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ミュージカル「エリザベート」コンサートinシェーンブルン宮殿

11月5日(土)午後7:30からWOWOWライブで『ミュージカル「エリザベート」コンサートinシェーンブルン宮殿』が放送されます。

1992年にオーストリア・ウィーンで初演されたミュージカル『エリザベート』。
その後アジア、北及び東ヨーロッパ各国でも上演され、ドイツ語ミュージカルとして最大のヒット作品となっています。
2019年には、ウィーンにあるハプスブルク家の夏の離宮として使用されていたシェーンブルン宮殿で、コンサートバージョンが2日間行われました。その公演の中で翌2020年の再演が発表され、公演終了の翌週には前売りが始まり、コンサートの熱狂が冷めやらぬまま1年後のチケットが売れていきました。
しかし、2020年はコロナ禍により中止が余儀なくされ、2021年に予定された公演も延期となっていましたが、「エリザベート」初演から30周年となる2022年夏、ようやく2回目のコンサートが開催されました。
30周年の記念となる年に3年ぶりに上演されるとあって、初日の模様はオーストリア放送協会でライブ放送されました。しかも、ライブ放送前には「エリザベート」30周年を記念した番組も放送され、初演時のスタッフとキャストが初演の舞台映像と共に、当時の様子を振り返りました。

2022年のコンサートは3日間を予定していましたが、今回放送される初日と3日目は上演されたものの、2日目は荒天により中止されたので、よりレア感のある舞台の放送となります。
また、このコンサートは2023年にもシェーンブルン宮殿で上演されることが決定しており、現在チケットは発売中です。

ということで、来月放送されるこのコンサートの初日のレポートをしたいと思います。

ウィーンに着くまでがドタバタ

2020年、2021年とコンサートの延期が春に発表されていましたが、今年は実施されるとキャストが発表されたのが4月。この時点では、コロナ禍による出入国に関する制限だけでなく、ウィーン市内のホテルでもPCR検査が陰性でなければ宿泊できない状況下で、本当に実施するのか?!という気持ちしかありませんでした。
5月に入るといくつかの制限が解除され、これならばなんとか行けそうな気配となり、6月に入ると、日本出国時の検査と帰国時の自主隔離が廃止になり、オーストリアでは、出入国に関しての制限もなくなり、ウィーン市内の公共交通機関でのマスク着用義務以外はコロナ前の元の状況に戻り(因みに8月1日よりコロナに感染しても隔離がなくなりました)、日本帰国時のPCR検査だけとなりました。

6月の空の状況は、足となる飛行機はまだ便数が制限されており、週一便のウィーン直行便以外はどこかを経由していかなければなりません。また空港職員もコロナ禍で解雇されて人数が少なくなっていた所に、ヨーロッパ各国がコロナ前の状況に戻したことで久しぶりのバカンスに出かける人たちなどで利用者が増え、対応が追い付かずフライトキャンセルが多発していました。
そして、私も空港へ向かう6時間前に経由便のフライトキャンセルのメールを読むのでした。当時、航空会社からフライトキャンセルが多発している為に、チェックインの時間にゆとりをもって空港に来るように注意喚起が来ていて、時間のゆとりを持たせていなかったら予約変更後の飛行機にすら乗れなかった危険すらあったのでした。

コンサート会場はシェーンブルン宮殿

シェーンブルン宮殿は毎年6月にウィーンフィルハーモニー管弦楽団がコンサートを実施していますが、こちらは庭園の部分で行われていて、テレビでも毎年放送されているのでご存じの方も多いことでしょう。
しかし「エリザベート」コンサートの会場は庭園ではなく、正面ゲートからシェーンブルン宮殿まで向かう広場に仮設ステージと客席を設置して行われます。
舞台は、大きなアーチの中に設えられ、その左右には巨大なスクリーンが設置されています。このスクリーンにはキャストの姿の他にイメージ映像なども映し出され「エリザベート」の世界観をより感じられる様になります。スクリーンを見ているだけでも十分エリザベートの世界を楽しめるようになっていると感じました。
アーチの中は左右と中央に縦の通路が作られ、一段高い奥の舞台と前方のメインステージを繋ぎます。オーケストラは中央通路をはさんで2つのブロックに分かれています。
客席は広場に複数のブロックで配置され、ブロック間を通路として大きく取っています。最後列のブロックのみ高さのある仮設の観客席です。

会場を設営中の様子

キャスト

2019年のエリザベートは初演のピア・ドゥーヴェスが努め、翌年の公演でも同じ役を務める予定でしたが度重なる延期で、ウィーンの2代目エリザベートであり来日公演でも演じたマヤ・ハクフォートがキャスティングされました。
トート役は、2019年と同じくマーク・ザイベルト。
ルイジ・ルキーニ役も2019年と同じく、ダフィット・ヤーコプス。
フランツ・ヨーゼフ役は、初演のViktor Gernotからアンドレ・バウアーに。
ルドルフは2019年に引き続き、ルカス・ペルマンが演じました。
そして、作曲・編曲のシルヴェスター・リーヴァイもキャストとして加えても良いかもしれません。「♪私だけに」の曲では、オーケストラを指揮して客席を沸かしていました。

コンサートでもミュージカル

『「エリザベート」コンサート』と名を打っていますが、実際には扮装や装置が略式されたミュージカルとして上演されます。
装置は中央に用意された長方形のフレーム。これを長方形のシートで塞いでシルエットを浮かび上がらせたり、シシィがポッセンフォーフェンでブランコから落ちる場面で使われたりと、さまざまな場面で多用されています。
衣装はメインキャストだけでなくアンサンブルも必要に応じて衣装を着用していますが、場面を成立させる為の必要最低限と言っても良いでしょう。ちなみに、トート閣下は真っ白の衣装を着たまま、着替えはありませんでした。
簡略された装置、衣装で全ての場面と曲が演奏され、歌い、踊る。だからこそ、「エリザート」という作品や音楽の魅力を浮かび上がらせてくれるのかもしれません。
吟味された舞台装置、背景で演じられることを否定している訳ではありません。こちらは、より世界観を堪能することができる楽しみがあるのですから。
楽しみ方、魅せ方の違いだと思ってください。

見どころ

2020年のコンサートから大きく変わったのは、エリザベートの少女時代を演じるシシィが新たなキャストとして加わった事でしょう。溌溂とした少女だったシシィが結婚生活を通じて大人の女性となったエリザベートになる場面は必見です。
舞台の中央には大きな額縁が置かれ、時にはスクリーンの役目も果たします。屋外ということで、舞台前面から火柱が噴き出す演出もあり、ウィーン旧市街でよく見かける本物の馬車も登場します。
そして、背景となっているシェーンブルン宮殿に映し出される照明が、この物語の舞台となったハプスブルク家の宮殿でこのコンサートをやっていることを思い出させてくれます。たとえ、本物のエリザベートがこちらに余り立ち寄らなかったとしても・・・。

11月のWOWOWの放送を楽しむだけでなく、久しぶりに海外へ足を運んでみるのも良いかもしれませんよ。
2023年は6月29日〜7月1日に上演予定で、チケットは発売中です。ただ残念なのはウィーンではエンターテイメント関係は6月末からシーズンオフでバカンスに入ってしまい、2023年シーズンのミュージカル「レベッカ」も「ノートルダムの鐘」も千秋楽を迎えてしまっている事です。

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