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『MODERATORS & FACILITATORS INTERVIEW』イベントレポート | Peatix Japan 取締役・CMOの藤田祐司が思うファシリテーションの極意とは

モデレーター&ファシリテーターの技術を学べる講座「THE MODERATORS & FACILITATORS」の公開イベント企画がオンラインで開催されました。

今回は、Peatix Japan共同創業者 取締役・CMOの藤田祐司さんをゲストにお招きし、ファシリテーションの極意を伺いました。

藤田 祐司さん
慶應義塾大学卒業後、株式会社インテリジェンス(現 パーソルキャリア株式会社)で営業を担当後、2003年アマゾンジャパン株式会社(現 アマゾンジャパン合同会社)に入社。最年少マネージャー(当時)として、マーケットプレイス事業の営業統括を経て、Peatixの前身となるOrinoco株式会社を創業。国内コミュニティマネージャーチームを統括したのち、営業、マーケティング統括を兼務。2019年6月CMO(最高マーケティング責任者)に就任し、グローバルを含めたPeatix 全体のコミュニティマネジメント・ビジネスデベロップメント・マーケティングを統括。 日経COMEMO キーオピニオンリーダー。 LinkedIn認定インフルエンサー。著書に『ファンを育み事業を成長させる「コミュニティ」づくりの教科書』(河原あずと共著/ダイヤモンド社/2020年)

阿吽の呼吸が求められるダブルファシリテーション

西村創一朗(以下、西村)MODERATORS & FACILITATORSの企画構想から携わっている西村です。今回はスピンアウト企画として、コミュニティ・アクセラレーターの河原あずさんとダブルファシリテーションでお送りします。

記念すべき第1回目は、あずさんと一緒に『ファンを育み事業を成長させる「コミュニティ」づくりの教科書』を出版している藤田祐司さんをゲストにお迎えします。本日はよろしくお願いします。

藤田祐司(以下、藤田):よろしくお願いします。

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河原あず(以下、河原):祐司さんは、いま日本で一番オンラインイベントをやっていると言っても過言ではないですよね。

MODERATORS & FACILITATORSの講座では、受講生から「そんなにすぐ力がつくんですか?」と聞かれるときがあるんですけど「いま日本で一番オンラインイベントをやっている藤田祐司さんが、最初にステージでファシリテーターをやったのはたった3年前ですよ」と、いつも祐司さんを引き合いに出しています。

藤田:そうですね、3年前にあずさんと「コミュコレ!」で、ダブルファシリテーションをしたのが最初です。

それまでは、Peatixというイベントコミュニティのプラットフォームサービスを2011年からやっていたので、イベントの経験はありました。しかし、裏方の仕事がメインだったので、表に出ることはあまりなかったんです。

2017年の1月に「渋谷をつなげる30人」というプロジェクトの中間発表会に参加する機会があったのですが、そこでコミュニティ運営に興味を持って、自分自身でも動かしてみたいと感じました。

河原:正直、3年前にやった最初のファシリテーションはやり辛かったですよね?(笑)

藤田:初舞台なのに、すごい人たちがたくさんいてやり辛かったですよ(笑)どのタイミングで会話に入ればいいのかわからなかったです。あずさんが先陣を切って進行していたので「おお、どこまで行くんだ」と思いながら、恐る恐る切り込んでいました。

当時はあずさんと僕の2人でゲストを挟む配置だったのですが、それは反省点ですね。お互いの呼吸がわからず連携がとりにくかったんです。それ以降はファシリテーター同士で横並びに座るようにして、相手がマイクを握ったタイミングで「次、行くんだな」と思いながら連携をとっていました。

「ダブルファシリテーションって難しそう」とコメントが届いていますが、最近はむしろおすすめしています。難しい部分もありますが、オンラインイベントだと2人で進行した方が盛り上がったりするんですよね。

西村:ダブルファシリテーションでは、テクニックに加えて2人の相性が重要ですよね。阿吽の呼吸が求められると思います。台本通りだと予定調和で違和感がありますし、難しいですよね。どうすれば未経験の人でも上達すると思いますか?

