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「制限」は、自由の価値を高める

会社員時代、起床時間は5時でした。7時までトレーニングをして、オンライン英会話を受けてから出社というパターン。独立してからは起床時間を7時に設定。2時間遅らせて同じルーチンをこなすわけですが、これがなかなかうまくいきませんでした。

「独立」は「責任」と同義です。がんばるも、サボるも自分次第。朝起きる時間も自由です。要は「なんでもできる状態」ですが、これが問題の発端でした。

独立すると自由を手に入れられ、誰からも命令を受けず、諭されることもないので、意思決定は全て自分の意のままです。ですがいざ何でもできるとなると、意外に何をすべきかわからなくなったのです。

選択の権利と自由。私は若いころから、「何様」と言われてもこれらの要求をしていました。親や先生、先輩や上司に対しての独立心が強かったように思います。

ところで、行動経済学?だったか、「選択肢が多すぎると途方に暮れる」という人間心理を解説したものがあります。4種類しかないラーメン屋と、20種類以上あるラーメン屋さんでは、前者の方が圧倒的に高い売り上げを確保できます。これを「選択肢過多効果」といい、意思決定過程で提供される情報が増えると、顧客は情報過負荷と意思決定麻痺に陥って購買数が減少するというもの。制限があればあるほど、創造的なアイデアが出るという研究結果もあるくらい。自由を与えられると私たちはどうやら不安になるようです。

ネット広告はわずらわしいもの。ですが情報を逃したくない、という強い思いがあるのも私たち人間の特徴です。ネット広告が「自分と関係がある」と利用する人は73%に及びます。無料コンテンツと引き換えに広告に出くわすのを「不公正」だと回答した人が25%だったのに対して、63%が公正だと答えました。

消費者はブランドが適正にターゲットを絞るなら、アドブロッカー(広告をブロックするツール)は必要ないと明言していると、これらの研究が示唆しています。複数の調査によると、スマホユーザーの大半が、自分との関連性の高い良質な広告から得る「コンシェルジュ感覚」を求めていると報告しています。

自由を求め、自由に行動しようとしている私たちですが、実は慣れ親しんだ行動に従う安心感を重視しています。変化を好むけれども、なじみの行動に従うことに安心感を抱く。極端に言えば、私たちは広告をありがたく思っていると言えるかもしれません。

選択肢をなくすことで日常生活のストレス、不安、忙しさを大いに軽減できると言われています。自由の中にも、一定の制限を設け、ワーキングメモリーの浪費を抑えながら生きる工夫が必要です。独立まもないころ、どうしてもペースがつかめず生産性が確保できませんでしたが、その理由は既述のとおりです。

自由は必要ですが、「制限が自由の価値をさらに上げる」という感覚を最近味わっています。休日は本当に要注意。自由だからこそ制限を設けて、充実した休日を過ごせるものです。

久保大輔




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