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寛容と感謝【坊さん日記002】

坊さん日記の2回目。今回は、ご門徒さん(お寺のご縁の深い方)のお宅へご法事に伺った時の、僧侶とすれば何気ない日常と、そこから学んだ「寛容と感謝」の思いについてお話してみたい。

先日、信行寺から車で1時間程度のご遠方のご門徒さんのお宅へ、ご法事に伺った。その日は、施主の方のお母さんの一周忌だ。施主は、先に往かれたお母さんの長女さん。

ご法事のお約束の時に、今回のご法事は長女さんと次女さん、お二人でおこなうとおっしゃっていた。長女さん、次女さんといっても、歳の頃は70代。お母さんは、90代半ばで昨年ご往生(仏様の国へ往くこと)された。

1時間をかけご自宅に到着。何度か伺ったことのあるご自宅。駐車場に車をとめ、運転で凝り固まった肩腰背中を伸ばした後、玄関へ。

最近は、「インターフォンの時はマスクをとらないと」と思い、外そうとするが、両手が着物のカバンやお経本などでふさがっていて、「あらら」と思っているうちにお宅の方が出てこられるというパターンが多い。

この日も同じように、玄関の前に行き、インターフォンを鳴らす。「マスクとらなきゃと思っているうちに出てこられるかな?」と思ったら反応がない。マスクをとり、もう一度インターフォンを鳴らす、、、反応がない。

「おかしいな。まさかお寺でのご法事だったかな?」

最近は、ご法事の半分はお寺でおこなわれている。

「いやいや、確かにご自宅と言われていたはず。自分がご予約をとったから覚えている。しかも妹さんと2人でと言われていた。間違いないはずだ」

そんなことを考えている間も反応がない。

「インターフォンが壊れているのかな?」

たまに、ご自宅に伺うとインターフォンが壊れているパターンもある。

玄関のドアをノックして、「こんにちは、信行寺です。お寺です」と呼び掛けてみる。

反応がない。「ドアがあいているかな?」と思い、ドアノブを握ってみるも、鍵がかかっている。

「裏口に回ってみよう」

勝手口に回り、ドアをノックする。「こんにちは、信行寺です。お寺です」

こちらでも反応がない。

「どうしたんだろう?」

お盆参りなどでは、留守にされているお宅もあったりするが、ご法事で留守にされることはまずない。あるとすれば、日程間違いの時だ。

「困ったなあ、どうしようか。でも先日、確認の連絡もあったし、日程も場所も間違いはないはずだが、、、」

「大丈夫かなあ」段々、心配にもなってきた。

日ごろ、ご葬儀などで人の死の場面のお話をよく伺うからだろうか。何かあったのだろうかと心配になる。

「でも、お一人なら心配だが、お二人なら大丈夫か。ひょっとしたら妹さんを迎えにいっていて、戻ってこられていないか。時間は、お約束の10分前。まだ時間なっていないから大丈夫」

そんなことを考えながら、再び玄関のほうに戻りかけたその時、ガチャッとドアがあいた。

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