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綺譚 毛むくじゃらのユニコーンが語る「極意」とは?

ユニコーンと言っても、多数の人(存在)がいる。
個性溢れるユニコーンたち。

毛深いユニコーンもいる。

そんな不思議なことを真顔で語るのは、「ユニコーンと縁が深い」という女性である。

50代前半の彼女は最近、夜な夜な見る夢の中で、ユニコーンの一族が住む城を訪れて、特別な訓練を受けているのだという。

どういうことか。

彼女の一回り年上の夫は、十数年前に若くして病気で亡くなった。
喪失感に浸る暇もなく、働きながら育てた子どもは、工芸分野の専門学校を卒業したばかりだという。

子が独立してホッとした折に思い出したのが、ユニコーンのことだった。

幼少期に、夢の中、あるいは白昼夢のような状態の時に、よく見た存在であった。
角を持ったその馬は、夢の中、あるいは白昼ぼうっとしている時に、たまに語りかけてきた。

少年向け小説やマンガに触れるようになって、「あれはユニコーンと言うのだ」と知ったのだった。

彼女は、日本が高度経済成長期を享受している頃に生まれた。
鎌倉時代からの家系図があるという由緒ある血筋だが、一族は太平洋戦争後の混乱で、資産をだいぶ失ったようだった。

彼女の幼い頃の印象的な風景と言えば、名家の名残を示す立派な家から働きに出る父の背中。同じくらいの良家から嫁いできたという母も、家事の合間を見ては働きに出ていた。

そんな事情から、彼女の親代わりは、もっぱら父方の祖父と祖母だった。
祖父母は確かに彼女を熱心に育ててくれたが、そうは言っても年が離れた相手である。
次第に彼女は、ふんだんに買い与えてくれた童話や図鑑に、熱心に見入るようになった。

文字を読むのが好きな彼女は、勉強もなかなか出来た。地元では評判の良い高校に順調に進学した。

同級生たちが部活、遊び、はたまた恋にと若者生活に勤しむなか、彼女が夢中になったのは、小説やマンガの世界だった。
すでに少女マンガ雑誌は主要メディアの一つとして、女子学生たちの間で強く支持されていた。

理由は分からないが、どうしても周囲になじめなかったのだ。

ある日、彼女は自宅でマンガ雑誌を開いていて驚いた。
小さい頃、夢の中によく出てきていた獣が、ほぼそのままの姿で誌面に登場していたのだ。
夢の中の獣のほうは、もうすこし毛深いが。
獣の種類の名は、どうやらユニコーンと言うらしい。

ユニコーン。
その言葉を視界に入ってきたところ、急速に彼女の脳内には、夢の空間が広がった。
目の前にあるはずの自宅の部屋、あるいは手に取っていたマンガ冊子の様子や手の感覚は、一気に薄れていった。

睡眠中の夢で見ていた空間そのものが、白昼堂々と目の前の繰り広げられていった。

空には太陽、地には草原。
それ自体は地球そのものだが、遠くにとんでもない巨木が視界のあちこちに見えている。
おそらく、新宿の高層ビルの高さと大して変わりない。

加えて、それ以上に高いであろう巨大な山々が、景色の向こう側で崖のようにそびえ立っている。
山のてっぺんの縁からは、巨大な瀧が大量の水をこぼしている。
いくつもの虹が、その付近を彩っていた。

まるで現実味のない風景だが、彼女の意識内では、鮮やかに見えている、まさに“リアル”な光景であった。

ふと地上を見やると、水に浸されたような瑞々しい草原の奥から、少しずんぐりした馬が小走りでこちらにやってくる。
額からは、大きな角が伸びている
馬にしては毛深い気がするが、その真っ白な毛並みは、美しくなびいている。
近寄ってくるたびに、不思議な安心感が漂ってくる。
決して怖い存在ではないようだ。

いやむしろ、前から知っている。
「彼」も、私のことを知っている。

近寄ると確かに美しい馬だ。

彼に名前を何度か訪ねて、その名前を(夢の中だが)耳にした。
しかし、日本語ではうまく表現できない。何度聞き直しても、覚えられない。
ただ、印象としては「なかなか可愛い名前」というのが彼女の感想だ。
結局、何十回と聞いて一番近い言葉を見つけて、それで呼ぶことをこのユニコーンに納得させた。
「ムニュス」という呼び名である。

