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某ファミレスにて、真の絶望を味わうことになる話

1.某有名ファミリーレストラン

中学2年生のとある土曜日の部活帰り、僕は腹ペコな状態で部活の友達2人と一緒に、某有名ファミリーレストランにお昼ごはんを食べに来ていました。



ランチのメニューには

ドリンクバー付
ご飯&スープおかわり自由

と書いてありました。



ドリンクバー付・ご飯&スープおかわり自由だと!?と驚きつつ、僕と友人2人は、日替わりランチの「ハンバーグ定食」を注文した。



 そんな、誰にでもある日常 



…セ
…ブ、セ

声が、聞こえる ー




2.不治の病

このnoteを呼んでくれている読者の皆さんには、正直に言います。








僕の身体は、
とある病魔に侵されている








このエピソード当時から、この病は今でも僕の身体を無慈悲に蝕み続けている。なんなら、このnoteもベッドの上で執筆しています。



分かりやすく言うと、
『呪術廻戦』のメカ丸のようなイメージかな↓



読者の皆さんは、
この病をご存知でしょうか?



令和になった今でも治療する方法が確立されておらず、正式には「後天性異常妄想症候群 」と呼ばれる、この恐るべき病を ー









この病の影響によって、
僕には日常生活において「声」が聞こえる。



「おかわり自由」という文字を目にした時から、僕の脳内には「とある声」が鳴り響いて止まない。



おかわり自由のライスを
おかわりしまくって、
この店を潰せ!!

声が、聞こえる ー




3.おかわり自由

暗い話はこれで終わり。舞台を某有名ファミリーレストランに戻します。



「お待たせ致しました」と、注文したハンバーグ定食が机に運びこまれた。



腹ペコだった僕は、勢いよくライスを口に頬張り、

おかわり自由のライスを
おかわりしまくって、
この店を潰せ!!





