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THE LIBERTINESに愛を込めて、Summer Sonicに憎しみを込めて

注) この記事は2022年8月20日に投稿しましたが、不注意で削除してしまったため再度投稿します。noteの仕様上日付変更ができないのでそのまま投稿しています。話の内容は2022年開催のサマーソニックの事です。

今月20日、21日にSummer Sonicが三年振りに開催される。Summer Sonic(以下サマソニ)と言えばフジロック、ロッキンオンジャパンフェスと並んで日本の三大ロックフェスと称されるロックフェスで、フジロックやロッキンオンジャパン、その他の多くのフェスと違い東京と大阪という大都市を初日、二日目でアーティストを移動させる都市型イベント。
東京オリンピックや新型コロナの流行のため2019年以降実施されていなかったサマソニだが、世界のフェスが次々と再開されているように、今年、満を持して開催されることになったのだ。
僕は2005年に一度参加したのみで「夏と言えばサマソニ!」ってくらい毎年サマソニに参戦するような思い入れもないわけだが、それでもアフターコロナの世界において再びフェスが開催されるということに関してはやはり嬉しい。

さてそんなサマソニ2022は今年の2月に開催が発表されたのだが、僕は出演アーティスト第一弾が発表されたと同時に参戦を即決した。なぜか?それはフライヤーに
THE LIBERTINESの文字を見つけたからである。

もう速攻で友人に「サマソニやばい、THE LIBERTINES(以下リバティーンズ)出るで!」と連絡し、彼からも「よし、サマソニ参戦や」と驚異の早さでのレスポンスがあったのだ。
リバティーンズとThe Strokes(以下ストロークス)は本当に僕にとってスペシャルなバンド。僕の人生を語るにこの2バンドは欠かせない存在なのだ。そしてリバティーンズは「一生見ることが出来ないバンド」だと思っていたので本当に発表だけでテンションが爆上がり。今年の夏は最高の夏になる!と確信したものだ。

あれはたしかリバティーンズの1stアルバム「リバティーンズ宣言」のライナーノーツに書いてあったと思うんだけど、「もう最近ではストロークスとリバティーンズさえ聞いていたらもうそれで充分」といったニュアンスの一文があって、大袈裟じゃない表現だと思ったものだ。
ストロークス以降、いわゆるガレージロックリバイバルムーブメントが起こる中でたくさんかっこいいバンドが出てきた。THE HIVES、THE VINES、THE WHITE STRIPES、数え上げたらキリがない。
それでもやっぱりストロークスとリバティーンズ。この2バンドは格別なのだ。

特にリバティーンズは僕にパンクという音楽を聞くきっかけをくれたバンドだ。正直それまで僕はパンクという音楽ジャンルが嫌いだった。これは「青春パンクバンドブーム」が原因なんだけど。
青春パンクは僕が高校生の時に異常な降り上がりを見せていたブームで、アレンジなんてほとんどないようなパワーコードでジャカジャカ鳴らすだけの演奏(パンク)に夢だの恋だの仲間だの、感謝したり涙流したりのなんの捻りもないダサい歌詞を乗せて歌う、キラキラしたバンドが掃いて捨てるほど現れたあの時代。あれのせいで「パンク=ダサい」の図式が僕の中で確立されたのだ。そんな僕の価値観を破壊したのがリバティーンズというバンドである。

僕がリバティーンズを初めて聞いたのは確か2005年のことだ。ストロークスを知り、そのかっこよさにはまり、教科書通りの流れで次はリバティーンズ!とリバティーンズ宣言を聞いてみて、1曲目「Vertigo」からもう一瞬で彼らの虜になった。

どうやら僕が今までパンクだと思っていた音楽はパンクではなかったみたいだ。
ドラマチックに展開されるギターリフ、超絶技巧なドラム、二人のボーカルによるメロ&コーラスなんかは色気たっぷり。一曲聞いただけで分かる、このアルバムがいかにロマンチックに溢れているか。青春パンクでは味わえなかった充足感がそこにはあったのだ。

それからはもう毎日毎日このリバティーンズ宣言を聞きに聞きまくった。もう全曲かっこいいの。

リバティーンズの魅力と言えばやっぱりボーカルが二人いること。この曲なんて本当に完璧。ボーカルのバランスに加え、カールが弾くサビのギターリフ、シンプルなのになんて印象的!一生に一度でいいから4人が揃ったリバティーンズの演奏するDeath on the Stairsを聞いてみたいと思ったものだ(2006年のフジロックでカール率いるダーティプリティシングスが演奏する同曲は観ることができた)。

もちろん二枚目の「リバティーンズ革命」も聞いた。リバティーンズの持つ魅力、危うさを凝縮したようなお馴染みのジャケット写真はもはや彼らの代名詞とも言えるのではなかろうか。