たびたび見る夢の中で、彼女はムニュスと共に、この壮大な光景の中を旅していた。
時にはこの聖獣の背に乗り、その足で旅をした。

あるとき、ムニュスが彼女を背に乗せながら、こんなことをつぶやいた。
「悪しき者たちのやり方が、より巧みになっている」

「土が痩せてきているだろ。草の育ち方がいまいちなんだ。
 この土地の具合が、それを示している」

夢の世界における土と草の状態が、なぜ、どのように「悪しき者のやり方」と関係しているのか、彼女にはそこはうまく理解できなかった。

だが少なくとも、ムニュスが相当懸念していることだけは理解できた。
重ねてこのユニコーンは、少し怖く感じることを言った。

「君たちの世界にも同じことが起きている」

どういうことなの、と彼女は素直に聞いた。
少し考えた雰囲気を見せつつ、ムニュスは説明を続けた。

「僕たちが今いる世界、つまり僕ら一族の世界と、君たち人間が住んでいる世界は連動しているんだ。
 この宇宙において、まったく関係のないものなんて、何一つない」

悪しき者たちというのは、ここにもいるの?
すごく平和そうで、奇麗な場所なのに。

「ああ。
 君たちの世界と同じように、悪しき者たちはここにも存在する。
 そして僕ら一族は、戦う方法を常に学んで、鍛えている。
 悪しき者たちを追いやるための方法をね」

ずっしりと重い話題に反するように、ユニコーンの足取りは軽い。

ずんずん草原を進んだ先には森がある。
森の向こう側に小高い山があり、その山の頂上にはずいぶん立派な家が建っていた。家と言うより、ほとんど城のような仰々しい建物にも見える。

突然の重い話題に、少女はなんと応えて良いか分からなかった。
少女が困惑している様子を察知したのか、ムニュスは言った。

「悪しき者たちといっても、実は普通の身なりで、普通に暮らしていることが多い。
 そして意外に、表面上まったく悪意はない、普通の者たちなんだ。
 いきなり暴力を振るうこともない。
 しかしその代わり、君の【ほんとうの自分】を失わせるように、非常にわかりにくいやり方で、巧妙に、君にいろいろな攻撃を仕掛けてくる。
 そして君から、魂のパワーを奪うんだ」

魂のパワーを奪うってどういうことだろうか?
例えばどんなふうに?

「『君は間違っている。だから言うことを聞け』
 単純に言えば、こんな具合だよ。
 本当に君は『間違っている』のだろうか?
 相手が言う『間違っている』というその内容をよく吟味すべきだ。
 君に罪悪感を抱かせて、要求をうまく君にのませるための、脅しや言い訳であることが多いからだよ。
 もし、うまく言いくるめられて、罪悪感を抱かされて、相手の言うことを仕方が無いとばかりに受け入れていると、だんだんと、君の魂のパワーが奪われていく」

「魂のパワーが奪われても、いきなり死ぬことはない。
 けれども、まるで生気をなくした生き方になり、そのまんまで人生が終わってしまう。
 君は、相手の言う『間違っている』と主張する内容を疑ってしかるべきだ。
 『君は間違っている』という前提を受け入れさせて、行動を誘導するのは、悪い連中の常套手段なんだ。
 便利だろ? 強制的に脅して動かすのではなく、君を自発的に行動させるんだ。罪悪感を抱かせて、煽ってね」

ふと、家や学校のことを思い浮かべた。
親や学校の先生は、お前が間違っているからいうことを聞きなさい、と、よく言うよ。

クラスのみんなは、うつむいた顔で学校に通っている。
魂のパワーが奪われているからかな。

「君が、周囲になじめていなくて、どことなく『居場所はここにはない』という感覚を得ているのは、察しているよ」

少しびっくりした。あなたは私の日常を知っているの?

「そもそも悪しき者たちも、魂のパワーが枯渇している。
 君たちの世界で語られる架空の魔物の、ゾンビみたいなもんだよ。
 悪しき者たちも、かつてそうやって他者から魂のパワーを奪われたんだ。
 魂のパワーがないから、他者からパワーを欲しがる。
 コントロールしやすい子どもや、素直で純粋な者に攻撃を仕掛けて、魂のパワーを奪う。
 そうやって、世界はどんどん、悪しき者たちによる魂のパワーの奪い合いでまみれていってしまっている」

「君を操作したくて強制してくる人間の言うことを、真正面から聞いてはいけない。
 相手の要望は聞いてもいい。間違っているというその主張を、一つの見解として耳を傾けても良い。
 だけど、相手の要望や見解以上のものではない」

ということは、少なくとも彼女がいる世界は、ほんとうに戦いでまみれている。

でも、避けられなかったらどうする?
家出するのも現実的じゃないし、学校をいきなり退学するわけにもいかない。
そう返すと、彼はこう答えた。

「当面、悪い連中のテリトリーの中で過ごすしかないのであれば、こういうことをするといい。
 僕らの一族に伝えられていることなんだ。極意だよ」

なかなかすごい前置きを言った後に、このユニコーンは続けた。

「【仮想の自分】を置くんだ。
 自分の目の前に、【仮想の自分】が代わりに立っている、と想像するんだ。
 その【仮想の自分】に、相手が望むような人物を演じさせる。
 でも、君自身である【ほんとうの自分】は、何一つ変えない。
 そもそも、変える必要などないからね。
 だから【仮想の自分】を使って、外の人や、外の世界との付き合い方を決めればいい」

仮想の自分??
彼女は、ちょっと面食らった。
そんなことができるのだろうか。
そもそも、わざわざそんなものを用意する必要があるのだろうか?

