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【書籍】災害医療の概要 「米軍・戦術的戦傷救護ガイドラインに学ぶ災害医療 改訂版(一章)」

 こういう技術書は読むのを後回しにしがち。まぁ一応資料本として買ったのと、災害医療もタイムリーなご時世なので、優先して積読解消する事にしました。

 本書は大火事、地震、テロなど、あらゆる災害に対応するために、一貫したガイドラインを設定しているアメリカ、その医療関係のガイドライン(戦術的外傷救護ガイドライン、以下TCCC)の要点を紹介している本です。
 専門書なので医療従事者ならさらっと読める、医療行為についてそこそこ勉強している人間なら、何とか読めなくはない、という感じの難易度でした。私は多少の心得はあれど医療従事者ではないので、細かい所は読み飛ばしてるよ。

本書の構成は以下の通り
一章 戦術的外傷救護ガイドラインに基づく外傷医療
二章 超急性期医療マニュアル
三章 外傷各論

 今回読んだのは一章、TCCCの概要と、災害時に起こり得る代表的な症例に対する基本方針を紹介している章です。

 TCCCでは戦場における医療行為を、以下の三段階に分類しています。→は私のざっくり要約

①戦闘下の医療(Care Under Fire, CUF)
 →がっつり戦闘中で、対応者も資材も限られる状況
②戦術的野外医療(Tactical Fireld Care, TFC)
 →危険な現場から一歩引いており、人材や医療機材に少し余裕ができる状況
③戦術的後送医療(Tactical Evacuation Care, TEC)
 →医療機関の搬送後

 これは、災害やテロなど、対応者の安全が確保できない危険状況下だったり、即座に医療機関にアクセスできない、という状況を想定しているためですね。
 日本の都市型救護(怪我している人がいる!救急車を呼んで心肺蘇生だ!)が通用しない多様な症例や災害時、現在進行形のテロ等に対応しようと思うと、この概念の理解と普及は非常に重要だと感じます。

 一章のメインは医療機関への搬送までに起こり得る、「正しい処置をしていれば防ぎ得た死(preventable death)」をいかに防ぐか、どのような症例が「防ぎ得た死」になり得るのか、という内容でした。章まとめで記載があった「防ぎ得た死」の代表病態は以下の5つです。

・四肢からの大出血
・結合部大出血
・気道閉塞
・緊急性気胸
・NCTH(圧迫止血ができない体幹からの出血)

 出血や大きな外傷に由来する病態が多いのは、ベースが戦闘救護だからですかね。この辺りは想定する現場によって異なると思いますが、「生命維持に直結する器官(循環器、呼吸器、神経系)」への損傷を警戒する、というポイントを読む人間が持っていれば応用が効く部分なのかなと思いました。

 それぞれの症例に対応するための基本方針については、衛生兵や医療従事者を想定しているので、医療機材の使用や薬剤投与を前提とする内容が非常に多くなっています。
 医療従事者じゃない私としては「薬剤投与は無理だなあ」「止血帯(CAT)は…なくはないけど、日本の一般人には現状難しい想定だろうなぁ…」といった反応になってはしまったものの、症例の発生機序と基本対応の方針について幅広く学べたので、本書以外の知識も併用する前提であれば、医療従事者以外にも応用が効きそうだとは感じました。

 本当は一気読みしたかったけど、情報量が多いので一章でいったん打ち止め。二章以降は読む気が起きたらnoteに入れます。


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