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ソリューションは消費者インサイトから

大学に入学したころの話。もう25年も前の話です。コンビニなどの店頭に並び始めたのはペットボトルの水。自販機でも販売が開始されました。私は好んで買っていましたが、友人が放った一言が今も鮮明に覚えています。

「水なんて金払って買いたくない」

言われてみればそうかもしれません。かつて公園や駅には「水飲み場」があって誰でもいつでもタダで水が飲めたからです。わざわざ水を購入する動機はなかなか見出しにくい。友人の冷静な意見はもっともです。

ビジネスはソリューションを渡すこと。消費者の「困りごと」を解決する商品やサービスは評価され、売り上げにつながります。ではなぜペットボトルの水が販売され、今にいたるまで売れ続けているのでしょうか?

TPOを考えれば無数にその理由が見つかるかもしれませんが、ひとつ言えるのは「持ち運べること」 学校や遠足に行く児童は水筒を持参して、いつでもどこでもノドをうるおすことができます。つまり水はすでに持ち運ぶことができていたわけです。ですがビジネスパーソンを例にとって考えるとどうでしょう?水筒を持ち運ぶ営業担当者は、ゼロではないにせよかなりの少数派だったはずです。ただでさえ資料などが大量に入ったビジネスバック。水筒が入る余地はそんなに残されていません。

まさに今のような夏真っ盛り。当時はクールビズという概念がありませんでした。そしてスーツのクオリティも今と比べると雲泥の差。熱い夏、外回りをするビジネスパーソンにとって「持ち運べる水」はまさにソリューションでした。大学生だった私ですら、サッカーの試合で遠征するときに重宝しました。周りの目を気にする世代。水筒を持つことはいささかはばかられます。手軽に、100円で「水を持ち運べる」ならそれは、当時の私にとってもソリューションになりました。

消費者は、インサイトをつかれることで自社ブランドのベネフィットを大幅に理解しやすくなり、ほしくなります。ところがインサイトはあくまでも隠された真実。指摘されてみて「そうなんだよ!」と簡単に理解できるものではなくむしろ私の大学時代の友人のように「いや、そんなことはない」と拒否してみたくなったり、めんどくさくて考えないようにしたり。それがインサイトというものであり、売り手にとっては難しい、ですが見つけ出し、的確に言語化すべき消費者の感情です。

強いインサイトは、理性を「はっ」とさせる、もしくは感情をえぐるようなもの。ペットボトルの水は、消費者がずっと抱えていた問題でありながら、自分では気づかない、もちろん言語化もできないものでした。そのスキマを縫うように、インサイトを察知して商品化できたからこそ爆発的な売り上げを記録したわけです。

オリンピックで沸き立つ世間。スポーツは人々の課題を解決する価値があるのでは?そんな視点でオリンピックを楽しみ、ちょっと一息つきながら考えては言語化してみると、アイデアを商品化するきっかけになるかもしれません。

久保大輔




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