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韓国ホラーに日米の恐怖要素も詰め合わせ70点『霊』(リョン 04)

女子校での陰湿なイジメを描くゼロ年代Kホラーのトレンドに、日本の貞子の影響をMIX。さらに『シックス・センス』ばりの大ドンデン返し。おまけにキム・ハヌルのオーバーアクトまで。もう、お腹いっぱいの佳作ホラー。

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 Kホラーの原点、98年の『女校怪談1』のレビューで、筆者はKホラーの特徴を独自にこう仮定した。

①女子校が舞台。イジメ、受験戦争、教師のハラスメント等、学校が抱える様々な問題が盛り込まれる
②百合要素
③女子高生の“コックリさん”遊び
④若手アイドル女優の登竜門

 2番目の「百合要素」こそ薄いものの、このフォーマットを踏襲しているKホラーど真ん中の佳作が、04年公開の本作である。

 ただしこの時期、KホラーはJホラーの『リング』(98)の影響を強く受けるようにもなっていて(韓国版『リング』まで作られた)、本作は、我々日本人が見ると「まんま『リング』じゃん!貞子じゃん!!」と感じられる点も多く、本国でも公開時からそう批判されていた。

 また、水を重要なモチーフとして不気味に描いており、『仄暗い水の底から』(02)にも雰囲気は似ている。こちらは監督のキム・テギュン自身が『仄暗い〜』超えを目指すと公開前に宣言していたほど意識していた(韓国でもJホラーはそれぐらい見られていた)。

 さらに、『シックス・センス』(99)と『アザーズ』(01)という、当時ヒットした大ドンデン返しオカルト・スリラー2本に影響受けすぎ、との批判も、当時から、一般観客からも批評家からも寄せられていた。試写で見た人に「ネタバレしません」と誓約書を書かせたそうだが、それもシャマラン映画ではよくある話。この2作も、公開前からキム・テギュン監督はタイトルを挙げて影響を認めていた。もう一つ、主人公が悪夢に悩まされるたびに物語の核心へと一歩ずつ近づく構成は『エルム街の悪夢』(84)の影響だとも公言してもいる。

 このように、韓日米で流行っているホラーの影響を露骨に受けすぎており、寄せ集め、5番煎じ、10匹目のドジョウ狙いだと言えば、言えなくもない。

 また、主演のキム・ハヌルは資質としてはラブコメ女優であり、初のホラー出演となる本作でもスラップスティック・コメディの癖が抜けず、いささか演技過剰で漫画っぽい。その芝居もまた批判された。

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 しかし、難しく考えずに、ある晩、手軽に90分間の恐怖を味わうための娯楽ホラーだとして見れば、その役割は十分に果たせており、ちゃんと恐がらせてくれる、普通に良くできたジャンル映画だ。筆者なら甘目に採点して70点は贈る。

 なお、終盤の展開がかなり複雑で、よく解らなかった、という声が本国でも多数聞かれるが、本稿の終わりで詳しく説明するので、読まずに複雑さに挑むもよし、読んでから(ネタバレだが)鑑賞するのもよしである。


【前半あらすじ(ネタバレ無し)】
 映画は女子3人お泊まり会での“コックリさん”遊びから始まる。韓国にもコックリさんは「ブンシンサバ」として日帝時代に入ってきており、召喚呪文も「分身娑婆(ブンシンサバ)分身娑婆、オイデクダサイ」と日本語ときている。だが本作のそれは、女学生がノートにペンで書いて遊ぶ簡易式のコックリさんとは違って、高価そうな専用の盤が用いられており、本格的な「ウィジャボード」に近い。また、召喚呪文も日本語ではないという変化球バージョンだ。

 降霊の音頭を取るのはお泊まり会場の家の娘。霊に「どこから来たの?」と質問すると「水」とのお告げ。「何のために来たの?」と尋ねると「殺」の字を指す。その時、3人に迫る女の影…悲鳴を上げる3人。だが、なんのことはない、その家の姉が「早く寝なさい!」と怒鳴り込んできただけだった。

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 怒鳴り込みを終えた姉がキッチンを通って自室に戻ろうとすると、シンクから水音が。蛇口から水が滴っている。蛇口を閉めに行くと、流し台の排水溝に女の長い髪の毛が詰まっていた。ふと気がつけば、家の中なのに足下から水が湧いて出て、突然、姉は口から噴水か壊れた水道管のように大量の水を吐き出す。

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 そして、背後から忍び寄る何者かの気配。彼女は振り向き、目を見開き、悲鳴!(この一連は『リング』で最初に竹内結子が死に佐藤仁美が発狂する冒頭シーンにそっくり) ここまでがアバンタイトル。「령(靈)」と題字が一文字映し出される。題字の背景はどこかの冷たい水の底。そして「忘れるの。死ぬまで記憶を葬り去りなさい」という謎の声が響く★。さらに、その水の底に沈む水死体の見開かれる目がドアップに!

