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もう後悔したくないから

ホルンに夢中で、吹奏楽に熱心だった高校生、同期には音楽大学に進もうとしている子が2人いた。私だって音楽は好きだったし、他の部員に比べても結構ちゃんと頑張っている方だと思っていたが、音楽で進学しようとは全く思っていなかった。

しかし、高校2年生の3月。私の心にある1つのモヤモヤを残す出来事が起きる。

毎年3月に開催される吹奏楽部の定期演奏会。私の代はたまたま先輩がいなかったので、2年生ながらソロを吹かせてもらった。何時間も練習した甲斐があり、本番はノーミス。あれほど気持ち良かったことはない。

演奏会後、解散するまでの待機時間に顧問のおじいちゃんに手招きをされて呼ばれた。

「わたしの知り合いのプロの方がね、あなたのソロ良かったって」

おじいちゃんは昔、オーケストラでプロのホルン奏者をしていた。
舞い上がるって、ああいうことを言うんだ。

それ以来だ。あの時音大を目指していたら、どうなったのだろう。せっかくプロの方が褒めてくださったのにな。
ふと、思っていてもしょうがないことを思い出すようになってしまった。

自分より上手い人はいっぱいだろうし、弟と年齢が離れていることもあって私の受験なんかで家庭のお金をたくさん使うわけにはいかない。親には相談することもなく、「そんな人生があったらどれだけ素敵だったろう」と可能性を自ら断ってしまっていた。

その後、私はろくに勉強もしないまま推薦で近所の大学に入れてもらい、ふつーの女子大生になった。

一方、音大を目指していた2人は、しっかり現役合格果たした。合格を聞いた時、祝福した一方で恨めしさのようなものを感じていた自分はひどく醜い顔をしていたと思う。

挑戦してみれば良かったのに、そんな後悔を抱えながら、私は大学でもちっとも成長していなかった。

ぺろっと入れた大学で選んだのは、バンドサークル。

サークル在籍中は、みんなコピーバンドが中心だったものの、私の周りだけで社会人になった今もバンド活動を続けて、作曲をしている人たちがいる。

一時期は週1ペースで遊んでいたような後輩は、今やメジャーデビューしたバンドマンだ。

覚悟を持って音楽の道へ進んだ彼らの姿を見ると、虚しさや劣等感を抱いてならない。彼らのライブを見に行って元気がもらえるのは、その舞台に立てなかった自分を重ねているのかもしれない。

堅実に、普通に、平凡に進んできた私。

そんなつまらない私でも、記事を書いて良いと言ってくださるマガジンが始まりました。

今回の首謀者、『KUKUMU』編集者の栗田真希さんは、ライターの先輩であり、ライターの学校「batons writing college」の同級生であり、麻婆豆腐好きのお友達です。

お誘いを受け、今度こそ私だってやってやるんだ!と自分を奮い立たせました。

普通に生きるよりおもしれーことしたいんです。がんばります。