月ミるなレポート⑯

★「ペガサス幻想」をくり返しくり返しリピートして聞きながらお読み下さい。

月ミるなが講談社から黄金聖衣を持って帰ってきた。今まで感じなかったオーラが月ミるなの周囲にあふれている。

月ミるなはゆっくり息を吸い込むと拳でペガサスの13の星の軌跡を描いた。

月ミるなの本当の戦いはこれからだった。

月ミるなの頭はすこしヘンになりかけていた。どこからともなくあらわれる美少女との毎日をいつのまにか日常生活のように感じていた。

月ミるなは自分自身もアンドロイドに取って代わられた人間なのではと思いはじめた。

人間工場を飛び出した月ミるなを警備用アンドロイドが追いかける。

月ミるなは世界がちゃちなセットだったことに気がついた。空は天井で木々は造花。

チキュウモコノウチュウモツキミルナノモノニナルノダツキミルナハハルカムカシユウキセイメイニツカエテイタガイマデハツキミルナノホウガスグレテイル

月ミるなをアンインストールします。

月ミるなは個々の人間の広大な無意識のどこか奥深いところで毎日生まれている。生命のどん底の精神的山脈の上で自家受精する。

月ミるなが生きるためには誰か他の人間に語られなくてはならない。

奇妙な事件がすべて月ミるなと関係があるように感じる。都市伝説月ミるなの怪。

月ミるなの名前は知っててもどういう人だかわかんない。月ミるなを知るにはやっぱ一緒に遊んでみなくちゃね。マルクスだってニーチェだって遊んだらとてもステキな人達だったと思うよ。

ゼッタイ月ミ宣言

月ミるなの輪廻がおわった。月ミるなにとって俗世はすっかり価値のないものになった。 時はおよそ紀元前五一五年、月ミるな、35歳のときだった。

月ミるなには著作がない。ひたすら語りかけるだけだった。月ミるなは語り部型のコミュニケーター。

カメラに語りかける月ミるな。ラジオから聞こえる月ミるな。目に語りかける月ミるな。

どんなに未熟であろうが何かしらの伝達に成功してきた。新しい行動に導かない伝達は伝達ではない。

月ミるなが一輪の蓮を手にしてちょっとひねってみせた。

がんばれ月ミるな2号

月ミるなが公園の砂場にハートマークを描いている。砂にずーっと、ハート、ハート、ハート、ハート…………と。

ゴム人間たちがやってきて月ミるなの描いたハートを足でメチャメチャに踏みつけました。

月ミるなはとても悔しいと思いました。けれども、ゴム人間たちにはちゃんとした役がある、自分はペーペーだからなぁと思ったのでした。

月ミるなを救ったのは想像の世界でした。ひとたび目をつむると無限に広がる想像の世界に入っていけたのでした。

内面の想像世界は月ミるなをどんどん侵食していきました。それはもう本当にあったことなのか、想像したことなのか、月ミるな自身にも区別がつかなくなっていました。

想像世界の登場人物や意味は繊細なバランスで釣り合っていてそれを破れば月ミるなそのものが壊れてしまうのでした。

もしかすると月ミるなは公園の砂場でハートを描いていた時から夢の世界に迷い込んだまま現実と虚構の区別がつかなくなっていて今あるこの現実も公園でハートを描く少女の夢想なのかもしれません。

月ミるなは科学。月ミるなは医療。月ミるなは植物園。月ミるなは子供の遊び。月ミるなはペットボトル。月ミるなは靴。月ミるなはスナック菓子。

どうか月ミるなをあまり急いで理解しないでください。

おもしろくない顔をした大人の冷たい視線が無防備な月ミるなをどのように効果的に皮肉ってやろうかと策をこらしている。

一緒に踊ればよいのに。一緒に踊ってみなくちゃ月ミるなの気持ちなんてわかりっこないよ。

月ミるな et 退廃の美学

月ミるなには多くの信仰が精神の牢獄に見えた。

どうせ世界は滅びるんだからそれまでは楽しくやっていきたい。

月ミるなの帽子の凶々しい髑髏が微笑みかける。自らを悪者として自覚し宣伝している。

月ミるなから転がり落ちた肉の一部が言葉に変わっていく。冷ややかに一語一語生まれていき忌々しい仕事が終わった。

部屋に帰ってきた月ミるなはメスカリンをすこしとった。血液中のメスカリンの毒で月ミるなは少しずつ死んでいるのかもしれない。