藤田:僕は呼吸を合わせやすい人と組んでいますね。しっかりと役割分担を決めているわけではないのですが、なんとなくキャラ分けのようなものはあります。

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西村:バラエティ番組で、お笑いコンビがMCをやるのに近いかもしれないですね。

藤田:たしかにそうですね。例えばPeatix CEOの原田 卓さんと一緒にやっている番組では、卓さんには自由にやってもらって、僕は主旋律を引くような役回りをしています。

メインで聞くべきことや、参加者が知りたいことを組み込みつつも「あ、そんなことも聞いてしまうんだ」という内容を卓さんが混ぜていく。そうすると全体の流れを保ちながらも、しっかりと話が盛り上がる立体的なイベントが出来上がるんです。

河原:海外の場合はメインの進行が1人ですし、ダブルファシリテーションはおそらく日本ならではの文化ですよね。

2人で進行する場合は、凸凹関係を両者が構築できるか否かが重要だと思います。例えば、ボケとツッコミとか。スタートアップなどの専門家が必要とされるイベントでは、専門家と初心者など。それぞれが持つ視点の切り取り方が違うからこそ、イベントが立体的になるのかなと思います。

藤田:相方が専門的な立場で話している場合は、たとえ自分に知識があったとしても「それってどういう意味なんですか?」など、参加者を置いていかないように聞き役に徹するときはあります。

一方で、ダブルファシリテーションで怖いのは、突然言葉が出ずに間が生まれるときですよね。そうならないように、いつも緊張感を持って取り組んでいます。

河原:油断するとスキが生まれるんですよね。

藤田:あと、ダブルファシリテーションでゲストが1人の場合は、異なる視点から質問ができるので、見ている側としても面白いものになります。そういった凸凹感を出すためにも、キャラが異なるタイプで組んだほうが良さそうです。

西村:自分はボケなのかツッコミなのかなど、適正を把握してから相方を見つけるのが良いですよね。

藤田:そうですね。やってみないとわからない部分もあるので「この人いいかも」と思ったら、声をかけてイベントをやってみると良いかもしれないです。何人かと組むことで、自分のタイプが見えるかもしれません。

本番前に、ゲストのことはしっかりと調べるべき

河原:ファシリテーションを始めてたった3年でかなり開花したと思うのですが、自分のなかで転換期になった瞬間はあったんですか?

藤田:昨年、某テレビ局でイベントのファシリテーターを務める機会があったのですが、かなりの緊張感があったんですよ。自社のイベントではなく、クライアントワークだったので非常にプレッシャーを感じました。

ただ、これが良い経験となり、その後のイベントでは緊張しにくくなったんです。それまでは予定調和になるのを避けるために事前準備をしなかったのですが、このときはさすがに準備をしました。

最低限押さえておくべきツボを把握してから臨んでいたので、今振り返ると自分なりの準備の仕方を掴めた現場だったのかなと思います。

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河原:ちなみにどんな準備をしているのですか?

藤田:ゲストの持つ考えをしっかりと把握することを心がけています。例えば、その人の出版した本や公開されたインタビュー記事の中で、気になるキーワードが出てくるんですよ。それをメモ帳に書いて、紙で見れる状態にしています。

最近ではモニターで画面を分割して、zoom以外にもファシリテーターとのメッセンジャー、ゲストのプロフィール情報、イベントページなどを見ながら進行しています。話を膨らませたいときに、すぐ参考にできるので非常に便利です。

西村:僕もゲストの本やインタビュー記事を見て「こんなことを聞きたいな」とか「こんなことを話したいだろうな」と、妄想する時間をイベントの1週間前から前日までに1時間だけ確保していますね。前日にも30分確保して、リマインドして読み返しています。

