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はじめまして、 THEATRE for ALLです。

アクセシビリティの高いオンライン劇場をみんなで考え、育てるプロジェクト始動します。

はじめまして、THEATRE for ALL 運営スタッフのしのだです。現在、株式会社precogが2月に本格的に立ち上げることとなったオンラインの舞台鑑賞の場THATRE for ALLのシステムづくりの現場担当として、日々、社外のパートナーさんや社内の仲間たちとプロジェクトをすすめています。

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(この写真には真剣にプロジェクトのロゴを選ぶ、9名のTHAEATRE for ALLの仲間たちが写っています。本noteの記事内の写真については、スクリーンリーダーユーザーの方に向けて、その光景をできるだけ言葉にしてご説明するようにしています。)

このnoteは、私たちが学んだことやリサーチしたことを世の中に共有していくために立ち上げたものです。スタッフや仲間のライターが代わる代わる、お届けしていきます。わたしも、編集部のメンバーとして、これから取材記事やお知らせ記事など執筆していくと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

篠田栞(しのだ・しおり)
平成2年、奈良生まれ、奈良育ち。THEATRE for ALL コミュニケーションチーム統括として、システム開発からコミュニティ形成、営業活動までの立ち上げに奔走中。元々は、広告、デザイン・クリエイティブの会社の企画営業職を経て、フリーランスの編集・ライター。また、アングラ演劇少女だった建築家の母と売れない音楽家の父の影響で2歳から演劇の舞台に立ち、大学よりお能のお稽古にはまる。民俗芸能など日本の芸能の身体が好きで、仮面を収集し、仮面劇作品をつくったりパフォーマンスしている。
https://www.shiorishinoda312.com/

オンラインの劇場である、THEATRE for ALLが目指しているのは「舞台芸術へのアクセシビリティ」を高めていくこと。演劇、ダンス、映画、メディアアート。古典から現代のものまで、あらゆる舞台芸術にこれまで様々な環境の違いや身体の違いからアクセスできなかった人たちがアクセスできるようになることを目指しています。

例えば障害をおもちの方、日本語がわからない移住外国人の方で芸術作品を楽しむということに壁があった方、小さなお子さんがいらっしゃったり、劇場がない地域にお住まいでなかなか劇場に足を運べない方もいらっしゃるかもしれません。また、これまで「アート」と言われると身構えてしまって、楽しみ方がよくわからない(むしろ、アートにアレルギーがある…)という方にも、360度いろんな楽しみ方があっていいし、色んな楽しみ方を掘り起こしていくことの面白さが伝わればいいな。そんな場作りをしたいなという思いで、オンライン、リアルの様々な準備を進めています!

また、本事業の大切なもうひとつの側面として、舞台芸術の制作者、アーティストにとってのアクセシビリティをどのようにサポートできるかという点があります。採択された舞台芸術作品に対しては、THEATRE for ALLのバリアフリーチームからバリアフリー化のアドバイスや制作のお手伝いをしていきます。その結果として「これまで様々な理由から舞台芸術を視聴してこなかったような潜在的なファンにアプローチできる」「作品制作に今後もいかせるような視点を獲得できる」といったことを目指しています。

また、「バリアフリー」を考えていくときに、字幕や副音声などの情報保障に加えて、作品の芸術性をいかに新しい顧客(様々な環境、身体をもつ人たち同士)と共有しあえるのか、ということも大切だと考えています。障害の有無や言語に関わらず「作品の楽しみ方をより広い顧客に伝えるためには?」といった視点から作品解説動画をつくったり、あるいは、アートエデュケーション的な視点から子どもたちと作品を楽しむためのワークショップを企画するといったことも行います。

多様な身体が混在する場所と室町時代の河原フェス

THEATRE for ALLの主要な問いでもある「多様な身体から、舞台芸術へのアクセシビリティ(回路)を増やしていくためには?」という点は、個人的にもとても興味があるテーマです。この事業を通してこれからやっていこうとしていることは、多様な異なる身体同士のコミュニケーションについて研究し、議論していくような活動であると感じています。