お互いに「お前に我慢できない」と言いつつ「まだ好きなんだ」と歌う。これは単なるラブソングなのか、それともお互いにあてたメッセージだったのか。
そう、なんせ僕がリバティーンズを初めて聞いたのは2005年。「リバティーンズ革命」がイギリスのチャートで一位を取ったのも今はもう昔。メンバー間(特にカールとピート)の関係は修復不可能なほどに悪化し、バンドは無期限の活動停止という事実上の解散を宣言した後だったのだ。

「こんなかっこいいバンドがもう既に解散しているなんて」

当時の僕はそれは大層落ち込んだ。しかもバンドを調べてみるとサマソニやフジロックに何度も出演しているし、単独で日本ツアーも行ったことがあるんだと。それもたった2,3年前の出来事。しかもしかも!京都も来ていた、と。それが自分もライブ出演したことあるCLUB METROだと!本当にもう少し早く出会っていたかったと非常に後悔したものだ。

これは音楽が好きな人にとってはすごく共感できることだと思うんだけど、本当に好きなバンドのライブは見に行ける時に行かなければならないのだ。次行こうと思っていたらバンドが解散してしまった、なんてことはよくある話なのである。

そんなこんなで知った時には既に解散してしまっていたリバティーンズだが、当時(2005年)は毎日のように彼らのニュースが音楽サイトで飛び交っていた。それというのも本当にリバティーンズというバンドは物語性に満ち溢れていて、まるでフィクションを見ているかのような気持ちにさせてくれるのだ。
彼らの、特にピート・ドハーティーという男の破天荒(本来の意味ではなく誤用で広がっている方の豪快で大胆、といった意味の方)エピソードはウィキペディアなんかに詳しく載っているので読んでみてほしい。
そしてまだリバティーンズのことを知らない人は「こんなバンドエピソードはロックだ」というお題でステレオタイプなものでいいのでロックなエピソードを思い浮かべてほしい。リバティーンズは想像したそのエピソードを軽々と越えて来るロックでパンクなエピソードで溢れているから。
そんな彼らの来歴を調べれば調べるほど「リバティーンズ宣言」と「リバティーンズ革命」という二枚のアルバムがこの世に存在するのがもはや奇跡のように感じ、より一層リバティーンズにハマっていくのだ。

解散してからの彼らのニュースと言えばもっぱら再結成についてだ。というか当時は本当にガレージロックリバイバルがとんでもないムーブメントになっていて、毎日音楽ニュースサイトに「ポストストロークス現る」や「ヴァインズの日本公演が決定、オープニングアクトは○○」みたいな心躍るニュースが飛び交っていた。ガレージロックリバイバルムーブメント大好きな僕としては本当にいい時代であった。彼らに影響を受けたバンドがそれまで日本のライブハウスに溢れていた青春パンクバンドに代わって台頭してきたのも僕にとっては嬉しいことだった。

話を戻そう。リバティーンズと言えば「カールがピートとバーで会ったらしい」とか「カールが語る再結成について」とかそんなニュースが本当に次から次へと舞い込んできた。
大袈裟じゃなくて当時の音楽好きにとっては彼らの一挙一動にそれだけニュースバリューがあったってことだ。
それからちょくちょくピートとカールで一夜限りのライブを行ったり、ビートルズの企画アルバムに参加したり、以前よりは関係が良好になっているな、と思わせる出来事が増えて行った。
2010年には再結成してフェスに出演したりもしてその度にわくわくしたものである。

僕は基本的に解散したバンドの再結成はあまり好きではない。「解散したけどその後の音楽人生がうまくいかないから過去の栄光にすがってお金目的でもっかいやります」みたいな背景が見え隠れするから。もちろんそうではないバンドも多々いるんだろうけど。なので将来どうなるか分からないのだからとりあえず「解散」ではなく「活動休止」にしておきなさいよ、と常々思っている。
ところがそこはリバティーンズ。ピートはカールに「このフェス出たら1億円もらえるんだぜ、やるしかないだろ」とあっさりお金が目的と言い切ってくれるのだ。

そうしてちょくちょく単発のイベント出演と言う形で活動していたリバティーンズが2015年、まさかの三枚目のアルバム「リバティーンズ再臨」をリリースした!

