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【あし #15】車いすでもあきらめない世界をつくる


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松下 雄一さん


 車いすで「行けた」という情報で、誰かの「行きたい」を後押しするアプリ『WheeLog!』。

 ユーザーが車いすで通った道をマップ上で共有する「走行ログ」、車いすユーザーが利用できる施設や設備をみんなで共有する「スポット」、ユーザーが知りたいスポットのバリアフリー状況を聞く「リクエスト」などの機能からなる。

 このアプリは、2017年にリリースされて以来、10万以上ダウンロードされ、10言語に対応し、62カ国もの人が利用するまでに広がっている。



 松下さんは、最初のユーザーの一人だ。ただ、車いすユーザーではない。

 2017年当時、松下さんは台湾の首都である台北でホテルマンをしていた。そこで、『WheeLog!』アプリをリリースするウィーログ代表の織田友理子さんと共通の友人を介して知り合う。「車いすでもあきらめない世界」というビジョンと、アプリを通じて「様々なバリアを感じてしまう車いすユーザーの外出を後押しする」という目的を聞いて共感した。

 「車いすユーザーにも台北に来てほしい」と、”非車いすユーザー”として「市内のバリアフリー情報を共有し始めた」


 松下さんがビジョンやアプリの目的に共感した理由は、社会にとって良いことであることに加えて、もう一つあった。

 大学院の博士課程時代。プレッシャーから精神疾患になり、「20代後半は引きこもりと治療の生活を送った」。その絶望感から、心理的なバリアを感じてなかなか外出できない、そして社会に出ていけない。「そんなもんもんとする」感情に共通のものを感じた。

 その後、アプリの一ユーザーに留まらず、一時帰国時にはイベントを手伝ったり、リモートでもWeb作成を手伝ったりしていくうちに、もっと活動に関わっていきたいと思い、織田さんのウィーログに参画した。


 当時、ウィーログはすでに、2015年の「Googleインパクトチャレンジ」でグランプリを獲得し、「しんけい」カテゴリーの第1話でご紹介した伊藤史人さんや、分身ロボット「OriHime」の開発者として知られる吉藤オリィさんなどが参画していた。

 その後も数々の受賞が続き、多くの寄付や法人スポンサーも集めていくのだが、松下さんにその理由を聞くと、「代表の織田です」という一言が返ってきた。


 「織田を当事者ではなく、社会を変革していくアントレプレナーとして見ています。こういう社会にしていきたいというビジョンをものすごく強く発信する。そして、それを実際にやる意思の強さ。『車いすでもあきらめない』と掲げていますが、そもそも本人の強い想いと諦めないしぶとさが積み重なっていった結果です」


 織田さんは、22歳で難病の『遠位型ミオパチー』と診断された。体幹から遠い部位の手足から全身の筋肉が低下していく進行性の筋疾患であり、織田さんは現在、首から下が自分の意思では動かせない。

 この病気は、日本には患者が400人ほどしかいない『ウルトラオーファン(超希少性疾病)』であり、同じ患者に出会うこともなければ、治療費も助成されず、新薬開発は採算が取れず着手されなかった。

 それでも、織田さんは長い歳月をかけて、患者会の発足から関わり、全国で署名活動や政治への政策提言を展開して国の指定難病を勝ち取り、製薬会社が新薬開発を始めるための助成まで取り付けていった。



 「天賦の才とか誰もできないことではないんです。それこそ申請書の書き方一つから、ひたすらこつこつと長い時間をかけてやってきたんです」と話す松下さんも含め、そうした織田さんの姿に集った人の中にも経験が積み重なっていった。

 そうして、みんなでつくるバリアフリーマップ『WheeLog!』アプリを手掛けるウィーログは2023年末、外務省が主催する「ジャパンSDGsアワード」の内閣総理大臣賞を受賞する。「もともと賞は知っていましたが、締め切りに気付いたのは7時間前だったんですよ」と松下さんは苦笑いする。すぐにメンバーが集合して、「それまでの積み重ねがあったので、それを一気にまとめて、3分前に提出できました」。

 2021年のドバイ万博には「グローバルイノベーター」として招へいされた。申請時、織田さんは突発的に倒れて入院中だった。それでも「ドバイ万博を取るんだ」と言う織田さんの夫が病室で申請書を書いた。


 織田さんや松下さんをはじめとしたメンバーの一体感やコミットメントの理由は何か。

 「織田はよく、『日本だけじゃなく、世界の車いすユーザーの役に立ちたい』と言います。そこに広げていくために今、何が必要なのか、きっちり共有していく。それを通じて互いにつながっておくことが大事だと感じています」
 


 もちろん、ビジョンやチームですべてがうまくいくわけではない。

 「ざっくり、アプリはWebの10倍お金がかかる」。いかに車いすユーザーのインフラと言えど、国や自治体が相応の予算を用意してくれるわけではない。

 それでも、ウィーログとして「経済格差で情報格差が生まれてはいけない」、「誰でもグーグルマップが無料で使えるのに、車いすユーザーになるとウィーログが有料になるのはおかしい」と考え、「ユーザーさんからお金を取ることは全く考えていない」

 だから、松下さんも珍しいケースと前置きしつつ、「法人パートナーやクラウドファンディングで協力してもらうしかない」と語る。


 ウィーログが現在実施中のクラウドファンディングでは、アプリに『車いす相談室』というQ&A機能の実装を目指している。

 バリアフリー情報の提供を通じて「移動する手前の、そもそも日常生活に悩みを抱える車いすユーザーが相談できて、かつその知恵を蓄積していける。それによって、新しく利用するユーザーも参照できる」。そんな機能に着手するところだ。

 さらに、クラウドファンディング以外でも、実際に大小違う自分の車いすで本当に現地に行けるのか、3Dデータに基づいて事前に疑似体験できる『車いす3Dシミュレーション』も開発中だ。



 現在、『WheeLog!』アプリへのバリアフリー情報の投稿者の7割が、最初にユーザーになった松下さんと同じ”非車いすユーザー”だ。アプリを使った車いすでの街歩きイベントが、全国各地や法人研修でも積み重ねられてきた背景がある。

 ウィーログの取り組みは、日本の各地や国の枠を超え、障害者と健常者の枠も取り払い、さらにもっともっと車いすユーザーの心情に寄り添おうと突き進んでいる。


 松下さんにウィーログの特徴を聞くと、「楽しく」だそうだ。イベント一つとっても「楽しいと、人が集まってくる」。松下さんのWeb会議の壁紙も「楽しくワクワク感を徹底している」そうだが、私にはそれを背景にめちゃくちゃ楽しそうに話す松下さんの方が印象に残った。

 こんな取り組みや人たちを応援するのも、きっと楽しい。





ここまで読んでくださった皆さまに‥


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