【横断 #11】希少疾患の患者会発足から治療法確立へ
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吉田 幸司さん ・ 麻里さん
吉田さんご夫妻の息子さんである真翔(まなと)くん。生後1か月健診で「特に異常なし」と言われたが、生後2か月の時に、鼻血が止まらなくなった。他の症状も出ていたことから不安がつきまとい、救急外来、耳鼻科、小児科などを回るも、どこでも異常は診断されない。
その後、幸いにも転院した大学病院に、それらの症状が出る病気を知る医師がいた。診断名は、『アラジール症候群』。肝臓・心臓・眼球・顔貌・骨格に関わる複合多系統疾患で、10万人に1人が発症すると言われる先天性の希少難病(2024年現在では7万人に1人程度と言われている)。日本国内で診断されている患者は200〜300名程度と言われ、それ故に医師でもその病名を知らないほど珍しい病気だった。
吉田さんは「もし違う病院に行っていたら、違う診断の可能性もあった。病気を知っている先生と出会えたことは、運がよかった」と振り返る。この診断が下ったのは生後4ヶ月の時。その後生後8ヶ月の時、「10歳までもたない」と余命宣告も受けた。
当時、診断が出たことに一安心する一方で、「自分の子供が成長していく中で、この先どうなるのか全くわからなかった」。ネットで調べても、海外のサイトでも数件しかヒットせず、分厚い医学書を見ても数行しか記載がなかった。
そんな中でも、真翔くんは病気と闘わなければいけない。入院すれば、肝機能の障害が来る痒さが原因で寝ながら全身をかきむしってしまい、止血作用にも障害があるため、朝起きれば布団が血まみれになる日々が続いたこともあった。耳に血がたまれば中耳炎を繰り返して鼓膜がなくなり難聴を患ったこともあった。
そんな中で、吉田さん夫婦は、真翔くんの写真を載せたホームページを立ち上げる。「将来息子と振り返る思い出に、そして、もし他に同じ不安を抱えた人がいればと思って。難病を明るく表現し、病気の説明だけではなく想いも残し届けたかった」
その想いは見事、他の患者さんに届いた。連絡を取り合い、それまで知り得なかった情報の共有が始まった。「情報を共有・集約する場が必要」となり、個人で始めたホームページは、患者会『日本アラジール症候群の会』の発足に発展した。
今、その発足から17年が経った。吉田さんご夫妻が自らA4チラシを作り病院に置いてもらえるように頼み込むところから始め、「10年ぐらいはどうしたらいいか手探りだった」活動も、続けたことで今や100名ほどの患者にリーチできるようになり、24家族が患者会の会員だ。
しかし、課題もある。SNSはこうした活動の追い風になった一方で、患者会運営のための年会費3000円でも患者会には入らず「情報だけもらえればいいという人も増えている」。それでも、吉田さんご夫妻は「会員と非会員で得られる情報に差をつけるのは違う」と考え、希少難病の数少ない患者の方々が会費を理由に離散することも望んでいない。クラウドファンディングなどで運営の資金集めを続けているが、持ち出しも多いのが現状だ。
これまで、交流会を呼び掛けて開催したのに「誰も来なかった」ことさえあった。それでも患者会を続ける理由を聞けば、「すぐに国や社会が変わるわけじゃない。まずは自分の周りから、地域から変えていかないといけないと、活動を通じて気付いたんです。気付いたら、やらないといけない」と返ってきた。
その活動の原点であり、かつて余命宣告を受けた真翔くんは、もう20歳になる。運動制限があったり、激しい仕事は控えるように言われているが、企業に一般就労し、寮生活を送っている。
しかし、一件落着というわけではなく、アラジール症候群患者が抱える課題も大きい。
例えば、アラジール症候群の症状は非常に多様であり、例えば真翔さんの場合は「肝臓や心臓や知的や補聴器や運動制限など色々な部位に障害があるが、どれも中等度」であるため、医療補助の対象にならない。何か合算値のような考え方でも導入されない限りは、医療費などの負担が軽くなる道がない。
また、アラジール症候群は先天性の希少難病で、小児に診断が下る事が多い故に「子供の病気でしょ」と見なす医師もおり、複合多系統疾患として横断的に診てくれる小児科はあっても、成人になれば「地域に縦割りの病院しか存在せず、何かあったときに診てもらえる病院がない」のだ。こうした医療体制では治療法も確立されないし、患者会の中には適切な病院を受診するのに新幹線や飛行機を使わざるを得ない方もおられるなど負担も重い。
こうした背景から、吉田さんご夫妻が立ち上げた患者会『日本アラジール症候群の会』はもう一歩先に踏み出そうとしている。患者会を一般社団法人化した上で、患者会主導で幅広い専門医療者を集め、希少疾患を知ってもらい、そして治療法の確立に向けて研究してもらう『アラジール症候群研究会』を立ち上げようとしているのだ(そのためのクラウドファンディングも実施)。
これまでインタビューした中で、「まず実践を積み上げる。それなしに制度は変わらない」と話された方がおられた。吉田さんご夫妻はまさに、実践を積み上げ続けている。同じ当事者を集め、周囲や地域を変え、医療者を集め、その先を変えるために。
どんな障害や難病にも当事者会は欠かせない。吉田さんご夫妻の挑戦は、そんな多くの当事者会の参考になるだろう。
▼吉田さんのホームページ
「Happy Family Life ~難病アラジール症候群との生活~」
ここまで読んでくださった皆さまに‥
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