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 ウワァ!っとそこで主人公のジウォンは目が覚める。朝だ。悪夢だった。彼女は女子大生で2年生。趣味は水泳で毎日プールで泳いでいる★。一緒にプールに通っている彼氏未満の親しいオッパは兵役帰りで、大学も一緒、受けている授業も一緒、いつも一緒にいる。なお、彼女は記憶障害を患っており、大学に入る以前の記憶が一切ない。

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 そのため彼女は脳神経の病院に通院している。記憶は戻ってないが脳波は正常に戻っており、これ以上の通院と治療は無駄だと医師から宣告される。ふんぎりをつけ前に進むしかない。彼女は海外留学しようと決心した。もう記憶を蘇らせようと時間を費やすのはウンザリだった。

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 晩になって帰宅すると、真っ暗な居間で母親が一人、夫の遺影を眺めてヘタり込んでいる。そして、娘の海外留学計画をなじる。こんなダダっ広い家に私独り置いてけぼりにするつもり!? 見捨てるの!? とヒステリックに泣きわめく。もてあますジウォン。この母親、どうにも情緒不安定で不気味だ。後日には昼間、家でポツンと独り、娘の高校時代のアルバムを眺め、何故か突然泣き出したりもする★。意味がわからない。

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 その夜、ジウォンはまた夢を見る。小学生ぐらいの孤独な少女が、別の孤独な少女と友達になる夢だった。仲間外れにされている同士で友達になる。これは自分の少女時代の記憶なのか? このシーンで、少女2人は韓国伝統の鬼ごっこ兼かくれんぼ遊びをしている。「♪コッコッ スモラ〜、モリカラ ボイラ〜(ちゃんと隠れないと、髪の毛が見えるぞ)」という歌詞の、日本でいう「も〜い〜かい?ま〜だだよ」的な、ほのかに不気味な調べのわらべ歌を歌いながら。

 この「♪コッコッ スモラ〜、モリカラ ボイラ〜」、K-POPファンならば、ASTROのデビュー曲の歌詞で聞き覚えがあるかもしれない。なお、この歌こそが本作にインスピレーションを与えたのだと、キム・テギュン監督は語っている。ある日行ったバンドのコンサート(ASTROではない)で幼女が歌うこの歌が流れ、ステージには日帝時代の巡査の取り締まり姿が映し出されていた。もしかしたらこの歌はかつてそういうシチュエーションでも歌われていたのかも…と想像したら思わずゾッとしたという。その強烈な印象を1シーンにただ盛り込むだけでなく、逃げて隠れて捕まえられない鬼=自分の失われた記憶を相手に、主人公が鬼ごっこをする、という映画の全体構成の中にも溶け込ませている。以上は脱線。

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 本題に戻る。翌日、再びプールで。泳ぎ終えたジウォンがロッカールームで着替えようとすると、ロッカーの中に昨晩夢に出てきた少女が!「隠れんぼ鬼ごっこしてるんだから早く閉めて」と言う少女。呆気にとられ思わず言われるまま従ってしまったが、「着替えたいんだけど」と再び扉を開けてみると、中はもぬけの殻だった(この一連はワンカットで撮られていて、撮影が凝ってる)。

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 プールからの帰り道、この怪奇現象をオッパに話すが、信じてくれない。その時、数日前から大学構内でジウォンを尾行しているような様子の不審な女につかまる。格好からしてカメラマン? どうも、昔の知り合いらしい。

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「あなたは父親が作った完璧な世界に住んでいた」と言うカメラマン風の女。父親のおかげで裕福だったことは、前のシーンでヒステリックな母親の台詞からも判明している。「でもお父さんが亡くなって、あなたは八つ当たりできる相手を探し始めた」 どうやら事情を知っているようだ。そして女性カメラマン?は、カメラバッグから1枚の紙焼き写真、キャンプかハイキングかどこかで撮られた写真を取り出しジウォンに渡す。写真には全部で4人、ジウォンとこの女性と、あと2人、同い年ぐらいの女子たちが写っていた(うち1人は映画冒頭で自宅キッチンで水を噴水のように吐いたあの女だと観客には分かる)。

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 ジウォンは「事故の時あなたも一緒にいたの!?」と質問する。事故?彼女の記憶障害はその“事故”のせいなのだろうか。しかし女性カメラマン?は「それはどうでもいい」と答えずに、最近奇妙なものを目にすると言っていた共通の友人(あのキッチン噴水女)が死んだと伝える。「あなたはどう?なんともない?」と怯えたように聞いてくるカメラマン女。「特に何も…」と答えつつ、ジウォンは「同じ大学ならもっと早く会いたかった」と別のことを言う。彼女は同じ大学の写真部か芸術学部なのかもしれない。しかし、なぜ知り合いなのに今まで話しかけてくれなかったのか? 女はその問いにも答えず、最後に言った、「あなた、もう化粧はしないのね。昔は完璧だったのに★」と。

 その晩、そのカメラ女は、暗室に独り閉じこもって写真を現像中に、霊に襲われて、死ぬ。

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 別の日。オッパがネックレスをプレゼントしてくれた。しかし、ジウォンの想いは複雑だ。オッパに恋愛感情は抱いてないのだ。そのようになりたくはない。今の、オッパと後輩女子の程良い距離感をキープしたい。オッパに微妙なリアクションを返してしまうジウォンであった。