という「声」に従い、この計画を忠実に実行する。



◆1杯目

ランチのハンバーグ定食が机に置かれるやいなや、ハンバーグをおかずにして、1杯目のライスを目にも止まらぬスピードで食べ終える。


直後、近くにいた店員さんを呼んで
「おかわり、お願いします!!」と次の注文をした。


店員のお姉さんは、ガンジス川のような濁った眼で「かしこまりました」と告げ、厨房に戻る。


フフフ、
できるだけ沢山おかわりするために、
ハンバーグを節約し、2/3以上残してある



◆2杯目

新たなライスが机に運び込まれた刹那、僕は残しておいたハンバーグをおかずに、わんこそばを食べるスピード感で、2杯目のライスを食べきる。


そして、店員さんを呼ぶと、「おかわり!!!」と意気揚々と次の注文をした。


さっきと同じ店員のお姉さんは、あまりに早い「おかわり」に驚いたのか、訝しげな表情で「かしこまりました」とだけ言い、厨房に戻っていく。


まだ戦いは序章に過ぎない
おかずのハンバーグは、
まだ1/3以上が残っている



◆3杯目

高度な戦略に基づき残しておいたハンバーグをおかずに、電光石火で3杯目のライスを食べきり、注文ボタン押して、例のごとく店員さんを召喚する。


店員のお姉さんが僕らの席に到着し、オーダーの準備をしている最中にも、「おかわり!!!!」と元気いっぱいに次のライスを注文。


僕の元気さに驚いているのか、彼女はどこか引きつった笑顔を浮かべ、「かしこまりました」とステレオタイプな返事しかしてくれない。


Badニュースだ!
節約していたおかずも遂に底をついた
付け合せのキャベツの千切りしか残っていない



◆4杯目

本来であれば「おかず」になり得ないキャベツの千切りをおかずに、4杯目のライスを疾風迅雷とも言える速度で食べきった。


そして、
100点満点の笑顔とセットで「おかわり!!!!!」と注文。


店員のお姉さんは、多くの大人が寺田心くんに対して向ける侮蔑の目で僕を見つめ「かしこまり…ました」と言った。


まだ慌てるような時間ではない、
心配しないで欲しい、
千切りキャベツはまだ半分残してある



◆5杯目

最後の希望である残りの付け合せのキャベツを全て消費して、5杯目のライスを勇猛果敢にも食べ終えた。


流石にキツくなってきた…なんて弱音は吐かない。
そして、この後の僕のセリフは決まっている。
「おかわり!!!!!!」


店員のお姉さんは、もはやオーダーを取る準備をしていない。半ば呆れた顔をしながら、おもむろに「かしこまりました」と言った。


絶望するにはまだ早い、
冒頭に説明した通り、
「スープ」もおかわり自由なのだ



◆6杯目

おかわり自由のスープはかすかな味しかしない、死刑囚が飲むような非常に簡素なスープだった。


冬の川で砂の中から貴金属を探す途上国の人々のごとく、スープ100に対し1くらいの割合でしか入っていない貴重なベーコンの欠片を探し出し、それをおかずに6杯目のライスを何とか食べきった。


そして、僕は誇り高き英雄が戦場で名乗りを上げるように、こう唱える。
「 おかわり!!!!!!! 」


非常に申し訳ないが
ここから先の記憶は
あまり鮮明ではない




「おかわり」


「おかわり」「おかわり」


「おかわり」「おかわり」「おかわり」


「おかわり」「おかわり」「おかわり」「おかわり」


「おかわり」「おかわり」「おかわり」「おかわり」「おかわり」…




…………







◆X杯目

あれ?
「おかわり」ってなんだっけ??

脳内のクリステルが、疑問を呈している ー



果てしない「おかわり」のくり返しによって、
「おかわり」という単語のゲシュタルト崩壊が始まった…



何度「おかわり」したのか分からないが、かなりの時間が経過している。
その証拠に、コーラとメロンソーダを調合する「錬金術」によろこび庭かけ回っていた友人2人も、今や疲れ切った表情をしている。



どうやら、時は来たようだ…
「会計をしようか」と友人2人に声をかけた ー




4.卑劣な罠

ライスでパンパンになった腹を抱え、吐かないようにペンギン歩きでレジに向かう。
今までお世話になった店員のお姉さんに「別々で」と告げ、3人バラバラに会計をしてもらった。



店員のお姉さん

お客様はランチですね、500円になります。

友人A

はい、500円。




店員のお姉さん

お客様もランチですね、500円になります

友人B

はい、500円。




店員のお姉さん

お客様もランチですね、7,280円になります。

はい、500円。



!??



あの~、金額間違ってないですかね?

店員のお姉さん

いえ、間違っておりません。
ランチとご飯32杯の追加で、間違いなく7,280円です。






う、うわあぁぁぁぁぁぁ!!!!!









この衝撃の事実に驚いた勢いで、必死に封印していたライス達をレジの前で胃の中から大量に口寄せしてしまった…




嘘だ!
メニューに「おかわり自由」って、書いてあったもん!!




「ほんとにトトロいたんだもん!!」
のテンションで必死にダダをこねる




ライスの口寄せが完了しているため、さっきみたいなペンギン歩きはもう必要ない。
翼が生えたように軽い足取りで、メニューを確認するために、僕らが座っていたテーブルへと向かった。




ドリンクバー付
スープおかわり自由

メニューには、確かにそう書いてあった。




スープおかわり自由とは書いてあるが、ライスおかわり自由とはどこにも書いていない。完全に見間違えたのだ。




店員のお姉さん曰く、






ライスの追加注文のことを「おかわり!」と呼ぶ、
奇妙な少年
が現れた




と厨房内では話題になっていたそうだ。



注文のたびに店員のお姉さんが不思議そうな表情をしていた理由は、別に僕のおかわりのスピードに驚嘆していた訳ではなかった。



シンプルに「この子、完全に気が触れてるわ…」
ドン引きしていただけだったらしい。



今までの伏線を無事に回収し終えて、

それなら、早く教えてくださいよぉ~

冗談風にそう言うと、彼女からはじめて笑みがこぼれた ー





…………





ふと窓の外を見ると、すっかり夜になっていた…











「 時間 」  「 お金 」  「 体内のライス 」






僕は、全てを失った ー





目の前が真っ暗になった









ー  終  ー

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