援メッセージ。

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