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 帰宅すると今夜の母親は上機嫌で、翌朝には朝っぱらからフルコースの食事まで作ってくれる。ただし、メニューのうちの一品、魚のチゲがジウォンは嫌い。魚の生臭さが苦手なのだ。「好き嫌いはダメよ」と叱られ、臭そうにしながらも我慢して食べるジウォン。そこでなにげに気づいてしまったのは、なんと母親が、昨日もらったばかりのあのネックレスを、無断で着けているではないか!★「綺麗だから、つい」と照れ笑いする母親。その割には隠そうともせず首からちゃっかり下げている。結局、母親にあげることに。

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 その日はオッパと映画を見に行くが、水を滴らせた霊の姿を目撃して上映中に絶叫してしまうジウォン。大恥をかかされたオッパに「君を受け入れるのにも限界があるぞ!」と愛想を尽かされる。昨日のプレゼントを身に着けて来なかったことにもヘソを曲げているようだ。

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 そのまま午後は2人一緒に登校するが、そこに刑事がやって来て、あのカメラ女の変死を告げられる。死因は溺死だという。最初にキッチンで死んだ女も溺死とのこと(死顔の見せ方が『リング1』の竹内結子と『リング2』の深キョンまんま)。どちらも現場は人が溺れるような水場では全然ない。

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 刑事はジウォンも高校時代につるんでいたメンバーだと知って事情を聞きに来たのだ。徐々に蘇る女子校時代の記憶。どうも、自分をリーダーとする4人組は、ある女子をイジメていたらしいのだ。

 最初に死んだキッチン溺死女の通夜に参列するジウォン。しかし、あのコックリさんをやっていた妹から、あんたのせいで姉さんもカメラ女も死んだ、全部あんたが悪い、どのツラ下げてここに来た、と罵倒される。私のせい!? だが、ジウォンはまだ全ては思い出せずにいる。

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 その夜、またもや悪夢に襲われる。ベッドで寝ていて目覚めると隣に女が寝ており、それは…自分だった!ドッペルゲンガーだ!!★この夢のせいですっかり目が冴えて眠れなくなり、昔のアルバムをめくり始めるジウォン。高校時代の自分の写真は、癖なのか、どれも笑顔の時、片方の口角だけを吊り上げていた。フラッシュバックする思い出の中の自分も、確かに癖でその表情をしているのだが、しかし、今はその癖は直っている。今では無意識に爪を噛むことが癖で、オッパからも直すように言われているのだ★

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 翌日、意を決して、最初に死んだキッチン溺死女の家を訪問し、遺された妹に、過去に私が何をしでかしたのか教えて欲しいと頼み込む。ジウォンの沈痛な態度に妹の怒りも収まり、亡き姉の部屋に通してくれる。「あなたたちが一緒に旅行に行って帰って来てから、おかしなことが続いている」と言う妹。皆が何かに追われているような感じで、姉は不眠に悩まされていた。そんな姉を恐がらせようそうとコックリさんをやって霊を呼び込んでしまったのは私なのだから、姉の死は私のせいでもある、と自分を責める妹。さらに、姉とジウォンたち4人組の最後の3人目が、今は精神病院に入院しているとも教えてくれた。

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 その日もまたプールで泳ぐジウォン。しかし、プールで何者かに水中に引きずり込まれ、溺れかける。もちろん水の中には誰もいなかった。溺れているところを目撃したオッパは「昔のことはいい加減忘れろ!」と叱るが、「昔のこと」?どうもオッパも、過去について何かを知っている口ぶりだ。「何か隠してない?」と問い詰めるジウォンだが、オッパは答えなかった。

 3人目に会いに精神病院に見舞いに行くジウォン。3人目は、怖がって水のそばには絶対に近づかない、と介護士から聞かされる。会ってみると、完全に発狂しており会話もままならない。「誰もあんたなんか好きじゃなかった!皆で利用してただけよ!」とジウォンに言い、さらに霊の正体は「スインだ」と言う。「私は何もしていない、なのにスインが殺しにやって来る!あんたがやったのよ!! あんたのせいよ!!!」と狂乱状態になって、そこで介護士たちに拘束衣を着せられる3人目。話を続けられる状態ではなかった。

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 回想シーン。高校時代の4人組。キッチン溺死女が「次は誰にしようか?」と言い、カメラ女は「もうやめようよ」と言うが、キッチン女は「なんで?面白いじゃない」とヘラヘラしている。終始黙っている3人目の狂女。そこにジウォンが「スインにしよう」と提案。「え!? スインでいいの!?」と、他の3人はなぜか意外そうな、遠慮しているような戸惑うようなリアクションを見せるが、「スインでいい!スインに決めた!!」といった感じでジウォンはうなづく。やはり、4人組は高校時代にイジメをしていたのだ。主導していたのはキッチン溺死女だが、「スイン」をターゲットに定めたのはジウォンの判断だった。では、スインとは誰なのか!?

