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アイデアを導く「批判的思考」

「なんとかなるさ」といってあまり細かく考えず物事を幅広くとらえて行動する人と、合理的に計画的に行動する人。水と油のような人間関係は皆さんもよく目にするのではないでしょうか。後者は因果関係を理詰めで考えて、論理的に物事を進めるため一般的には「斬新なアイデア」を出しにくいとされてきました。過去に経験したことや学んだことをモノサシにして思考するため、どうしても既存の常識的な枠内で物事が完結してしまうからです。

「ソクラテス式問答法」

という批判的思考のテクニックをご存知でしょうか。相手に質問をしながら思考を深めていくのが特徴。とある質問をくり返し、相手の中に批判的思考を芽生えさせて、自然と答えに気づいてもらう方法です。16週間、このソクラテス式問答法を「自分自身に」使ってみる実験では、参加者のメンタルが大きく改善したという報告があります。自分自身に質問を投げかけることでネガティブな思考に疑いを持てるようになることが明らかにされています。

自分たちのネガティブ思考が理論的に正しいのかどうか。もっと現実的で幅広い視点を得ることができないだろうか。このようなクリティカルシンキングには理論や合理性といった要素が欠かせないのと同時に「前提を疑う」というポイントが含まれています。見過ごしやすい前提を見抜き、正しく物事を考えることで「いいアイデア」を生み出す効果があることもわかっています。詳細は専門書に譲りますが、要は「根拠」「理由」「他の方法」を問う言葉をひたすら自分に投げ、自分で打ち返すことです。

そもそも問題がぼんやりしていたら具体的な解決策など考えようがありません。問題を明確化するために行うのがソクラテス式問答法。悩みの性質を具体的に掘り下げ、実例や類似性、原因を探ります。また複数の視点を持つために代替え案やメリット、メリットとなる理由を考えたり、他者の意見、特に反対意見を取り入れることもあります。

「理由がわからないけど悲しい」

最近、こんな悩みを持つ方に接したことがあります。ちょっとしたことでひどく落ち込んで「何もかもがうまくいかない」と落ち着かない様子。「たとえばこの仕事はうまくいかないとしても、あの仕事はどうだった?」と視点を変えてみたり、「あの仕事がうまくいった原因は?」という結果を聞くことで「普段から他部署の人とコミュニケーションをとっていたから」といった具体的な答えが出てきます。「別の人と交流はあるの?」と聞くと「大したことじゃないけど、誕生日にプレゼントしたら喜んでくれた」のような言葉が返ってきて「大したことじゃないかもしれないけど、それって何もかもダメって言えるの?」という前提を疑う質問を投げかけると「そうでもないよね」

本当はもっとドロドロしているのですが、あえてシンプルにまとめるとこんな感じで、問題の明確化→視点の変化→影響や結果の質問→前提に対する疑問というプロセスを通して、悩みや悲しみの正体や輪郭をあぶり出すことで膠着状態から抜け出すことができます。

また「弁証法」を使えば、物事のメリットデメリットの両方を取り込めるので、常識的なアイデアがより斬新で創造的な発展を遂げることがあります。脳内の思考を紙に書き出すことで、頭の中だけで考えるより格段に論理的な思考力を養うこともできます。「花は美しい」ことに対して「でも花は枯れる」という反対意見をぶつけ、「花が枯れた後、種子ができて時間をおいてまたきれいな花を楽しむことができる」という新たな価値観を導き出す。反対意見をぶつけて思いもよらない答えが出ないかを確かめる。その過程で今まで使ったことのない脳機能が働いて、クリティカルシンキングができるようになります。

いかにおいしいとこどりができるか?

形式的、理論的に批判的思考を活用して、停滞感を抜け出すようなイノベーションを導くこと。天性のものではなく後天的に身につけることができるアイデアの見つけ方です。まだ勉強の身ですが、いろいろ試してみようと思います。

久保大輔




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