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諦めてはいるけれど

「喋りながらかき混ぜてる所を見ると、許せなくて」

かき氷屋さんがこんな事を仰っていて。

混ぜたら溶けて、溶けたら美味しくなくなるから。

こんな単純な事なんですが、この時期はしょうがないみたいです。

商品が出来上がり、提供された時が、お客さんの喜びのピークみたいなので。

様々な角度で写真を撮り、それが終わったら、かき混ぜながら喋りだすという。

お店にいる常連さんは、そんな姿を見て「夏が来ましたね」と、声をかけてくるみたいです。

もはや、夏の風物詩。

「楽しみ方は人それぞれだろー!」

毎度毎度、飲食店が小言を言う度に、こんな声が飛んできて。

「宣伝してもらってるからいいじゃないか」

「何を言っても無駄じゃないか」

「みんながみんなそうではないんだから」

もう、こんなのは聞き飽きていまして。

というかね、そんな声なんて頭の中では何度も飛び交っていてですね。

「うんうん、しょうがないか」

「諦めが肝心」

「分かってくれてるお客さんはいる」

怒りにちかいもやもやがこみ上げてきた時は、深呼吸をしつつ、落ち着かせようとこれらの言葉を思い浮かべるのです。

ブルース・バナーが怒りを抑えるように。

ただ、怒りは収まっても疑問は消えなくて。

いや、疑問というよりは、わかりあえなさか。

だから、わかりあえるのは同業者という事で、僕のもとには同業者が列をなすのでしょう。

「美味しい物を食べてほしいのに、美味しくない状態にして食べるのって何でですかね?」

一般的な答えはないけど、自分の中では答えがある質問をされ。

「時代やな」

と、僕は答えるのです。

理屈ではない時、僕は時代に頼りがちなのです。

「はぁ」

そりゃ、こんな返事にもなると思いますが、時代でしょ。

スマホが無ければこんな事になってないので。

でも、「スマホがあったから、今みたいなお店が増えたんでしょ?」

こんな質問をしてくる人もいて。

それはそう、ぐぬぬ。

とは、ならず。

そういったお店があって、もてはやされたのも事実ですが、だからといって、作ってる人の大抵は、美味しい物を食べてほしいと思ってます。

熱い物は熱いうちに、冷たいものは冷たいうちに、ホイップクリームはだれる前に、氷は溶ける前に。

何も難しいお願いではないからこそ、憤ってしまうのです。

わかりあえる日は来るのだろうか。

でも、そんな日が来てしまったら、うちの来店数に影響がでそうだから、このままでいいか。

僕なら心からの共感が出来ますので、同業者の方々、ラテを買うついでにぐちりに来てください。


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