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[解説]
 Kホラーの特徴として、

①女子校が舞台。イジメ、受験戦争、教師のハラスメント等、学校が抱える様々な問題が盛り込まれる
②百合要素
③女子高生の“コックリさん”遊び
④若手アイドル女優の登竜門

 の4つを本稿では掲げているが、女子校が舞台という点では本作は変化球だ。男女共学の大学に通う女子大生が記憶喪失で、女子高での失われた思い出をたどるうちに、暗い過去に辿り着く、というひねった構成なのだから。回想を通じて女子高の閉じたコミュニティと残酷なイジメを描きながら、受験戦争についても軽く言及している。

 百合要素は希薄。

 コックリさんについてはすでに触れた。コックリさん描写も和風(倭風)ではなくウィジャボードを出して洋風の変化球にしており、Kホラーの出発点『女校怪談1』との差別化は図ろうとしているようだ。

 若手アイドル女優の登竜門というポイントだが、主役のジウォン役を演じたキム・ハヌルは、本作がホラー初挑戦ながら、当時すでにドラマ・映画のラブコメ女王として押しも押されもせぬ売れっ子女優で、この頃には全盛期を迎えていた。下画像は同じ04年の彼女の代表作『彼女を信じないでください』。この年、すでに25歳を過ぎており(女子高生役は明らかに無理がある…)、本作でブレイクしたとは言えない。

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 だが、物語後半になって登場する重要な役どころ、イジメられっ子スイン役に、ナム・サンミを起用している点には注目したい。まさに、“超絶”美少女!日本でも、芸能界で1世代に1人ぐらい、10年に1人ぐらいは奇跡の超絶美少女が出現する。橋本環奈に中条あやみ、昔だと吉川ひなのや高橋マリ子といった、「お人形さんのような」という言葉どおりの、完璧すぎるルックスの芸能人だ。この時代の韓国ではナム・サンミがそれに該当する。高3の時、大学街のロッテリアでバイトをしていたら(下画像が“奇跡の一枚”)あまりの超絶美少女ぶりが噂になって男子大学生客が殺到。その噂が業界にまで届きデビューしたという逸話を持つ。

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「オルチャン(オルは顔、チャンは最高)」という顔面偏差値の高さを指すゼロ年代流行語は、韓流ブームとともに日本にも入ってきて、「韓国っぽい可愛さの」といった別の意味の形容詞として「オルチャン・メイク」、「オルチャン・ファッション」、「オルチャン・コーデ」といったふうに日本語でも使われたが、もともとはナム・サンミら、“美人すぎるド素人として巷で話題になって芸能界デビューまで果たした芸能人たち”を指す用語だった。ナム・サンミはそのオルチャンの筆頭に挙げられる。この後、ドラマ『犬とオオカミの時間』(07)などで、ヒロイン・主演級女優として羽ばたいていく。

 キッチン溺死女のチョン・ヘビンは、02年にアイドルグループとしてデビューしたが鳴かず飛ばずですぐに解散。その後に出た映画デビュー作が本作だった。ここで憎まれ役を立派に果たし、本作の後はしばらくセクシー路線のソロ歌手として活動。

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 その後はエクササイズやダイエットでも有名になった、どちらかといえば“肉体派”だ。 ドラマ『また!? オ・ヘヨン』(16)や『ロマンスは計測不能』(19、下画像)などで、10年代もヒロイン・主演級女優として第一線で活躍した。

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 ちなみにナム・サンミとチョン・ヘビンは、歴史ドラマ『朝鮮ガンマン』(14)で再共演を果たしている。

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 狂女を演じたシニは、波乱万丈の女優人生を歩むことに。少女の葛藤と放埒な性を描き18禁映画でありながら傑作と評された第1作の同名続編『イエローヘアー2』(01)に主演。隠しカメラでSEXを盗撮され元マネージャーに脅迫される女優志望のミニストップのバイト店員役だ。この当時、“O嬢事件”、“P嬢事件”などと騒がれ韓国をたびたび揺るがしていた、女性芸能人たちのリベンジポルノ被害という社会問題を体当たりで演じた(下画像)。

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 その後も、ハ・ジウォン主演の『セックス イズ ゼロ』(02)、続編『セックス イズ ゼロ2』(07)など、セクシーなイメージでも活動していたが、そもそものデビュー作はKホラーの原点『女校怪談1』(98)での脇役だったというから本稿的には驚きだ(下画像の真ん中、コメディリリーフである凸凹劣等生コンビの片割れ。言われても本人だと判らん!)。出発点がコミカル演技で、ゼロ年代には脱げるコメディ女優として引っ張りだこだった。

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 ハ・ジウォン主演のドラマ『バリでの出来事』(04)と映画『ふたつの恋と砂時計』(05)、ハ・ジウォン抜きでも映画『B型の彼氏』(05)と、コミカルな名バイプレイヤーとして欠かせない存在だったこの時期の彼女を、日本でも覚えている人は多いはず。本国でも当時「甘草俳優」、「甘草演技」と評されていた。「甘草」とは、漢方薬には必ず入っている、特に重要な役割は無いがとりあえず不可欠な材料。誉めてるようで貶している。本人はその頃、コミカルな役ばかり回ってくることが不満だったという。本作『霊(リョン)』でも、試写では登場シーンでなぜか笑いが生じ、気にしたと語っている。共演作が多くその引き立て役を務めさせられていたゼロ年代TOP女優のハ・ジウォンに対しても、「嫉妬を感じたことはないか?」との質問に、

