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◉今お寺に求められている3つのこと②御朱印_御朱印のもつ可能性【お寺の日々#185】

今お寺に求められていることとして、「御朱印」(参拝記念印)を取り上げ、それが求められている背景について書いています。

今回はその最終回です。

◆御朱印の「癒し」の要素

「御朱印」の要素について、三つ目は「癒し」の要素です。

「御朱印」は、それをいただく際に、神社やお寺にお参りをします。

神社やお寺にお参りをする際に感じる「癒し」や「安らぎ」もまた、「御朱印」の大きな魅力の一つでしょう。

とある女性宮司の方にお話を伺った時のことです。

そちらの神社には、女性の方が多く参拝をされ、「御朱印」をいただいていかれるそうです。

「御朱印」を書きながら、ご参拝の方とお話をなさることもあるそうですが、そうした方々がお見えになる背景に、一つには女性の社会進出があるのではないかと、その宮司さんは推察されていました。

「女性が社会進出するようになって久しいですが、未だに職場では男性社会なところがあります。その中で頑張っているうちに、知らず知らずのうちに肩肘を張っていたり、ストレスが溜まることもある。そうしたものを一度リセットするために、神社に来られている方がいます」。

そうおっしゃっていました。そして続けて、こうも言われていました。

「そうした方々が、「御朱印」に触れ、「可愛い」と思う中に本来の自分に戻ったり、清らかな空気に「癒し」を感じたり。そうして一度自分をリセットして、日常生活に戻って行かれます」。

「だからこそ、「御朱印」は心動くものになるようにと、こだわってつくっています。また神社全体で、「癒し」を感じられる空間になるように心がけています」。

◆御朱印を求める方の深い動機

今の話は一例ですが、「御朱印」を求める方にお話を伺うと、その背景には、何かしらの苦があるのではないかと感じます。

苦とは例えば、何らかのストレスや悩みや怒り、不安、生きづらさといった感情です。

仏教では、苦には「思い通りにならないこと」という意味も含まれます。

苦があるからこそ、「癒し」や「安らぎ」を求めるということがあるのではないでしょうか。

私たちは、自分で変えられることは変えれば良いのですが、そう簡単に変えられるものばかりではありません。

人間関係や仕事など、変えられない現実に直面しながらも、私たちはそれを消化しながら、日々を送らないといけないことがあります。

そうした時に、何か支えになるものや、自分らしくあれる何かを必要とすることがあります。

そうした方が、「御朱印」を入り口として、神社やお寺に参拝をされている。

そして、神社やお寺のもつ「癒し」や「安らぎ」によって、自らの本来性を取り戻し、明日への活力を得ている。

「御朱印」を求める方の背景には、何かしらの苦があるのではないか。

「御朱印」を求める方のこの深い動機(インサイト)の部分が、私は特に「御朱印」の可能性を感じるところです。

そして、この「御朱印」が苦に対しているという点が、お寺が「御朱印」をおこなう意義にもつながる部分だと感じています。

「御朱印」を求める方の全員が耐えがたい苦を抱えているわけではないでしょう。

また、本人が苦を明確に自覚していない(漠然としている)場合もあるでしょう。

しかし、「癒し」や「安らぎ」を求めるその背景には、何かしらの深い動機があるのではないか。

そうした見方が開かれた時に、私は「御朱印」の可能性を見た気がしました。

生きづらさを抱える方が多くいる現代に、神社やお寺が、寺社らしい形でその役目を担っていく。

「御朱印」には、そうした神社やお寺の社会的な意義や役割にもつながる可能性があるのではないかと感じました。

◆御朱印は仏縁の入り口

「仏教」には教えがあります。その教えとは、私たちがより良く生きるための智慧でもあります。

しかし、普段の生活の中では、そうした智慧に触れる機会は限られることでしょう。

それは社会として非常にもったいないことだと思います。

もっと色々な方が日常の中で、より良く生きるための智慧に触れる土壌ができると良いなと思います。

仏教に触れる機会をつくるという意味では、仏教やお寺を身近に感じていただくことが一案です。

「御朱印」は、そのご縁の入り口となるものです。

「御朱印」を入り口として、お寺にお参りをする中で、仏教に触れるご縁ができてくる。

そうする中で、「癒し」や「安らぎ」に留まらず、「生きる喜び」や「生きる意味」もまた見出されてくるのかもしれません。

「御朱印ブーム」から7、8年が経過しました。

「御朱印」の収集を通して、もう一つ深いものに関心をもつようなフェーズ(段階)におられる方もいるのではないかと想像します。

「御朱印」は、そうしたより良く生きるための智慧に触れる入り口ともなるものだと思うのです。

2024.05.01(月)記す

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【信行寺 今後の催し】
◉朝参り
・5月5日(日)午前8時〜約30分
・内容:読経・ストレッチ・法話

◉永代経法要
・5月17日(金)、18日(土)13時30分~15時頃
・内容:読経・講演
・講師:尾角光美さん(一般社団法人リヴオン代表理事)

◉オンラインお寺参り
・5月25日(土)午前7時~約30分間
・内容:読経・法話

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