「『偉い人』に従わなくてはいけないことは、これから数多く出てくるだろう。
 だけど、【ほんとうの自分】を消してはならない。
 そして、【ほんとうの自分】の気持ちを、絶対に譲ってはならない。
 そのための【仮想の自分】なんだ。
 【仮想の自分】を立てて、【仮想の自分】に、相手に従っている自分を演じさせておくんだ。
 【ほんとうの自分】は、冷静に相手の言うことを聞いていればいい。
 そうしてやり過ごしながら、何とか生き延びるんだ。
 状況を覆せるタイミングを見計らって、その時に【ほんとうの自分】を出す算段を考えておくんだ。
 【ほんとうの自分】さえ失っていなければ、魂のパワーは温存できる。
 魂のパワーさえあれば、本格的に悪い連中と戦うときに、大きな助けとなるだろう。」

「多くの場合、【ほんとうの自分】でさえも譲ってしまうことが多いんだ。
 責められて、脅されて、恐怖に駆られて、要求者の言うことをまるごと受けとめてしまう。
 まるごと受けとめると、【ほんとうの自分】さえもかき消されてしまう。
 そうなると、形勢逆転は難しくなる。
 自分の心が、相手に侵略されて、植民地のように支配されてね……」

貫けるだろうか。

「自分の感覚に耳を研ぎ澄ませるんだ。
 繰り返すけど、【ほんとうの自分】を死守するべく、【仮想の自分】を上手く立てること。
 かならず、後で形勢逆転のチャンスがやってくる。
 そう信じるんだよ」
 
自分の感覚に耳を澄ませて、【仮想の自分】を使いこなして、【ほんとうの自分】を守ること――。

身体が振動してきた。胸の辺りが熱くなってきた。
わたしは、これを知りたかったように思う――。

気がつくと、目の前にはマンガ雑誌があった。自宅の部屋の雰囲気が五感を通して感じられるようになり、急速に肉体に意識が及ぶ。

ムニュスの背に乗り歩いていた、あの壮大な光景はまったく消え去っていた。

彼女はまさに白昼夢を経験していた。
時計を見ると、どうやらほんの一瞬の出来事だったらしい。

ただし、その白昼夢における記憶だけは確かだった。
あの毛むくじゃらのユニコーンが教えてくれた、【仮想の自分】のことだ。

結局、その後何年、いや何十年もの時が過ぎた。
その間、【仮想の自分】のことは記憶の彼方に追いやってしまっていた。

しかし、何十年もの時が経過してから、彼女はユニコーンの夢と同時に、突然、思い出したのだ。
ユニコーンが言っていた【仮想の自分】のことを。

彼女は約半世紀の人生を過ごす中で、すっかり【ほんとうの自分】を失っていることにも気がついた。

女はこうすべき。
女はこう生きるべき。
「すべき」にまみれて生きていた。

亡き夫を愛していないわけではなかった。
子どもももちろん大事である。
だが、彼女は妻としての人生、親としての人生を生きる中で、自分のほとんどすべてを明け渡し、世の中から「こうすべき」と押しつけられた自分で生きてきたのだった。

急に焦燥感、不安、そして涙があふれてきた。
あのとき、あの賢そうな一角の馬が言っていたことが、ようやく分かった気がする――。

すると彼女の意識は急速に、少女時代の「あの日」のように、別の世界へと移っていった。

目の前にある日常生活の空間が遠のき、彼女はまるで現実味のない、壮大な自然の風景に身を置いていた。

遠くから、あのユニコーンが早走りで駆け寄ってきた。
少女時代に見た光景と、まったく変わりない。

「いよいよ、君の本来の仕事を始めるときがやってきた」

本来の仕事?

「君は十分に【ほんとうの自分】ではない状態を生きた。
 ここから【ほんとうの自分】を取り戻すんだ。
 その歩みを通じて、より多くの人に、どうすれば【ほんとうの自分】を取り戻せるかを伝えることができる」

できるだろうか。

「できるよ」

じつにあっさりとムニュスは返しつつ、4つ足をたたんでひざまづき、彼女に背中に乗るよう促した。

彼は結構、毛むくじゃらだったことを思い出した。
毛は艶めいていて、この世界の日の光を反射していた。

「【ほんとうの自分】の声を聞く者は、世界の声を聞ける。
 世界の声は、本当に美しいんだ。
 訓練は、あの城で行うよ。
 僕らユニコーンの一族の、いわば道場さ」

立ち上がったムニュスは、彼女が若かりし頃に見た、夢の最後の場面へと向かった。

ここからがわたしの人生の本番、ということなのだろうか。
最近、世間では「100年人生」などと言うらしいけれど。

数十年越しに、あの夢の続きが始まった。

(了)

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