「たくさん嫉妬した。 あの子はどうしてする事なす事すべてがうまくいくのかと考えたりもした」

 と率直に語っている。自分ももっと美人になれば良い役、シリアスな役が貰えるかと整形手術を受け、その結果、ビフォーとのイメージギャップ、アフターは「個性が失くなった」との理由から、むしろ逆に仕事が減ってしまい、2010年代には不遇な時期が数年間続くことに。マネージャーに捨てられ自分で営業していたというその頃の苦労話は、初期の主演作『イエローヘアー2』を彷彿させる。その辛い心境をトーク番組で吐露し、今はそこを踏み台にして、再びメディア露出が回復しつつあるようだ。

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 最後に監督について。本作が30歳でのデビュー作となったキム・テギュン。脚本も担当している。ベトナムとの合作映画『ムイ~肖像画の伝説~』(07)、『絶対クリックしてはいけない動画』(12)と、以降もホラー映画を撮り続けているジャンル監督だ。前述の通り、鬼ごっこ隠れんぼのわらべ歌と日帝巡査の掛け合わせの不気味さにインスピレーションを得て、「自分自身との鬼ごっこ隠れんぼ」を描いた本作だが、テーマ的には「自分は自分に本当にマッチしているのか?」、要は、自己同一性の喪失、アイデンティティ・クライシス、ということにはなるだろう。意外に深い。

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【後半あらすじ(警告!ネタバレあり!!)】
 精神病院への見舞いから帰宅すると、母親は今度は昔ジウォンが大切にしていた人形を押し入れから引っ張り出してきて、娘が幼かった頃の思い出にふけっていた。最近ゲッソリやつれてきた娘を見て「元気になってね。私まで辛くなるわ★」と優しく抱きしめる母親。

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 昨夜と同じく卒アルをめくるジウォン。クラスメイトには確かにスインという生徒がいた。そしてそれは、もっと昔の別のアルバムにも自分と2人で写っている少女の、成長した姿でもあった。スインとジウォンは高校の同級生である以前から、幼馴染みでもあったのだ。

 その夜、再び悪夢。場所はプールのロッカールームだ。ずぶ濡れの人形を引きずって歩く少女時代のスインが夢に現れる。そう、母親が引っ張り出してきたあの人形だ。小さい頃にスインとよく遊んだ物だ。

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 また記憶が一つ蘇る。ジウォンはスインに、4人組の1人キッチン溺死女の替え玉受験を受けさせ、そうすれば4人組の仲間に入れてあげると約束し、だが結局は「勘違いすんなよ、気安く友達ヅラしてんじゃねーよ!」と冷たく突き放したのだった。こんな陰湿なイジメを過去に自分が主導して!? にわかに信じられない、信じたくない現在のジウォン。

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 翌日、スインの家を訪ねてみることにした。商店街の中の粗末な魚屋で、母親独りで店を切り回している。娘は行方不明で今どこで何しているか消息不明だと言いながらも、娘の元親友を歓待してくれるスインの母親。娘は高校時代ずっとジウォンのことを自慢していたという。たった1人の大事な親友だと。

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 そこで追加で蘇る記憶。あのキッチン溺死女から替え玉受験を強いられていたスインを、当初ジウォンは守ってあげていた。高校時代もスインとジウォンは最初のうちは親しかったのだ。ジウォンは勉強が出来てスインは美術が得意。ジウォンは苦手な美術の課題である、天使の紙粘土人形づくりをスインに手伝ってもらいながら、机を並べて仲良くおしゃべりした日を思い出す。将来何になりたいかという会話でスインは「私はジウォンになりたいの★。あなたはどんな難関大にだって受かるぐらい頭良いし。子供の頃、私たちは貧乏なせいで仲間外れにされてたけど、今じゃあなたはお金持ちで友達もいる。私はあなたがいなければただの独りぼっち。私もあなたみたいに…」としみじみ答える。

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 だが、その話題は地雷だった。ジウォンにとって決して触れられたくないコンプレックスなのだ。「一緒にしないで!言っとくけど、私とあんたは違う!もう昔の私じゃない。昔の話はしないで!」と態度が豹変するジウォン。カメラ女の「お父さんが亡くなって、あなたは八つ当たりできる相手を探し始めた」という言葉が思い出される。

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 以降、スインを目のかたきにするようになり、替え玉受験の件も、むしろ以降はジウォンが意地悪4人組の中で主導的役割を果たすようになり、「そうすればまた親友になってやってもいい」と無理強いしたのだった。スインが言われるがまま替え玉受験をしてきたので、一応は4人組に迎え入れはしたものの、ジウォンは以降もスインのことを冷遇し続けた。「勘違いすんなよ、気安く友達ヅラしてんじゃねーよ!」と言ったのは受験会場出口での出来事。さらに、5人で昼のお弁当を食べる時、スインの弁当をジウォンは床に叩き落としたりもした。家が魚屋だから。魚が入っていたから。ジウォンは魚臭いのが嫌いなのだ。