藤田:僕も1時間は時間をとっていますね。それに加えて本を読んだりしているので、意外と時間は使っています。妄想を膨らませて「こういうことなのかな」と仮説を立ててから本番で質問をするのが面白いですよね。

河原:ファシリテーションをやっているとインプットの量がすごいので、役得だなと思います。 

藤田:とくに初めて会うゲストの場合は、自分の知らない領域のことを学べるので勉強になります。そういった経験が積み重なると、引き出しが増えてファシリテーターとしても成長できるのではないかと思います。

河原:ファシリテーターは落語家に似ていますよね。落語家が本番前にする枕って、その人の引き出しのなかを色々開けてみて、お客さんにウケる材料を提示して会場の空気をつくっていくんです。

引き出しの量が多いほど空気をつくるのが上手くなるので、インプットの量は大事ですよね。

ファシリテーションに信頼関係は不可欠

西村:対面じゃないと信頼関係を築けないのは真っ赤なウソで、オンラインでも信頼関係は十分築くことができますよね。

ファシリテーターで最も重要なのは「この人だったら何を話してもいいな」「進行を任せられそうだな」と思ってもらうこと。とくにオンラインの時代は楽屋トークがないからこそ、開始数分で信頼してもらう必要があります。

祐司さんは、何か気をつけていることはあリますか?

藤田:Messengerで出演依頼をするところから、自分が主体的にコミュニケーションをとるようにしています。「こういう部分のお話を聞けるのが楽しみです」と自分の期待値を伝えるとか、「当日はよろしくお願いします」と言うなど、事前にしっかりと信頼関係を築くことが大切だと思います。

あとは、過去のアーカイブ動画を共有して当日のイメージを共有しておくこと。そうすると、ゲストも安心感を持って臨むことができるので、ある程度こちら側で出せるものは出しておくと良いですね。

西村: 僕も以前、他社のイベントにファシリテーターとして参加した際に、ゲストのバーチャル背景がなかったので当日作成したんですよ。

そうしたら、ゲストのハヤカワ五味さんが以下のようなTweetをしてくれて。オンライン上でも、振る舞い次第で信頼関係は十分つくれるんだなと感じました。

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藤田:当日作ったんですか? それはすごいですね。

僕は「今日、メインのトピック以外にも何か伝えたいことはありますか?」と聞くようにしています。「実は今度こういうのをやるので、この話もしていいですか?」など、ゲストの中には話したいことがある人も結構いるんですよ。常に、自分が登壇者側だったら嬉しいと感じる振る舞いを心掛けています。

河原:僕の場合は、イベントページにゲストのライフストーリーを書くようにしています。そうするとゲストも「自分のライフストーリー話せばいいのか」と思いますし、そういった安心感を与えるコミュニケーションをするのが大事ですよね。

重要な情報はイベントページの上部へ

藤田:あと、イベントページでは出演者が「そのトピックを話したい」と思えるような内容を組み込むことが大切です。

自分がファシリテーターとしてイベントに参加する際には、できるだけイベントページの作成にも関与するようにしています。タイトルも告知文も、魂をこめて作っていますね。

河原:「タイトルや告知文の極意を知りたい」と、コメントが届いています。

藤田:タイトルの中に「イベントを通して何が得られるか」「どういう人が来て、どういう話をするのか」を盛り込むことが大切です。

あとは、その人のライフストーリーや今までに取り組んできたことを入れる場合もありますね。イベントページは、かっこよさよりも内容がしっかりと伝わるかが重要だと思います。

下まで見られない場合も多いので、重要な情報はページ上部に記載するようにしています。

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河原:タイトルをしっかり決めていると、全体の進行にも軸が生まれますよね。告知を出さない場合でも、自分のなかでタイトルを持つだけで効果があると思います。

「告知文の最初に、エモい文章書きがち」と、コメントが届いています。めっちゃわかる(笑)

藤田:わかります(笑)ただ、ケースバイケースで、エモい文章から入ったほうが人を惹き付けやすい場合もあります。

必ずしも正解があるわけではないのですが、何かの学びをテーマにしたイベントでは、イベントに参加して得られる知識・学びがイベントページ上部に記載されていたほうが良いと思います。

内容を事前に固めすぎず、ときにはアドリブも重要

河原:ここからは、参加者からの質問に答えていただきたいと思います。

Q.ゲストの話が止まったときの鉄板の質問はありますか?

