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性暴力被害者は笑わない? 被害者は笑わないという説を唱える方に私の体験をお話します。

「性暴力にあった経験があるけど、笑い話にしていた」

2020年10月1日20:00- からChoose Life Project内で放送された「「性的同意」とは何か? NO means NOが当たり前になる社会を目指して。」を視聴しました。
この回では、弁護士や臨床心理士等の専門家と共に性被害や性的合意に関するメディアmimosas(ミモザ)を立ち上げた疋田万理さん(メディアプロデューサー)とみたらし加奈さん(臨床心理士)のお二人が出演されていて、mimosasの立ち上げの経緯や「No means No」といった「性的同意をもっと当たり前にしたい」という思いや、性暴力被害(そして加害)にあったときにどうするべきなのか対処法を知ってほしいということ、そして性暴力の被害がセクシャリティに関係なく「誰にでも起こりうること」であることなどを強調してお話をされていました。

そんな中でも特に印象深かったのが、司会の荻上チキさんが自身の経験として、「性暴力にあった経験があるけど、笑い話にしていた」というお話をされていた時のこと。

これ、実は自分にも経験がある。

兄の性虐待を初めて友人に話した16歳の時、私は笑い話として、何気なく友人に話をした。
聞いていた友人たちがフリーズしていくのを見て、これは笑い話じゃないみたいだぞ?と気付き、その友人たちと話していく中で、自分の置かれている状況には「問題がある」と気付くことが出来ました。振り返ってみると、私も当時、性暴力を受けたことを笑い話にしていました。
状況が飲み込めない分、笑うしか選択肢がなかったのかもしれない。
というか、この状況にあるのは、自分だけじゃないと思い込んでいた。それに、他の伝え方がわからなかったというのが正しいのかもしれない。
正確な感情はわからないけど、笑うしかなくない?みたいな諦めというか、茶化して消化しようとしていたのかもしれない。ある意味やぶれかぶれだった。


そんな中、同番組内でみたらし加奈さんが、

「性暴力の被害者は、『笑わないだろ、普通。笑ってる人は、実は性暴力にあってないんじゃないか』っていう説を唱える方がいらっしゃる。そもそも自分のショッキングだった体験を笑い話にするっていうのは、心理学的にも説明がつくことで、躁的防衛(manic defence)と言って、ちょっとハイにしたりとか、ちょっとネタにしたりすることで、ショックでチクチクした自分の気持ちと、自分の心をちょっと切り離すことでストレスに対応する

という趣旨のことを仰っていた。

聞いたことがなかった言葉なので調べてみると、躁的防衛とは「そう振る舞う(なんでもないよって笑うなど)ことで,傷ついたり,失敗を認めて落胆したり,失われたものへの悲しみにとらわれることから自分を守ろうとする」行為なのだそう。
私は今でも時々、人にこの話を打ち明けなくてはいけない時、笑ってしまうことや、他人事みたいに不必要に冷静に話すことがある。ただ、今は「自分は傷ついている」という認識がある分、以前に比べると、話すときは動揺して震えてしまうし泣いてしまうことも増えた。

笑ってしまった当時は傷ついていなかったわけではない。多分、気づいてなかっただけだ。本当に傷つくのは、自分が何をされたのかを認識した後だから。

今、大人になり、ようやくカウンセリングへも通い始めた。
(正確には、以前にも通っていた時期はあるのだけれど、カウンセラーの何気ない言葉に傷ついたり色々あって続かなかった。おまけに保険適用外なので、金銭的な負担も大きかったので続けられなかった。)

当たり前の話だが、私の生活の100%が、「性被害者としての自分」というわけではない。
仕事をしたり、友人とコミュニケーションをとったり、お店の人と話す時、私だって笑う。
しょうもない冗談を言って、笑ったりする。
いつもいつも、過去を振り返って絶望の中にいたら、多分この年齢まで生き抜くなんて出来なかったもの。ずっと過去と向き合い続けるのは現実的に無理です。
そんなことをしていたら、多分もっとずっと前に、私は自分の人生を諦めていたはず。(実際、何度か自殺未遂はしているので、実際今自分が安定しているとはあまり言えないかもしれないが)

生きることは、戦うことで、それは周りが支えてくれたから今があると思っている。

私の人生のどこかの節目で出会って、私がヘラヘラ(もしくは過呼吸になりながら)告白する過去の重い話を真摯に聞いてくださった、様々な方々のお陰だ。
私が自分に起きたことを怒っていいと思わせてくれたのも、世の中がもっと広くて面白いことがあると笑わせてくれた人たちに感謝しかない。
届かないかもしれないけれど、本当に感謝しています。

性被害にあっても、性暴力に晒された過去があって、今もその影に怯えていても、私は自分の過去をうっかり笑ってヘラヘラ話すこともあります。
性暴力被害者でも、笑います。微笑むことはあります。
性暴力の被害者は、ずっと殻に閉じこもって、怯え続け、鬱々としているという一般的なイメージも理解はできますが、現実社会で自分の過去を打ち明けずに「普通の人」として振る舞って生きていく(サヴァイブする)には、そんな過去と向き合ってばかりはいられません。もう起きてしまったことだから、うまく付き合って行くしかないと思っています。
そう思えば思うほど、仕方ないから笑うしかない気さえします。
そして、加害者が加害者更生プログラムなどを受け、自分の犯した罪と向き合い、2度と同じ過ちを犯さないで欲しい。

(うまく伝えられているといいけれど、誤解を産んでいたら嫌だな・・・)

これも、紛れもない当事者の声の一つだと思っていただけると嬉しいです。

文中に出てきた団体のご紹介:
Choose Life Project

Choose Life Projectは、テレビの報道番組や映画、ドキュメンタリーを制作している有志で始めた映像プロジェクトです。「誰が、こんな世の中にしてしまったの?」と嘆く前に、まず“私”がその責任を取る。映像を通じて、この国の未来を考えます。YouTubeのチャンネル登録もお願いします!

様々な社会問題について、討論を繰り広げる映像プロジェクトです。
まだ数えるほどしかトークを視聴していませんが、注目しているプロジェクトです。

文中に出てきた団体のご紹介:
NPO法人 mimosas

弁護士や臨床心理士等の専門家たちと共に、性被害についての「必要な正しい情報」を発信していきます。NO means NOが当たり前になる世界を目指して、走り出しました。Instagram/noteもやっています→ @mimosas_jp

mimosasは、ツイッターを通じて知った団体です。2020年8月に始動したばかりのまだ新しい団体ですが、セクシャリティや性別、年齢を問わず、性被害に合わないための社会づくりのために情報発信を行っているそうです。
インスタがお洒落なので、性暴力って構えずに見られる感じでオススメです。)
10月2日には、「わたしとあなたを愛すること by mimosas」と題して、オン・オフラインでのイベントを、IWAI OMOTESANDOにて開催される模様です。
伊藤詩織さんをはじめとする、非常に興味深いラインナップになっています。オフラインのチケットはすでに残りわずかですが、時間制のチケットがあれば入場はまだまだ可能な模様。(また、オンラインであれば、24時間アーカイブが残るということです)
同内容にご興味のある方にはオススメさせていただきます。

終わりに

自分よりもずっと若くて、似たような経験がある人たちがこうやって声を挙げているのを見て、比較してしまいますが、私は私個人で当事者の意見などを引き続きポストして行けたらと思っています。

今後とも、よろしくお願いします。

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