 スインの魚屋から帰宅すると、オッパが家の外で待っていて、エンジェルの紙粘土人形を渡す。「これは、かつての君が俺にくれたものだ」と。昨日何か隠していると責められ、ついにオッパは洗いざらい話す決心をした。やはりオッパとジウォンには、記憶が無くなる前、高校時代から付き合いがあったのである。先輩のオッパが兵役に行くことになり、その時にジウォンがプレゼントしたのがこの手作りの、そう、スインに手伝ってもらって完成させたエンジェル人形だった。また、前にオッパがくれたネックレスも、そもそもはジウォンが高校時代に「買って」とねだっていた物だった。当時は、ジウォンがオッパに惚れており、オッパはジウォンを妹のような存在としか思えず、若干迷惑していた。だが、兵役を終えて再会してみると、ジウォンは自分の恋愛感情も、それどころかオッパの存在さえも忘れていた。初対面の赤の他人で大学の学友として付き合い直すうちに、これまでと違う明るく自信に満ちたジウォンの新たな性格に、今度はオッパの方が惹かれていったのだという。

 全てを打ち明けてくれたオッパ。ジウォンは高校時代の4人組についても質問してみる。当時ジウォンからオッパは、グループ4人組の名前ぐらいは聞いていたが、会ったことはなく詳しいことは知らないという。この会話の中でオッパはあることに気づく。そういえば4人で行ったという、奇怪な出来事の発端であるという、例の旅行。その時の写真、4人一緒に写っているが、それでは、撮影は誰がしたのか!? 5人目としてスインも旅行に来ていたのでは?スインは今どこに?死んだ?旅行で死んだのか?どうして?答えは、精神病院に隔離されている3人目、あの狂女に問い質すしかない。

 夜分にも関わらず精神病院に行くと、ちょうど狂女が変死した直後だった!やはり溺死だ。もちろん隔離病棟に人が溺れ死ぬ量の水なんて無い。その足で警察に行き、一連の事件は心霊現象だと刑事に訴えるが、当然ながら真剣に取り合ってはくれない。

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 もう、残された道はひとつ、4人組で旅行に行った場所を再訪し、手がかりを探すしかない。バスに揺られ、1年数ヶ月前に訪れているはずの渓谷に向かうジウォンとオッパ。今はオフシーズン。他のハイキング客など誰もいない山奥だ。山からの湧き水が小川となり、滝になり、深い滝壺を作っている。その滝壺を眺めていた時に、ついにジウォンは全てを思い出す。

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 1年前、パシリに使えばいいというジウォンの鶴の一声で、お情けでスインも5人目として旅行に同行していた。

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 そして、スインは水泳が得意だと幼馴染みゆえよく知っているジウォンは、悪ふざけで、彼女をこの滝壺に突き落としたのだ。

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 嘲笑い、はやし立てる仲間の3人。ジウォンはいつもの癖で、口角を片方だけ吊り上げ、冷酷そうに嗤う。

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 だが、そのジウォンのことも、残りの3人は続けて滝壺に突き落とす。実は3人は、ジウォンのことも真の仲間だなんて認めてはいなかったのだ。あの狂った3人目が精神病院で「誰もあんたなんか好きじゃなかった!皆で利用してただけよ!」と言った通りに。

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 最初にキッチンで溺死した女こそがグループの影のリーダーもしくは黒幕だったのだ。スインに替え玉受験もさせ、今、ジウォンのことまで滝壺に突き落とさせたのも、この女の仕業である。

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 だが、ジウォンは泳げない。そう、ジウォンは全く泳げなかったのだ!★溺れて沈んでいくジウォン。スインは泳ぎが達者だ。一度は余裕で浮上してきたものの、ジウォンを助けようと再び深く潜るが、溺れるジウォンは半狂乱になってもがきまくり、結局、助かったのはジウォンの方だった。スインは河底の石に足を挟まれ、そのまま見捨てられたのだ。

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 どうにか岸まで泳ぎ着いたジウォンに、キッチン溺死女がかけた言葉が「忘れるの。死ぬまで記憶を葬り去りなさい」だった★

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 今、それから1年の時を経て、ジウォンはオッパが止めるいとまも無く、同じ滝壺に衝動的にダイブする!今の彼女はなぜか水泳が得意だから余裕で潜水できるのだ。そして水底で、1年間そこに沈みっぱなしだったスインの遺体を発見するのだった。全く腐敗していない、いま死んだばかりのような綺麗な水死体を。

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 オッパに水から引き上げられ、ジウォンは水際でひたすらスインに謝るしかなかった。通報で駆けつけた警察によれば、水質の関係で遺体は腐敗しなかったとのこと。また、ジウォンが殺人罪や過失致死などに問われることもなく、水難事故として処理されるだろうとも。警察が現場に連れて来たスインの母親と抱き合い、ただただ泣くしかないジウォンだった。

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 全ては終わった。どうにかオッパに連れられ自宅まで帰ってきたジウォン。今晩も母親が待っていてくれた。ジウォンは母親に言う。「留学はやめた。今までできなかった親孝行をしようと思うの。何もかも終わったから、これからは幸せになろうね」と。もう、失われた記憶から逃れるために、人生をゼロから海外でやり直す必要は、無くなったのである。

