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軽トラのヒーロー

あれはもう何年も前のこと。
川が氾濫して浸水した街があった。

友人の知り合いが被害にあい片付けを手伝いに行った。
浸水した家の中は家具や小物などが散乱していた。
まず片付けるために使えなくなったものを家の表に出す。
冷蔵庫や洗濯機、タンスなど人手が必要な大きいものから優先的に出した。
タンスは開かなくなっており中で衣類が水を吸ってとても重かった。
冷蔵庫は電気が使えなり中のものは腐敗していた。

家の表に出すと近所中も同じように外に出していた。
出しきれないほど外には家具が溢れていた。
ときおり引き取るトラックがきて一緒に荷台に乗せる。
とても足りない。
車も浸水のため動かなくなってしまったそうだ。
ものが出せないと家の中も片付かない。

そんなときに軽トラが家の前に止まった。
20代後半くらいの青年が乗っており荷台に載せたら処分場に持って行くという。

話を聞くと足が良くなく重たいものは持てないが運転はできるとのこと。
ありがたく荷台に載せた。
処分場で下ろすために自分が同乗した。

運転中に詳しく聞くと近くの街に住んでいるが洪水の被害をニュースで知り、車がなくて困っているだろうと格安の中古の軽トラを買ってきたそう。
軽トラを買うとは驚いた。

そして困っていそうな家を探して車で流していたところだということ。

処分上で下ろしてまた戻った。
今日はここで1日手伝ってくれるそうで日が暮れるまで一緒に何往復もした。
隣近所の分も大きなものは運べて感謝された。

日が暮れると公民館に町内の人が集まって料理を作っていた。
冷蔵庫もないしまだ台所も使えない家が多いので一緒に作って食べているとのことだった。
物資は支援もあり足りていて水は飲みきれないほどあるそう。

料理ができる頃に子ども達が町内を大声で回って夕飯ができたことを知らせていた。

軽トラの彼も一緒に町内の人と夕飯をとった。賑やかな夕飯だった。

彼は明日も引き続き手伝うと言った。

*画像はAIで生成したトラックで実物ではありません。

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