藤田:鉄板の質問は用意していないのですが、ゲストが話している間にネタを見つけるように心がけています。気になることやキーワードをメモしているので、話が止まったときはそれを中心に深堀りをするか、もしくは次のトピックに移っています。

西村さんはどうですか?

西村:基本的には「聞くことがない」となる場合は少ないですね。とはいえ人間なので、たまにフリーズするときがあって、そういったときは「ちなみに」とゆっくり前置きをしながら、その場で質問を考えています。

Q.藤田さんの声の使い分けを知りたいです

藤田:驚くときなど、感情を出すときは声を高めにしています。「なるほど」「そうなんだ」と話を深めていくときは低めにしています。

Q.アーカイブ動画やコメントは振り返っていますか?

藤田:「あの場面のあれはこうだったね」など、30分ぐらいの反省会をしています。とくに初心者のときは、かなり振り返っていましたね。リアルの場だと、途中休憩の際にスタッフやダブルファシリテーションの相方に修正ポイントを聞いていました。

「今日はいつもと比べてこうだったよ」とフィードバックをもらうと次に活かすことができるので、ファシリテーションに慣れていなかったころは意識してやっていました。

河原:僕は、とくにオンラインになってから見返すようになりました。マイクの音量バランスとか細かい点も含めて見返しています。

藤田:あと、事前アンケートをとっているときは目を通しています。イベント全体の満足度にも影響するので「イベントに期待していること」や「登壇者に聞きたいこと」などは、とくに事前に把握するようにしています。

実際の進行とは異なる期待が多い場合は、前置きとして「こういうことを期待しているかもしれませんが、こっちでいきます」など、期待値調整をしています。

Q.進行表や台本は作っていますか?

藤田:基本的には作らないですね。もちろんイベントによっては必要なケースもありますが、事前に内容を固めすぎると盛り上がらない場合が多いんですよ。

なので、ゲストには「ざっくりとした内容は共有できるけど、それ以上は共有できません」と伝えて理解してもらうようにしています。

河原:事前に質問がほしいと言う方も多いんですけど、例えば10こ質問を作っても実際は2こぐらいしか使わないケースもあります。「この人、アドリブいけるな」と思ったら、結構アドリブを入れてしまいますね。

藤田:アドリブを入れた方が面白くなりますよね。あと、本番前に楽屋でゲストと話をすると、かなり盛り上がってしまう問題がありまして(笑) 

同じ話を本番ですると予定調和になってしまうので、本番前には話をしすぎないように気をつけています。

上達の近道は、とにかく場数をこなすこと

河原:これからファシリテーターを目指す人に、何か一言アドバイスをください。

藤田:ファシリテーションは、場数が重要な世界と言われています。なので、本番後に振り返ることや、他のファシリテーターの動き方を参考にするなど、積極的に学ぶことが大切です。緊張を楽しみながらも、まずはどんどん数をこなしてみてください。

そして、まだ「MODERATORS & FACILITATORS」の講座を受けたことがない人は、受けてみると安心して現場に立てると思うので、ぜひ受講を検討してみてください。

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河原さん:本日はありがとうございました!

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2020年2月に逸早くオンライン開催された at Will Work主催「働き方を考えるカンファレンス2020」など数多くのイベントでモデレーター/ファシリテーターを務める藤本さんから、オフラインとオンラインでの違いやイベント進行で特に気をつけていることなどを学んでいきます。

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