 しかし、ここからがこの映画のクライマックスだ。そう、まるで『リング』で松嶋菜々子が井戸の底で貞子の白骨死体を掘り当てた後の展開ように…。というか『シックス・センス』のように…。


【大ドンデン返し】
「何が、“何もかも終わり”ですって?これからが始まりよ!」と母親。「え?ママ!?」と唖然とするジウォンだが、母親は「ママですって?ww」と嘲笑いながら「まだ分からないの?wwww」と言う、その時の口角が、片方だけ意地悪そうに吊り上がるのだった。「私が誰か分かれば、自分が誰かも分かるでしょ」だんだんと鬼の形相に変わってくる母親。いや、母親ではない。本人が母親ではないと否定している。「あんたの体は魚臭くてヘドが出るわ!恩を仇で返すなんて!私になりすまして楽しい!? 幸せなつもり!?」と続ける。「夢であんたを苦しめたのは、肉体を取り戻すためよ!」 ジウォンは打ち消すように首を振り続け「いいえ!自分が誰かは分かってる。私がジウォンよ!!」と言ってはみても、すでに自分でも真実に半分気づいてしまっている。そこに畳み掛ける母親「あなたはスインなのよ!」

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 ここでフラッシュバック。

★キッチン女が言った「忘れるの、死ぬまで記憶を葬るの」という言葉
生前「私はジウォンになりたい」と夢を語っていたスイン
事故までカナヅチだったジウォン。今では水泳は趣味・特技
爪を噛む癖は、高校時代はスインの癖だが、今ではジウォンの癖
事故以降、化粧しなくなったジウォン。前はスッピンはスインの方だった
ジウォンの悪夢に出てきたジウォンのドッペルゲンガー
高校時代のジウォンのアルバムを見て独りさめざめと泣いていた母親
オッパに贈られたネックレスを勝手に自分の物にした母親
やつれた娘を見て「元気になってね、私まで辛いから」と言った母親

 今や全てがつながった!1年前、滝壺で溺れたあの時、くんずほぐれつ2人でもがき合っていた際に、実は2人とも一緒に溺死し、スインの霊がジウォンの遺体に入ったのだ。「私はあなたになりたい」という夢がそんな形で叶ってしまうとは! 泳げるスインinジウォンbodyは、岸まで泳ぎ着き、そこでキッチン女から「忘れるの、死ぬまで記憶を葬るの」と言われ、本当に全てを忘れてしまったのである!だからそれ以前の記憶が一切無かったのだ!!

 一方ジウォンの霊は、なぜか自分の母親の肉体に憑依した。母親は、父親が死んでから酒浸りで廃人同然。母娘の中も険悪だったという。心が半分死んでる人間には憑依しやすいのか!? 詳しい説明は無いが、とにかく母親に取り憑き、ママとしてスインinジウォンbodyにこれまで接してきたのだ。好きだったオッパにねだっていたネックレスをスインinジウォンbodyが貰ってきたらすぐに横取りしたのはそのためだ。高校時代のアルバムを見て独り泣いていたのは、若い、本来の自分の体に早く戻りたい、ということだろう。

 一緒にスインをいじめていた、仲間だと思っていたが、裏切って私まで滝壺に叩き落とし、助けもしなかった憎いあの3人組を、1人残らず祟り殺してやった今、ついに、本来の自分の肉体を取り戻すべき時がきたのである!

「そろそろ体を返して頂戴!」と言うジウォンin母親body。日に日にやつれるスインinジウォンbodyを心配して「元気になって、私まで辛いから」といたわったのも、中身なんかどうでもよくてbodyが損耗すると困るからだった。そして母親は噴水のように、破裂した水道管のように、口から大量の水を吐きまくり、吐き終えるとその場に失神する。

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 リビング一面に広がった水の中から、全身ズブ濡れの怨霊が這い出してくる。これが本当のジウォンの霊なのか!?

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 ここも完全に貞子のまんま。カクカクした異様な動きまで。当初は顔を映さない点もそう。

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 そして、顔が映ると、その顔は…ジウォンの顔だった!! この部屋にはジウォンの顔をした人間だか霊だかが2人いることに。水の中から現れた貞子風ジウォンに、コーナーまで追い詰められるスインinジウォンbody。

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 だが、そこでスインinジウォンbodyは、そこらに散乱している割れた破片でリストカットする。「あなたは私の親友だった。ごめんねジウォン」と言ってジウォンbody(つまり自分が借りている体)の手首をバックリ。その一瞬だけスインの顔に戻り、失血でバタリと失神してしまう。倒れると同時にその顔は元のジウォンbody顔に戻っていた。怒り狂う貞子風ジウォン!

