不安とうまく付き合うための考え方
コップには「もう半分しか水が入っていない」のか「まだ水が半分残っている」のか。目の前の事象に対する解釈によって、見える世界がまったく別物に映ることはよくあります。「失敗」を「経験」と解釈したり、「苦しみ」を「成長の糧」と解釈したり。
解釈は、解釈をする人のパーソナリティによるところが大きく、どうしてもポジティブな解釈ができないという人もいます。ですが、科学的根拠にもとづいた解釈なら話は違ってくるかもしれません。
「心配事の97%は起こらない」という事実は有名。心配事に対していくらポジティブに解釈できなかったとしても、この事実に触れれば気持ちが楽になるかもしれません。
「怒り」は、自分にとって大切な限界を超えたことを知らせてくれます。「嫉妬」は、貴重なリソースを他者が持っていることを教えてくれます。「恐怖」は、危険が近づいている可能性に気づかせてくれます。「悲しみ」は、大事なものが失われた証左。「恥」は、自己イメージが崩れ落ちたという解釈ができます。
ネガティブな感情は敵ではありません。私たちを守ろうとする母親のような存在。苦しみは、「不足」を知らせるメッセンジャーとして機能します。
最初の悩みがまた別の悩みを呼び込み、同じ悩みが脳内で反復される状態を「反芻思考」と言います。神経伝達物質の作用は数分も持たないと言われているにもかかわらず悩みを引きずってしまうのは、次のまた別の悩みと掛け合わせてしまうから。
過去と未来を想像できる能力が、私たちを深く悩ませてきました。ですが先に書いた通り「悩みの97%は起きない」ので、いたずらに悩みを増幅させない工夫はしたほうがいいでしょう。だからこそ「解釈」が大切で、「解釈力」をうまく身につけておきたい。
ネガティブな思考は自己をベースに広がりはじめ、放っておけば静まるはずだった嫌な感情を増幅させます。それだけならまだしも、続いて自己を中心に、思考が過去と未来に向かって広がれば、さらに事態は悪化するでしょう。
今、周りから少し冷たい視線を感じたとしましょう。そのときに感じる不安や心配はいたしかたないにしても、わざわざ過去(例えば「怒られた」など)を思い出し、今の不安に拍車をかける理由はどこにもありません。不安を受け止めて、味わって、自分ができることをして、今を生きることに集中すべきだと思います。
自己を中心にネガティブな思考とイメージを増幅させ、苦しみをこじらせる私たちですが、自己は絶対的な感覚ではなく、私たちを支配下に置く存在でもありません。自己はあくまでも、人間に備わったさまざまな機能の一部。ことさらに心配しすぎる必要はなく、しすぎるのは禁物です。備忘として。
久保大輔
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