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【横断 #4】パラスポーツから広がる大きな可能性

早稲田 いぶきさん


 今年1月20日に東京体育館で、障害のある人もない人もパラスポーツを一緒に楽しむ『チャレスポ!TOKYO』というイベントが開かれた。その会場の中でひときわ人気を集めていたのが、『一般社団法人センターポール』が提供する「車いすバスケットボール」体験。そこで体験をサポートしていたのが、早稲田さんだった。

 早稲田さんは、車いすユーザーでもなければ、バスケ選手でもない。「もともと音楽をやっていて、運動もするタイプじゃなかったのに、それまでなかったスポーツ熱が目覚めちゃって」。

 車いすバスケとの出会いは、3x3の大会『CP3x3』。エンタメ性があふれる大会にライブ枠で音楽をしに行ったのだが、「(車いすバスケの)迫力がすごくて、こんなにすごいものなのかと驚いた」。

 実は早稲田さんには知的障害のある妹さんがいる。ご自身の左手にも通称『平山病』と呼ばれる手の筋力や握力が低下する障害もあり、今でも小指や薬指の半分に麻痺がある。それでも、他の障害のある人には「駅で見ても一歩引いてしまったり、逆に気を遣いすぎたりして、接点があまりない」という認識だった。

 それが、実際に車いすバスケを生で見たことがターニングポイントになり、純粋に「勢いがあって面白い人ばかりで、フラットに接するようになれた」。


 その後早稲田さんが入社することになった『一般社団法人センターポール』は、こうしたパラスポーツイベントだけではなく、パラアスリートの競技活動をサポートするとともに、パラスポーツ訪問型の体験学習や研修を学校や企業にも提供している。さらに最近では、運動発達療育を中心にした放課後等デイサービスも展開し、知的障害や自閉症など「障がい発達に悩みを持つ児童を受け入れている」。

 その場所を通じても、早稲田さんの障害への意識は変化していった。振り返ると自分の小中学校にもそういった子供たちはいたが、「意志疎通がちゃんとできているかわからないままだった」。しかし、デイサービスを通じて継続的に付き合うと、「一人ひとり意思疎通の仕方が違うだけで、伝わっていることがわかる」ようになる。

 もちろん、自己制御ができない子もいれば、発語ができない子もいる。そうした子供の特性に合わせて、有資格者と一緒にその時にできるスポーツを選択したり、単に自由に遊ばせておくだけではなく、良くない行動があれば将来の自立のために適切に注意することにも取り組んでいる。


 こうした素晴らしい活動を展開していくにも、感じる課題は多い。

 例えば、選手が素晴らしいパフォーマンスを繰り広げる車いすバスケも、「(最高峰の)天皇杯であれば有料だが、無料で観戦できる試合も多い」のが現状だ。まだまだ認知度を上げる段階故に仕方がない面はあるものの、今後は「パラスポーツや選手のプレーにしっかり価値がついていくことが重要」と感じている。

 例えば、「障がいの有無に関わらず共生社会の実現を目指すなら、小さい頃から(その世界を)体験してほしい」。でも、学校でのパラスポーツ訪問型体験学習は、制度的な支援が東京都に限られる。そのため、届く依頼は都内ばかりだ。「大人も子供も実際の選手を連れて行くと、“かわいそう”から“すごい”に顔つきが変わるんです」。それが全国で起きるようになってほしい。

 それ以外でも、もっとパラアスリートを企業研修に派遣するにはどうするか、パラアスリートのキャリアとしてスポーツ以外にどう活動領域を広げるか、他にも課題はある。


 そうした課題解決の一歩目は、早稲田さんがそうだったように、「一度見てやってみれば魅力がわかる」ことだろう。これを読んだ学校や企業や自治体の方がいれば、その一歩だけでいいので、まず踏んでもらいたい。



▷ 一般社団法人センターポール



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