少し個人的な話ですが、わたしは、幼少期には、どちらかというと西洋的なミュージカルをやる児童劇団(若草物語とかくるみ割り人形とかやってました)に所属し、トレーニングを受けていました。しかし(おデブで鈍臭かったこともありますが)ミュージカルの演技メソッドにあまり馴染みきれず。その後、2浪した大学で出会った能楽という古典芸能の身体にめちゃくちゃしっくりきて、その虜になってしまったのでした。お能は、お芝居の一種であるとは言いますが、表情ではなくて仮面を使いますし、型の訓練、滅私し、呼吸や間合いをコントロールするトレーニングをひたすら続けていきます。幼少期に学んだ、お芝居とは全く違った価値観、文化、メソッドを学ぶことに没入し、毎日早朝から夜中まで(単位を落としながら)お稽古した大学時代でした。そもそも男性の身体をベースとしてできた芸能であるため、女の身体を持つ自分がどのようにこの技能に向き合うか? などジェンダーと芸能の関係について考えたり、民俗学的な視点にも興味惹かれて、なぜ芸能が必要なんだろう? 歌ったり踊ったりするのはなぜだろう? といったことに思い巡らせてきました。

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(この写真は、滋賀の小さなお寺で演奏をした時のもの。紫陽花が咲き乱れるお寺のお庭で鼓という楽器と謡を奉納しました。友人の工芸作家根岸憲太さんが撮影してくれました。)

また、お能は、屋外や庭が劇場になって、酒を交わし、うたったり、舞を舞って、祝福や弔いの感覚を共有する芸能、神事に起源のある演劇だと言われます。お能のスタートアップ期? 中世の世界観では、障害のある人も、外国からやってきた人も、その土地の人も、流浪してきた人も、互いに「異形」であることが前提になっていて、音楽や踊りを通じてひと時を共有するような芝居の場があったと言います。ソーシャルインクルージョンという言葉があるけれど、そのカオスで雑多で多様な身体と価値の入り乱れた芸能の河原には、きっと様々な身体を前提としたコミュニケーションや物語があったのだろうと思います。そんな世界観に憧れてパフォーマンスをしているわたしは、櫓が立ち並び異形の芸能者に溢れる中世の河原の光景と、シアターフォーオールを少し重ねていたりします。(あくまで、しのだ個人的なイメージです。下のリンク先には、江戸時代の風俗画、四条河原遊学図屏風のイメージが入っています。鴨川の周りには沢山の芝居小屋や舞台が並び、お酒を飲んだりご飯を食べたりしながら、珍しい多種多様な芸能を人々が楽しむ様子が描かれています。)

個人的な話が長くなりましたが…。古典芸能も現代の演劇も、ひとくちにパフォーミングアーツと括ってしまうけれども、どのような感覚を受け手と演者が共有し、どのようなコミュニケーションをとるのかといったことが無限に存在している。時には、言語もいらず、身体で直感的に人と繋がり、コミュニケーションをとることができる。ある意味、身体だから繋がれる。そんな舞台芸術のあり方が大好きなわたしにとって、作り手、演じ手としても、観客としても、TfAというプロジェクトは発見と刺激の連続です。様々な身体が無理やり混ざるというよりは、身体が違うことを前提に共存する方法を探っていきたい。そこに互いに発見があって楽しい。場のあり方に正解はないと思うのですが、これから出会う様々なパートナーさんとどのようなインクルーシブな場を描いていけるのか、ドキドキワクワクしています。

”バリアフリーな劇場”という正解のないものを多様な身体、多様な視点で考えたい。

「バリアフリーの動画配信プラットフォーム事業」と掲げてはじめた本事業。バリアフリーという言葉の使い方から議論しながら、本格的な事業設計をはじめたのが2020年9月でした。どうすれば、独りよがりにならずに本当の意味での場づくりができるのかということに悶々としながら、様々な障害当事者の方やサポートされている団体・事業所のみなさま、支援学校さん、日本語学校様にご協力いただいて、ヒアリングさせていただく活動からはじめてきました。まず、事業開始の1ヶ月で10程度の団体様、個人の方にお話をお伺いしました。

