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【日本経済新聞要約・考察】第6回 印ノンバンクに潜む経済危機リスク

※本要約・考察は2020年2月16日の日経新聞の記事をもとに書いております。

〈要約〉

16年末の高額紙幣の廃止で銀行にタンス預金が流入、カネ余り解消のために銀行はノンバンクへの融資を増やしたが、インフラストラクチャー・リーシング・アンド・ファイナンシャル・サービス(IL&FS)の債務不履行問題により銀行も一転慎重姿勢となった。ノンバンクへの融資が減り、銀行の貸し渋りが今は実体経済にも影響を与え始めており、経済成長率は4%に低迷する。この経済成長率の減速に伴う、景気悪化により企業の業績悪化が生じ、不良債権予備軍を一段と増やす悪循環は起きかねない。

インド自動車販売の深刻な低迷も、個人や企業にローンを提供するノンバンクの資金繰りが悪化し、貸し出しができなくなっていることに起因する。インドの自動車販売点協会連合によると、2018年以降すでに300店近くの販売店が廃業している。

ノンバンクの資金繰りが難しくなった大きな原因としては、18年夏に債務不履行に陥ったIL&FSだ。IL&FSの問題により銀行や監督当局がノンバンクへの警戒を強めてしまったのだ。

不良債権かどうかの判断は銀行などの裁量が多いため、営業利益で有利子負債の利払いを三年連続でまかなえなかった企業を「不良債権予備軍」と定義すると、インド上場企業の債務全体に占める「不良債権予備軍」の比率は21%となった。予備軍比率の世界平均が4.3%の中で、突出して高いこともわかる。
 

〈考察〉

今回のインドの不良債権予備軍に関しての記事では「黒木亮作品:獅子のごとく」「新生銀行」を思い出した。

1. 「黒木亮作品:獅子のごとく」

今回の記事の「不良債権」の言葉を見たときに真っ先に浮かんだのが、黒木亮先生作品の「獅子のごとく 小説頭身銀行日本人パートナー」だ。作品中、主人公の峰坂丹は所属銀行のエイブラハムブラザーズ(モデル:ゴールドマンサックス)のパートナーとなり、不良債権ビジネスに乗り出す。それで大きな成功を収め、利ザヤ稼ぎビジネスを追求し、巨大投資ファンドへと変貌しようとした。

2008年以降6%の経済成長率を維持していたインドとして、成熟している上場企業の不良債権化は外資系ファンドの集中攻撃を受けることになるかもしれない。不良債権投資を行うハゲタカファンドなどの海外からの投資家が大儲けする構図となっているため、その国の景気への悪影響も与えかねない。記事通りインドの景気後退懸念からのインド10年国債の利回りは3ヶ月間減少傾向にある。

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これに加え、海外ファンドの不良債権投資が行われた場合は、さらに利回りは減少し、国債の買いが増えるかもしれない。
一方で、インドは近年では金融業界やビジネスのリーダーの輩出が印象的な中、インド国内の貸し倒れ損失がインド国内の誰かに利益になれば、現状の景気悪化の歯止めになるかもしれない。

2. 「新生銀行」

1999年9月、1000億円超えの不良債権を抱えて破綻した日本長期信用銀行(現在の新生銀行)を買い受けたのは、米投資会社リップルウッド・ホールディングズであり、国が保有する同銀行株の譲渡価格はわずか10億円だった。

インドで今までノンバンクに貸し出しを行っていた銀行は現在貸し渋りをしている中で、以前からノンバンクへの貸出が多かった銀行は不良債権を抱えやすい状態となっている。このままでは、1999年の日本長期信用銀行のように、海外の投資会社に低価格で買収されてしまうかもしれない。

2016年を境にインドの経済成長率は前年比で減少傾向にあり、影の銀行への貸し渋りが生じ、不良債権予備軍が多いインドは今後バブル崩壊後の日本と同じような悪循環に陥り、海外の投資会社にとっては絶妙な投資先になるかもしれない。インド経済を影で回していたshadow bankへの警戒心が強まり、金融の目詰まりが生じている以上、インドの経済成長は大きくは見込めない。この一年間はインド経済の失速の可能性を考えるとインド国債の購入は(利回りが下がり、価格が上がることを期待し)間違いではないかもしれない。

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