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契約を切った営業から学ぶこと

From 安永周平

先日も書いたけど、家業の社長になってから営業を受けることが増えた。よい提案をされるのは勉強になる。その商品・サービスについての知識が得られるのはもちろんだが、素晴らしい営業をされると自分も見習おうと思うことがあるからだ。そして、その逆も然りだ。ヒドい対応をされると残念な気持ちになるわけだが「自分たちも気をつけなければ…」と思うこともある。

ある損保代理店の営業


うちは建設業なので、損保代理店の営業が出入りしていた。ある保険の満期が近づいていたので、更新時のプランを持ってきたというわけだ。その代理店とは先代の頃から取引は長いようだが…私が社長就任後に初めて会ってから色々と態度がオカシかった。少なくとも営業マンのそれではない。端的に言えば、礼儀がない。私より一回り上の年齢だと思うが、ちょっと信じられない。

それでいて「何でも聞いてください」と言うから色々聞いたのだが、的外れの返答ばかりなのだ。契約更新にあたって彼が持ってきた提案資料が分かりづらいし、説明を聞いても何の方向性もない。たとえば、そこには3つほど保険のプランが提示されていたのだが…普通は基本となるプランがあって、そこに特約などのオプションがついたものが2〜3つあるのがわかりやすい。

こちらのニーズを聞かずに提案されて…


ところが、そこに提示されていた3つのプランはどれも方向性が違う。そしてそれぞれついているオプションの種類もバラバラ。そして価格もバラバラ。この3つを比較検討してほしいと言われても、比較しようがない。そもそもこちらのニーズを聞いてないので当然かもしれない。埒があかないので…

「これじゃ何がベストかわかりません。◯◯と✕✕は不要なので、それ以外の項目をこうした表に整理して基本となるものに加えて2〜3つほどプランを提案してください」

と伝えると「わかりました」と言う。ただ、満期が迫っているので翌日に持ってくると言ってその日は帰っていった。

なんか妙に安い…本当かコレ?


翌日、新たに持ってきたA4サイズの紙に表が書かれていた。3つほどプランが載っているが、ある特約が付いたプランが妙に安い。その特約をつければかなり有利になるのだが、年間金額が基本プランと千円ほどしか変わらない。違和感を持った私が「本当にこれで金額合ってますか?」念押しすると「はい、計算し直して私も驚きました」と言う。

これまでの対応で印象がよくなかったので、色々思うところはあった。ただ、満期も迫っている。保証内容は目の前にいる人間とは関係なく、金額には折り合いがついた。なので、少しモヤモヤしたがその内容で契約することにした。他の仕事でバタバタしていたので、新規ならともかく更新にそこまで時間をかけていられない自分の都合もあった。

ところがその翌日「すいません、金額が間違ってました。◯万円上がります…」と電話が。昨日、念押ししたのにコレだ。しかも間違ってたのはメインの保険金額。保険のプロであるはずの営業マンが、素人の私でもおかしいと思った内容に気付けない。相変わらず話にまるで一貫性がない。大して悪びれた様子もない。そんな人のいったい何を信用すればいいのか。さすがに怒った。社外の人を怒るなんて久々だ。しかも年配の方。

毎回のやり取りで発生するコスト


この先、毎回疑わなければいけない不毛なコストを考えて契約打ち切りを告げた。「大丈夫ですか?」なんてどの口が言うのだ。やり取りの度にコミュニケーションにコストがかかる営業と付き合う理由はない。むしろ、こんな人が自社に入り込んでいたかと思うと本当に残念だ。すぐに最近よくしてくれる他社の営業の方に連絡し、週明け早々に提案いただくことにした。ちなみに契約もした。お客様の心の中で”二番手”にいることって大事だ。こうした時に声が掛かる。

改めて思うが、保険は人だ。特に今回は損保代理店の営業で、保険会社の担当は別にいる。こうしたケースではなおさら「介在価値」を発揮しなければいけない。代理店の動きが悪ければ、保険会社と直接契約した方がいいのだから。それが、コミュニケーションにコスト(ストレス)がかかるようでは選んでもらえるわけがない。昔からの付き合いで継続していること自体はいいが、よりよい提案をしてくれるライバルが市場にはたくさんいる。

セールスとは相手と一緒に買うこと


「取引してもらうことが当然」なんて思っていたら、それは態度にも出るだろう。お客様はそうした態度は敏感に感じ取る。結果として、今回のように契約終了につながったりもする。ボブが「セールスとは相手と一緒に買うことだ」と言っていたが、相手の立場から本当に買うべきかどうかを真剣に考えること。自分もそれができる人間になりたいと思う経験だった。さて、あなたはどう感じただろうか? 4月も終盤だ、今週も頑張っていこう。

追伸:
最近、経営者としてあまりに未熟な自分を反省し、三枝匡さんの三部作の中からこれを読み直している。ようやくこの本が実務で役立つフェーズに来たのかもしれない(個人的にビジネス小説の中ではNo.1の名作)

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