歩く夜、廻る気分

私は、まあまあな田舎に住んでるんですけど、夜の散歩って好きです。

暗いし、人がいないのも良いですね。虫とか蛙の鳴き声は聞こえるんですけど、自分以外のすべてが眠ってしまったような感覚にすらなります。

そうして、真っ暗な道を歩き続けると、そのうち街灯や信号機の明かりが見えてきて、その下を歩くと私の影だけがぬっと、伸びるんですよね。

観客のいない舞台みたいで、とても気分がいいです。

そうしてずんずん歩いて、橋まで辿り着きます。鉄骨系の橋だったらもっとかっこ良かったんですど、そんな大層なものではないです。等間隔に照らされるスポットライトの下を歩きます。

ただ、歩きます。誰もいません。もし、悪意の人間にここでエンカウントしてしまったら、誰も助けてくれません。

だから私は、悪意の人間になって歩きます。

歩く、歩く、歩く。

歩く中で様々な妄想をします。破壊的な悪意の妄想です。真っ直ぐを睨みつけて足早に進みます。

コンビニ前、改造バイクがたむろっています。怯みそうになりますが、目もくれません私は風を切ってずんずん歩きます。

コンビニを通り過ぎると少し安心して、速度が落ちます。

ふと、積読の詩集のことを思い出します。ランボオ、ボードレール、ニーチェ、中也……考えだしたらきりがありません。

読みたい。ひとつの詩を読んで、暫く浸っていたいのに、そんな余裕がない。

10年前、学校の図書館で好んで読んでいた書籍のタイトルと作者が未だに分からなくて内容すら忘れかけている憂鬱。

折角心地よい夜風の中緊張感と共に歩いていたのに結局陰鬱にのまれてしまう。

夜はまだ永いです。

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