大衆アンチ拗らせ失笑

前回の記事で私は大衆アンチを名乗った。大衆アンチとは、大衆が笑顔で受け取るもの全てに不信感を抱き避ける傾向である。

記事の中で尾崎豊の名前を出した。勿論、尾崎豊は大衆に認められたアーティストである。しかし、私の世代で尾崎豊の曲を好んで聴く人はあまりいない。

というか、そもそも最近の音楽はサブスクリプションサービスでジャンクフードみたいな軽さで消費されているような感じがするのだ。

ランキングの上位の曲を聴いて流行りのアーティストを語るな……と私は言いたい。なぜなら私は音源厨だからだ。

さて、ところで私は今、キラキラアイドルにハマっている。大衆コンテンツの極みのような大衆コンテンツである。

自身がハマっている事に薄々気付きながらもハマっていることを認めたくなすぎて、ハマっていると公言するのに1年以上かかった。

認める過程で私は困惑し、自己嫌悪に浸り、頭を抱えた。暗い寝室を好み、雨の夜の日しか好んで外に出ないような私は確実に太陽の下で笑顔を振りまき、大衆を笑顔にするキラキラアイドルの客ではないからだ。

しかし、キラキラアイドルである彼らは別に私好みの湿っぽい部屋、或いはラブホテルの一室で聴く音楽ではないという事に途中で気付いた。即ち、外に出たくないと再三言っているのに最低限生きていくために行かなくてはならない仕事場までの道中及び準備時間が私にとって適切な視聴時間である。

それでもハマっている自分に違和感があった。彼らはよくラブソングを歌っているが、以前書いた愛に関する考察の記事の通り、私は軽々しく愛を騙る人間を赦してはおけない。

それでも何を思ったのか私は最新のシングルの通常版をフラゲした。そして照れ隠しに、こう皮肉った。

我ながらひどい言い草である。そもそもピッチ修整してるかもわからないし、歌録りをしてピッチ修整しないとなんだか不安定な仕上がりになるのは恐らく私だけであり、それは間違いなく素人だからである。因みにこのツイートをした翌日、全ての形態を購入した。

CDショップの店員さんに昨日も来てましたよね、と顔を覚えられた。屈辱である。こんなことになるならDepecheModoや浅井健一のCDを毎日買って覚えられたかった。

悲しいかな。強がってはいるが、なんやかんや言って私は割とちゃんとハマっていた。それまで発売されたアルバムやシングルの通常版はレンタルショップで借りていたので物は持っていなかったが日々の通勤で毎日聴いていた。(音源厨なのでレンタルに無かった2枚組のものはプレミア価格で購入した)

メンバー一人ひとりの歌い方のクセを研究して、どうにか自分の声帯からその音がでないかを模索した。職場で研究成果をプレゼンしたら、そんな気持ち悪い聞き方しているのはファンの中でもお前だけだ(意訳)とドン引きされた。

愛とはなんの事を歌っているのか、信頼に値する言葉が欲しくてインタビューが載っている雑誌を買い漁った。

書き忘れていたが、私はハマっていないことを証明するためにだいぶ前に有料ブログサイトに半年分課金しているし、同じ理由でファンクラブにも入会している。なにかあってはいけないと、ウェブショップにも登録済みだ。ついでにどんなもんや、と喧嘩腰でカレンダーも買った。

完全にただの哀れなおたくである。

サブスクリプションの話に戻ろう。当然のように、彼らの音楽はサブスクリプションに無い。そして、どういうわけなのかシングルの初回限定版にしか入っていない曲というのが結構な数あるのだ。

レンタルショップにシングルは通常版しか置いていない。オンラインならあるのかもしれないが、私は笑えるくらい所得が低いのでオンラインレンタルに必要なクレジットカードの申請に通らない。

そう、買うしかないのだ。たとえ割高だったとしても。何故なら私は野生の音源厨だから。

私がどれくらい音源厨かという話はまたいつかしようと思うけれどとにかく音源が欲しくて堪らない。ついでにDVDも付いてくるんだっていうなら安いものだ……

……と言いたいところだが安いわけが無いのだ。私の所得は新卒社会人の1/4にも満たないだろう。そこから固定費が抜かれると、せいぜい1ヶ月に使える小遣いは5000〜10000。大学生でももっと経済を回している。

血迷った私は今の仕事とは別に、ラブホテルの清掃をすることにした。映画、ホーリー・マウンテンの中で錬金術師は自分の糞を金に変えた。私も他人の糞を掃除することで時給に1000円上乗せにするタイプの錬金術師になるのだ。

さて、面接はホテルの一室で行われたのだが、完全にアダルトビデオの導入のしょうもないお約束を彷彿とさせ、私はにやけた。出てきた麦茶にもにやけた。なんだか全てがアダルトビデオみたいな感じがしてずっとにやけていたら面接に落ちた。余りにも哀れな童貞様である。

私は仕事を掛け持ちすることを辞めた。今までも何度か掛け持ちしていたが、毎回精神を病み、3ヶ月ほど何もできない状態で仕事を辞める羽目になっていたからだ。なんなら、週5で8時間勤務することすらできない私にとって掛け持ちなんて無謀なのである。(そもそも超絶引きこもりなので週5で外に出ることが物凄くストレスでむりです)

そうなれば、私は趣味を無くすか、一攫千金に賭けて小説を公募に出すのみである。私は小説を書き始めた。ついでに曲もつくった。

自信があったから投稿したわけではない。何もわからない。ただ、もし私のこの緩みきった退屈な日々が、終わった感受性が変化するきっかけになればいいと思ったのだ。

自信はいつでもない。暗中模索だし、友達も少なく、頼るのも下手な私は結局一人で勉強して一人でなにか作ることしかできない。そんな中、キラキラアイドルの歌の一節がふと頭に浮かぶ。

信じ抜けるかを試す時代

Mazy Night / King & Prince

なるほどね。私はこれの一節の前に自分自身を、と付けたくなった。自分自身を信じきれない人間が溢れた世界。私達はSNSで自分の価値を他人に委ね、傷付け合う光景をもう嫌というほど見てきた。だからこそこのフレーズが響いた。もう私もMazy Night Shiftとかに改名してやろうか。ってくらいには感銘を受けた。自分のチョロさに嫌気が差した。

そうか、でも彼奴らはこうやって、人間に活力を与える仕事をしているんだな。等と思う。私の原動力は負けず嫌いによる怒りと焦りだが、心が折れそうになった時はそういうキラキラをインプットしてみるのもいいのかもしれない。夢追い人なら尚更、絶望だけでは心が腐る。

とはいえ、やっぱり性根が腐ってこそ私であり、私の小説なのである。給料の殆どをキラキラアイドルに落としているが、私はまだ、ハマっているなんて本当は認めたくない。認めるもんか。

でも、顔がいいやつは生きてるだけで、好きだよ。

結局これに尽きる。私はどうしようもないくらい面食いだ。はい、お開き。

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