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ヴィパッサナー瞑想② 〜感覚と観察

ヴィパッサナー瞑想では、全身の感覚をありのまま観察する

頭のてっぺんから足の爪先まで、残すところなく感覚を感じ、観察する


極めてシンプルだ

ところが、これが非常に奥深い



さあ、全身の感覚を感じようと思ってもそう簡単ではない

痛みや痒みなど、わかりやすいものは簡単にピックアップしやすい

けれど、いざ始めてみると、服が肌に触れている感覚すらも感じとれない


髪の毛が首に触れている感覚

脈打つ感覚

熱を帯びてうっすら汗ばんでいる感覚



その他ごまんとある、言葉で表現もできないような微細な感覚の数々


自分の肉体で起こっているにも関わらず、気が付かない、感じない


普段自分の感覚がいかに荒削りで鈍感になっているかを実感する




もし全ての微細な感覚に意識的に気づいたとしたら、私たちの脳の処理能力はとても追いつかない

荒削りで鈍感でなければ、このあらゆる刺激に満ちた日常をサバイブすることはできない



ノイズを絞った静かな環境で、とりわけ外界との関わり合いを最小限にし

時間をかけて自分の内側だけにフォーカスしていると、感覚は本来の鋭敏さを取り戻していく



そうすると、普段ならば、目に優しいと感じる空の青さや木々の緑さえも、

感覚が開いていると、ヒリヒリするぐらい結構な刺激として感じる


ある程度の鈍感さってとても大事なんだな〜





それでは、感覚を観察するとはどういうことか


観察するとは、ただありのまま気づいているということ


痛みであろうが、痒みであろうが、気持ちいいという感覚であろうとも、

そこに何の欲求や望みも、嫌悪もなく、ただあるがままを見つめる



私達は、無意識に「反応」を繰り返す

快と感じれば、もっと欲しいと思い、そうならなければ苦しい

不快と感じれば、それを無くしたいと思い、そうならなければ苦しい


快であれ不快であれ、それに対する渇望や抵抗が生まれ、コントロールしようともがく

いずれにしても、思い通りにいかないことで苦しみが増長する



私達は、身体の全てにおいて常に何らかの「感覚」を感じている




誰かに何かを言われた

それによって

傷ついた、腹が立った、悔しかった


そんな時も、思考や感情に先んじて、まずは何かしらの感覚が生まれる


その感覚への反応に基づいて、「傷ついた」「腹が立った」などの感情や思考の反応が連鎖的に起こる

まるでドミノのような、無意識の「反応」の連鎖




では、そのループから抜けるにはどうしたらいいか

それが「観察」だ

快や不快に反応せず、ニュートラルに、ただありのまま見つめる


ヴィパッサナーでは、ひたすら観察を繰り返す

文字通り、寝ても覚めても、あるがままを見つめ続ける

観察の集中トレーニングコース

それに尽きる






コースも半分を過ぎると、目に見えて他の生徒たちにも変化の兆しが見え始める

一番わかりやすいのは、皆の動きがとてもゆっくりと静かになる

歩くのも、食事をするのも、あらゆる動きがスローダウンする




食事をしていたかと思うと、何を見るわけでもなく、空(くう)を見つめ始めたり、

歩いていたかと思ったら、何もないのに立ち止まり、ぼーっとその場に立ち尽くしたり



きっと、第三者がはたから見たら、かなり怪しい集団に見えるのではないだろうか 



これは、目をつぶっている瞑想以外の時も、何かをしながらも自分の感覚を意識し、観察するようになるからだ



そしてこの頃になると、全員揃って行うグループ瞑想においても大きな変化が現れ始める


最初の頃は、始まって10分もしないうちに、モゾモゾと体勢を変えたり、ため息や指の関節を鳴らす音が聞こえたり、全体の雰囲気がざわざわと落ち着かない


おそらく皆無意識に行なっていたであろうこうした様々なざわつきが、明らかに静まっていく


時間になる前から、皆静かに自分の場所に座り、体勢を整え、目を閉じる


ホール全体がシーンと静まり返り、厳かで心地のいい緊張感が満ちる

肌の色も、生まれ育った環境や思想も全く異なる人たちが、自分を観察するというただ一つの思いでつながり、意識を内側に向けている


そのエネルギーに、胸が震えた



静かなのに、気合い十分


私も自然に背筋が伸びる




コース中は、目を開けているよりも、閉じている時間の方が圧倒的に長い

そのせいかどうかはわからないが、目を開けて見える世界(外の世界)が、むしろ夢の中のような感じがしてくる

なんとなくよそよそしいような

とってつけた感というのか・・・

違和感とも呼べないほど微細な、微妙な

・・・やはり何かが違う

ズレのような感覚

目を閉じている時の感覚の方が、より自然でリアルでRaw(生)な感じ



「現実」ってなんだろう?

どっちが本当の「リアル」?



この感覚が日に日に強くなっていく



続く

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