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ビアガーデン

ぐわあと天井を見上げると、わたしのだいぶ伸びたポニーテールがさわさわとうなじを走るようになった。髪が伸びて、世界はすっかり夏になった。

私の22個目の夏は、すでにドクンドクンと光り始めている。学生最後の夏だなんて考えるから辛気臭くなってしまうのだとわかってはいるが、どうしても、終わってもいないことに対して名残惜しくなってしまう。それほどに、まさに今から生まれようとしている数々の思い出は美しいに違いないと確信している。

昨日、ビアガーデンに行った。どすんと居座るビールサーバー、乱雑に並べられた原液たちとそこに群がる熊蜂。怖くて別のドリンクバーに逃げた。お肉を焼く匂い、音。退勤後の大人は乾杯のグラスの位置に敏感になり、サークルのお洒落なグループはハイボールと梅酒しか飲まない。ウインナーと焼きおにぎりばかりをもりもり食べる小さな子供、見守る家族。追加注文した焼きそばをトングで混ぜながら、あんまり塩味じゃないね、でもお祭りの味がすると言って笑う恋人。

まだ外が明るいうちに食べ飲み放題の制限時間を回ったので、淡いピンクとブルーの空の下、ちょうちんの灯りをくぐって帰った。誰もいない道の真ん中で内カメラに向かって、「楽しかったです!」と宣言する。コンビニでお酒とティラミスを買って帰ったけれど、結局お味噌汁を飲んで寝てしまった。それほどに、夏だった。

来年も行こうねって、魔法の言葉だと思う。来年も同じ言葉を言いたい。わたしの、わたしだけのきらきらとした夏が確かに始まった。


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