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ピンチをアドリブで乗り越える技 33/100(即興術01) -ゼロ
自問自答を繰り返しながら、
アドリブと演技の関係を
追求していってみようと思い立ちました。
100回(?!)連載にて、お送りします。
ゼロからは、ゼロしか生まれない
「今日はアドリブでいこう!」
という時、どの程度の準備をなさってますか?
もちろん完全なる丸腰というわけではないかと思いますが、前回の話を踏襲するとすれば、演技の場合は、台本があっても常にアドリブです。
「今日も明日もアドリブ」でいいのであって、ただ資料を「ひとつめの輪」(10/100参照)で読んでいるだけ、を目指しているのでないならば、アドリブ力が必要です。
では、そのアドリブ力とは何でしょうか?
私たちの劇団では、本当に何の事前相談もせずに本番に臨んでいました。全て出たとこ勝負です。
でも、その実、日々のコミュニケーションや、時事トピックへの広いアンテナ、脳と身体のウォームアップ、注意深い傾聴(5/100参照)、そしてエイヤッの度胸(16/100参照)があった上での、「出たとこ勝負」でした。
いま思い返すと、互いに何を考えているかまで、ある程度読み取れるほどの関係を築いていました。
公演を始めると、まず観客からいくつかキーワードをもらいます。
例えば「友情」「拾ってきた猫」「宇宙」などです。
さあ、この3つのキーワードを全て使った物語のあらすじって、なにが思い浮かびますか?
「宇宙飛行士を目指すトムは、ある日道端で猫を拾う。じつはその飼い主はかの有名宇宙飛行士のビリー。彼らは友情を育むが、二人の間に何かしらの亀裂が起きる。猫のミャーは、ナレーターとして観客に語りかけることができる。二人の仲を無事取り持ったミャーは、初のペット宇宙飛行士として採用される。二人と一匹は一緒に宇宙へ飛び立つ。」
『宇宙兄弟』の影響を受けてますが、、、この程度の筋書きは10秒ほどで思い浮かぶ必要があります。
こうなると、登場人物は、トム、ミャー、ビリー、上官、ミャーの恋人、ぐらいかな?っと仮定しておきます。
そして最初のシーンは、おそらくトムがミャーを拾う場面でしょう。
ひとり舞台上に上がり、雨の中を『雨に唄えば』よろしく歩いているシーンから始めます。途中で捨てられた猫を見つけるつもりです。
そしたら、もう一人のメンバーが警察官として職質してきました。雨の中で歌っている不審者扱いです!
これは、私の考えていた筋書きとは違いますね。
警察官は、
「最近猫の失踪が流行っている。お前が犯人じゃないか?あ!服に猫の毛がついてるぞ!」
と、言うかもしれません。
あれ?どんどん自分の想定からズレてきました。
もしかしたらこの警察官役は、
「猫を拾ってきては、人体実験、いや『ニャン体実験』を続けている犬山博士を追う警察官。警察官は自身猫を飼っていて、名前は『宇宙』。宇宙と警察官の友情は、非道にも犬山博士によって奪われてしまう。という刑事もの」
というような筋書きを考えていたかもしれません。
(明らかに発想力と物語構成の調子が悪い日にあたってますね。最近『1Q84』を読み返したのでしょうか?)
このふたりの役者がシーンを続けると、落とし所を探る、という作業が始まります。
でも、これでいいんです。
「最近猫の失踪が流行っている。お前が犯人じゃないか?あ!服に猫の毛がついてるぞ!」
「ん?ああ、これはあれだ。さっき猫を飼ってる実家から帰ってきたところなんだ。明日から宇宙訓練にいくから、暫く会えなくなると思って。ほら、JAXAの身分証です。」
と、自信いっぱいに応える。
「なんだ、ご実家でしたか~
(自分の「猫の名前は『宇宙』」より上質なアイディアだな。大丈夫そうだ)
宇宙飛行士さん!それは素晴らしい!疑って失礼しました。」
と、なるかもしれません。
しかしこれが、警察官ではなく、もう一人のメンバーが、何もアイディアを持たずに、ただの道端で出会う通行人としてシーンに参加してきたらどうなるでしょうか?
他人同士が道端ですれ違う。そこに物語は何も生まれません。
自分のアイディアは覆されるかもしれない、ということを100も承知で、それでも何かを持って俎上には上がらなくてはいけません。
ゼロをかけても、ゼロしか生まれないじゃないですか。
起動には時間がかかるものです。
ゼロで開始しては、動き出すのに時間を浪費してしまいます。
でも、何かを立ち上げ、起動を開始した状態でスタートすれば、そこから軌道修正をするのは容易。
これが、私たちが実践から学んだ即興の技術です。
(じつは、今回のノー・アイディアでシーンに入ってきた、ただの通行人に対する、正解の声がけは
「あ、猫がいる!にゃー、にゃー。こんな時間に出歩いてどうしたの?」
ですが、これはかなり難易度高いです。)
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