これにより本格的な再結成が果たされたわけだがそうなると次は「生でリバティーンズを見たりできるのか?」という期待が生まれるわけだ。
それから早7年。結局3枚目以降新しいアルバムがリリースされることもなく、当然来日することもなく時間は流れて行った。

そうして迎えたのが冒頭で書いたサマソニの第一弾アーティストの発表だったのだ!
僕にとって、そして多くのリバティーンズファンにとってこのサマソニ出演および来日がとんでもなく待ち望まれていたものか、少しは伝わったかと思う。

正直今年のサマソニ、リバティーンズ以外にどうしても見たい、と思えるアーティストは出ていない。それに僕が行くのは21日の大阪なのだが、大阪と東京に明らかな出演アーティスト格差が存在する。
東京のみ出演アーティストがどんどんと追加で発表される中、まったく追加されない大阪。
東京はどんどんとステージまで追加されていく。ある時、大阪にステージが追加決定というニュースを見た。するとその記事の中で東京もさらにステージ追加!とあって「なんでやねん!東京どんだけステージあるねん」とつっこんだものだ。
最終的にステージの数は東京が6つ、大阪は4つ。アーティストの数に関しては数えるのがめんどくさいが、かなりの差があることは確か。
なんせフライヤーのフォントサイズがこんなに違うの。

というわけで色々と納得のいかない部分は多々あるサマソニではあるがそんなことは問題ないのである。なんせリバティーンズだ。リバティーンズ一組見られるだけでお釣りがくる、そんな思いで日々過ごしていたわけである。

もう少しだ。もう少しでリバティーンズを体感できる。断言できるんだけど、僕は彼らのステージを見た時、絶対に泣いてしまう。それは一緒に行く友人も同じだと思う。
そんな夢の時間がもうすぐそこまで近づいているのだ。最高の夏。


と、このようなことをつらつらと書きだしていた8月の12日、僕たちは絶望の底に落とされた。サマソニ公式で突如発表されたリバティーンズ出演キャンセルの文字。この発表を見た時、僕は仕事中だったのだが、正直その後の記憶があいまいだ。目の前が突然真っ暗になった感覚に襲われたあとは何をするにも頭が働かないようになった。
ようやく仕事を終えたあと、ツイッターなどでどういうことか経緯を調べてみた。最初僕はてっきりコロナで出演不可能になったと思ったんだけど(実際少し前に本番までにリバティーンズがコロナにかかるとかなったらほんまに嫌やな、と話していた)そうではなく、「メンバーのビザの取得が困難と判断されたため」。
リバティーンズを楽しみにしていた人達が全員「ハァッ?」となった。先に挙げたようにピート・ドハーティーという男は破天荒なエピソードがたくさんあり、それゆえに日本に入国することは難しいとかねてより言われ続けていたことだったのだ。それなのにリバティーンズがラインナップされたからこそファンは喜んだのであって、つまり「あのピートが入国できるのか!サマソニ、やるやん!」と思ったのだ。
それが蓋を開けてみれば「ビザの取得が困難と判断された」。こんなふざけた話があるだろうか?ビザの取得が困難なことなんてブッキングの時点から分かっていたことであって、そこがクリアされたから出演決定と発表したんじゃないの?普通の感覚だとそう思うよね?だから僕も含めて高額なチケットの購入を決めたんだから。
しかも発表のタイミング。元々リバティーンズはサマソニ東京に出演する20日の二日前、18日にフランスで行われるフェスに出演するとバンドの公式サイトに記載されていて、「18日にフランスでライブして20日の東京間に合うのか?」と心配されていたのだが、東京前日の19日にこれまたフランスのフェスに出演できなくなったバンドの代打出演が決まった。この時点で時差とフライト時間を計算すると物理的に来日が間に合わないことは確定。ツイッターを見ていると11日の時点では既に19日のフェス出演は決まっていたので、サマソニが公式でキャンセルをアナウンスするより前に「リバティーンズ来ないってことやん。どうなってるの?」とざわつきだした。その翌日にサマソニからキャンセルの発表があったのだ。少なくとも前日のフェスに出演するとリバティーンズ側が決めた時点で来日の予定は確実になくなっていたわけだからまぜ発表を12日まで引き延ばしたのか?と当然ながら疑問に思うわけだ。
ビザの申請、却下がどういう流れで行われるのか僕は知らないが、一週間前まで出演できると思い込ませてチケットを販売する。これはもはや詐欺行為である。ご丁寧にキャンセル発表時に「チケットの返金は受け付けない」の文言まで添えているのだ。
ビザの取得が難しいと分かり切っているアーティストをブッキングしておいて公演ギリギリになって「やっぱりビザ取れませんでした」、これは完全に主催者側の落ち度。それなのに返金は受け付けない、こんなことはあり得ない。
サマソニ運営はどういう経緯でこうなったかをしっかり説明する義務がある。ただ一方的に「出演キャンセルになりました、返金はしないのでよろぴく」なんて舐めた態度取りやがって。
これが許されるならまったく出演をOKしていない大物バンドを勝手に出演決定と謳って集客し、ギリギリに「やっぱりOKもらえませんでした~、ごめんね」が出来てしまう。
この件に関してしっかりと説明がされない限り、サマソニの出演アーティスト発表は一切信用できない。

そして僕は今後二度とサマーソニックというイベントに参加することはない。

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