ヒアリングでは、「情報保障を施した動画配信サイトがあったら障害当事者の方はご覧になるでしょうか?」「どんな仕組みがあると助かりますか?」「私たちprecogがこういった事業をはじめるということ自体、どのように感じられますか?」といったことからお話をお聞きし、「バリアフリーってうたってどこまで何をやるつもりなの?」「アクセシブルにしていくためにはこんなことも考えたほうがいいよ」といったアドバイスやご意見をいただいてきました。(ご協力いただいているみなさま、本当にありがとうございます。)

例えば議論の一部として、
・THEATRE for ALLという名称に少し違和感がある。みんなって、一体誰のための劇場なのか?
・すぐに「みんな」へのバリアフリー、情報保障を用意するのは到底無理なこと。一方的な事業にならないように、「インクルーシブにみんな(ALL)で考えて育てていく事業」になるように仕組みを考えたほうが良いのでは?
・バリアフリーのオンライン事業考えた時に、当事者にとっては、経済的な事情や環境(wifiなど)の問題もある。
・障害のある人への舞台芸術鑑賞サポートは十分であるとは言えないまでも、視聴覚障害のある方に対する舞台鑑賞サポートはまだ存在する。知的や精神に障害をもつ方達への舞台への関わりについて議論がまだまだ薄いと感じる。


様々な方との議論を通じて得た大切な視点を、今後はより世の中にオープンな形式で共有していこうと思います。イベントや取材を決行し、そのレポートを発信していく中で、関わっていただける方を増やしていくための活動へと展開する予定です。

THEATRE for ALL LABを立ち上げ、リサーチとイベント活動をはじめます。

私たちは、ここから先のコミュニティ活動に「THEATRE for ALL LAB(シアター・フォー・オール・ラボ)」という名前をつけました。舞台芸術と障害のある方をつなぐプログラムやサービスなどを実践されているみなさま、子どもたちへのアートエデュケーションやオンライン教育に携わってらっしゃる皆様、日本在住の外国人支援や教育に関わっていらっしゃる皆様、ダイバシティと舞台芸術の取り組み、ソーシャルアートなどに関わる皆様、行政、業界団体のご担当者様に、私たちからも連携のご相談させていただきながら進めていきたいと思っています。

また、この活動にTHEATRE for ALL運営側として参加してくださる障害当事者の方(主に、ライターやイベント面で関わっていただけそうな方)も募集しながら、どうすれば様々な当事者が舞台芸術にアクセスし、つくる側にジョインできるのかということも一緒に考えていければと思っています。

様々なご意見、アイデアについてみなさんと議論しながら、徐々に時間をかけて良い場づくりを行なっていきたいと思っています。もし「こんな形で関わってみたい!」「ここ、このようにしたらもっと面白いんじゃない?」「この取り組み取材してよ!」などなど一緒にこの事業を盛り上げてくださる方がいらっしゃれば、ご連絡くださいませ。

生まれたてのひよっこ事業ですが、ぜひ長い目で見守っていただき、一緒に育てていただければと思っています。どうぞTHEATRE for ALLをよろしくお願いいたします。

THEATRE for ALL 最新情報は、下記のSNSからもご覧いただけます。ぜひチェックしてみてください。

twitter https://twitter.com/THEATRE_for_ALL
facebook https://www.facebook.com/THEATREforALLproject
instagram https://www.instagram.com/theatre_for_all

また、noteと同じ記事をアメーバブログでも掲載しています。視覚障害をお持ちのパートナーさんから、アメブロが読みやすいと教えていただいたためです。もし、アメブロの方が読みやすい方がいらっしゃれば合わせてご覧くださいね。また、こんな風にしてくれたら読みやすいのに!というご意見あればできる限り改善したいと思っております。いただいたお声についても記事で皆さんに共有していきたいと思いますので、どうぞ教えてくださいませ。

https://ameblo.jp/theatre-for-all

THEATRE for ALLコミュニケーションチーム統括 篠田栞

■ この記事は、令和2年度戦略的芸術文化創造推進事業『文化芸術収益力強化事業』バリアフリー型の動画配信事業によって制作されました。

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