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 …目が覚めると、そこは病院だった。オッパが付き添ってくれていた。退院し、家に帰ってくるスインinジウォンbody。そう、結局、スインの魂はジウォンの体に入ったまま、その現状は変わらず終いだった(せっかく遺体が腐ってなかったのだから自分の遺体に戻ればいいのに…と筆者は思うが)。

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 大量水吐き後に完全に廃人と化してしまった母親は入院したままなので、これからは独り、この広い家で“ジウォン”として生きていく覚悟だ。だが、実の母親のことは気になる。そこで本当の自分の家である魚屋を見に行ってみた。こっそり物陰から、魚をさばく働くお母さんの姿を、爪を噛み噛み悲しそうに見つめるスインinジウォンbodyなのであった。

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 しかし、どうも魚屋にしては魚のさばき方が手慣れていない。目つきも異様に鋭い。どうやらジウォンの霊はなおも成仏せずに、今度はスインのお母さんの体に取り憑いたらしいのだ(ジウォン母の肉体には何故か戻らないという判断をしたようだ)。娘スインの死体が発見され、心が折れた母親。やはり、心が半分死んでる人間には憑依しやすいのか!? 詳しい説明の無いまま、市場を立ち去るスインinジウォンbodyの遠ざかる後ろ姿を映しながら、映画は終わってしまうのであった。 [終劇]

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(なお、この最後のドンデン返し、実は、とても解りづらい。本国のYahoo質問箱的なネット空間にも「オチがよくわからないけど誰か教えて」といった投稿が多数寄せられている。ここまで書いたのは、あくまで筆者はそう見立てた、という自説なので、悪しからず)


【蛇足:言いたかないけどツッコミどころ満載】
 まず、3人のイジメっ子を次々と溺死させていった貞子風の怨霊、あれは誰だったの!? だってジウォンの霊は自分の母親の体を乗っ取り中なんだよね!? 母親bodyから一時的に抜け出して元仲良しグループ3人を祟り殺してからまた母親bodyに戻った?では抜け出ている間は空っぽの母親bodyはどうなっていたの?虚脱状態だったのか?そこ描かなきゃダメだよね!

 あと中盤、ジウォンがプールで霊に水中に引きずり込まれ溺死しかける展開があるが、は!? 泳いでるのはスインinジウォンbodyで、それを、ジウォンの霊が(母親bodyから一時的に抜け出して)溺れさせようとしたってこと?え?じゃあ自分が取り戻したがってる体を殺しちゃうじゃんよ!

 それと、ジウォンは髪が長かったことは高校時代も大学に入ってからもない。なのにどうして怨霊化した時だけは、ちょうど貞子か伽椰子ぐらいの程よく不気味な長さのロング黒髪になるのかなぁ?冒頭、キッチン溺死女がシンクで見つけた長い女の髪の毛は、誰のものなのかなぁ?ただ貞子っぽい雰囲気にしてみたかっただけっす、って理由じゃ、まさか、ないよね!?

 それ以前のそもそも論。行楽地の滝壺で水死したスインの霊が、すぐ隣で一緒に溺死したジウォンの肉体に入り込んでしまった理屈は、解る。「私はあなたになりたい」と言っていたぐらいだから、死の瞬間にそれが思ってたんと違う形でだが叶ってしまったのだろう。だが、『転校生』のように2人の心と体が入れ替わるなら解るが、遥か遠く、おそらく日光か房総と都内ぐらいは、数十kmは離れていそうなソウルの自宅にいるジウォンの母親の肉体に、滝壺で死んだ娘の霊が入り込んだのは、なぜ!? さっぱり解らない。なお「心が半分死んだ人間には憑依しやすいのか!?」と先に疑問符付きで書いたのは、あくまで筆者の勝手な憶測であり、作り手側からの詳しい説明が一切無いので、本当のところは解らない。

 また、魚の生臭さがジウォンは嫌い、という設定。高校時代にジウォンがスインの弁当を床に叩き落とす回想シーンから、これは、ジウォン自身が嫌っていたと判断できる。スインは魚屋の娘なのだから、魚の臭いが苦手だとは考えにくし、弁当のおかずに入れてくるわけがない。しかるに劇中、ジウォンin母親bodyが魚のチゲを作り、記憶喪失のスインinジウォンbodyが臭そうに「私、魚が嫌いなのよね」と言って、ジウォンin母親bodyが「好き嫌いはダメよ?」と叱る、朝の食卓のシーン。あれは、矛盾していないか!? ジウォンin母親bodyは、嫌いな魚を食材に料理したの?スインinジウォンbodyはいつから魚嫌いになった?魚の臭いが大嫌いな魚屋の娘だったのか?ラストでジウォンの霊はスインの母親に憑依したが、そんなに臭いが嫌いなら魚屋で働くのキツくないっすか?結局、最終的に、魚が嫌いなのは誰だったのよ?ってか、そもそも、この設定要る?

 と、監督自らが書いた脚本に矛盾や欠陥、少なくとも説明しきれていない部分が山ほどあることは否めない。

 いや、単に筆者の理解力が低くて何かを見落としているだけかもしれない。DVDが出ており容易に視聴できる本作なので、機会があればぜひ本作、鑑賞して、以上のツッコミどころをその目で確かめていただきたい。

 最後の最後に、本当にどうでもいい蛇足だが、本作の水中撮影用のセットが、何者かに放火されて全焼するという事件だか事故だかも起きたそうだ。幸い人命被害は無かったとのこと。

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 で、実は現場では霊がたびたび目撃されていた、などという取って付けたような話まで飛び出して、除霊祭が執り行われましたとさ。おしまい。[終]

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