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コーヒーと本 Vol.49 - 岡田隆彦

現代詩文庫 30
岡田隆彦 詩集 (1970) 思潮社

いつからか思潮社の現代詩文庫を読み始めました。

しかしながら一向に読み進みません。やっと現代詩文庫 30の岡田隆彦さんの詩集を読了しました。

詩集を読み終わると、気になる言葉をまとめています。言葉集めが好きです。

それでは今回の岡田さんの詩集からの言葉を抜粋してゆきたいと思います。

なお、コーヒーのことが書かれている詩は必ず取り上げるようにしています。

詩集<われらのちから19>全篇

街(一部抜粋)

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雨のなか
おれとおまえは濡れながら
あのコーヒーやから駅まで走っていった。
あの日と同じように
今日も街は
無数の宇宙線に射られて 潰れる寸前で
べったり地べたにへばりついている。
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われらの力(一部抜粋)

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いつのまにか約束事もふるびてしまい
もうおしゃれな少女は
ありふれた服しか着られない
どうしてたやすく 裏切りあい 信頼しあい
傷つけあうことができようか
おれたちは今日の昼食から
なにかを創りはじめなければならない
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重トラック(一部抜粋)

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いま 血ぬられたするどい叫びが
眠気をゆりうごかすのか運ちゃんよ
三杯のコーヒーよりもわる酔いする声
それは あ あ バスの換気天窓から
入るひびきではなく
ぼくの手が鳩胸をすくうために
さしのべようとするほど身近から
きりこんでくる
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消化されない(一部抜粋)

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沈黙は実の喧噪を孕み
失われたものよりも多量に
何かを求める心がきしむ朝
夜はまして暗いだけで何も消したりしない
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落ちた星(一部抜粋)

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腐った言葉は命取り
わずかに歌が闇をほどいて
喉首から星が落ちたなら
空をたぐりよせろ その下で
かいなが光る混濁の空
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「彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも」(一部抜粋)

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海へ海へ 波の頂へ
だがしかし、耳すませ、
声はみな自然の袋におさめられた。
水平の線という線がみな
あんなにも美しく血を吹き出している。
独身者たち窓を見る。
台所でコーヒー挽いて、しみじみタバコ吸った。
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詩論・自伝

人口の意識と旅の感覚(一部抜粋)

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 古代歌謡や「万葉集」などを例にあげるまでもなく、遠い昔の、おおどかな<自然>に抱きかかえられていた現実においてのようには、われわれは言語そのものへの抵抗感をもつことなしに素直に歌いあげることはできない。正しく、いつわりなく思いのはしを述べるには、あまりにわれわれの関心は不純であって、つねに対象化されようとして目の前にあるものの価値を絶対的には信じることができず、それらを相対的に判断しようとして逡巡する。
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人間の内部の意識や欲望は、それらが逐次反映し実現している機械文明社会としての外部に滲出しつつあり、それに代わって、人間の空洞には、これが人間の真の内部影像だといわんばかりに、機械文明社会の風景や産出される物量が入りこんでくる。こうした皮肉な状況の中で、自律した意識を特有のしかたにおいて、しかも詩表現によって客体化するためには、どうしても詩表現自体が、透徹した思考に貫かれた<人口>という構造を具備しなければならないと思う。
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(岸田劉生の「自然の美と美術の美」(大正八年)からの言葉)
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自然の美といふものは実は外にあるものではなく、寧ろ吾々人間の心の衷に在る。外にあるものは唯の物質に過ぎない。その心なき物質が、「自然の美」とされるのは、其処に人間の心が加はらなくてはならない。美は人類の衷にある一つの要求であり又意志である。善と真を欲する人間の精神は同じく美を欲せずにはゐられない。均斉とか調和とかいふ美の標準も外から定められたものではなく、我々が衷に持つ、自然の美の本能によつて生まれるものである。
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古来、芸術の営為を<旅>になぞらえてした者は多い。ギリシア・ローマ時代の詩人たちや、杜甫、李白などに代表される東洋の流寓述志の詩人たち、ジョン・ダン、ハート・クレイン、サン=ジョン・ペルス、わが国では西行、芭蕉、良寛、下って三好達治等々、なかでわたしが関心をもっている者だけに限っても枚挙にいとまがないほどである。
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行為というもの、作る行為というものが芸術の原理そのものであったというあたりまえの事実をぜひいっておかなければならない。この事実をふまえるならば、<旅>、かつては二の足で歩いてした行為がじつに行為を浮き彫りにしていることによって、それが芸術の根本原理を可視的にあらわしているとみるわたしの考えはあながち突飛なものにとられないだろう。
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 乱暴ないい方をすれば、自然は環境とほとんど重なりあってきつつある。ほんらい環境は、自然を概念的に、人間化してとらえなおしたもののことだったと思われるが、じつは概念と事実現象がまざりあっているのだ。対極にあった自然がこのように具象性を失っている現在、芸術表現にたずさわる者が人口の意識にますます深くおちこんでしまうことは容易に納得されるとはいえ、旅の風景の原質が失われることはあるまいと思う。そして、人口の意識を正当に止揚する最大の因子はなんといっても旅の感覚に求めることができるのではないだろうか。
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作品論・詩人論

少年でありつづける苦しい特権 飯島耕一(一部抜粋)

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 数日前は渋谷のブルックボンドに岡田を呼んで会い、曇った午後だったので、一杯のコーヒーと一杯のあたためた葡萄酒で、めずらしく二、三時間、しんみりと話した。岡田はしきりに空しいといったことを言い、ぼくも何やら空しいような悲しい気分になった。
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以上となります。

岡田さんはおそらくコーヒー好きだったのであろうことが詩を読んでいて感じました。

詩人によっては「コーヒー」という単語がたびたび出てきます。

この現代詩文庫を読み終えるまでにどのくらい「コーヒー」が詩集の中に登場したのか、それを振り返ることが楽しみです。(何年かかるんだろう)

さて、ぼくのコーヒー体験は地元にある純喫茶ではじまっています。その喫茶店のマスターから詩を教えてもらいました。

色々あって気軽には行けなくなってしまったその喫茶店のマスターももう80歳を超えたはずです。

街でたまにみるマスターの姿は20年前のそれとは変わってしまいました。誰しもが老いる。でもマスターの目は変わっていない。

ぼくもせめて目だけは変わらずに生きたいと思っています。


<今日の誕生日>

2月16日 
ジョン・ブラッドベリ(1953 – 2015) この日イギリスで生まれたドラマー。The Specials のメンバー。

Buddy Deppenschmidt(1936 - 2021)アメリカはペンシルベニア州で生まれたジャズ・ドラマー。Charlie Byrd Trioのメンバー。

友川カズキ(1950 - )日本は秋田生まれのミュージシャン。


<今日の語学学習>

Trabaja como leñador en el bosque.
He works as a lumberjack in the forest.
彼は森林で木こりとして働いている。
그는 숲에서 벌목꾼으로 일하고 있다.
(geuneun sup-eseo beolmogkkun-eulo ilhago issda.)



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