ピンチをアドリブで乗り越える技 8/100(ヘリコプター)

自問自答を繰り返しながら、
アドリブと演技の関係を
追求していってみようと思い立ちました。
100回(?!)連載にて、お送りします。


自分を俯瞰して見ている冷静な視点

ピンチに陥った時、自己の意識の中に埋没するのではなく、自らを俯瞰して見る視点を持ち、周りの環境や相手に傾聴するという話をしてきました。

今回ご紹介する『ヘリコプター理論』も、俯瞰するという意味では同じなのですが、角度(高度?!)がちょっと違います。
目の前の問題に対してどのような観点から向き合っていくかというツールです。

このところ、「アドリブ」というキーワードから、少し離れ気味になってるという自覚はあるのですが、”The Little Fucker”も”The Witness”もアドリブを行うにあたり、非常に重要な視点です。

私は演技という枠組みの中でこれらを学びましたが、インプロ(≒アドリブ)の公演に於いても、常に意識して、非常に助けられていたツールたちです。

インプロの公演では、観客の空気を常に読むことが求められます、また時には自分の直感を信じてリスキーな提案をしていくことが非常に重要です。

お分かりのとおり、前者は”The Wittness”、後者は”The Little Fucker”の領域になります。

ロンドンの演劇学校では、日本で一般的に認識されてるような、「あ、い、う、え、え、お、あ、お」のような発声練習や、感情をどう込めるというような演技実習の授業は行いません。

詳しくは、同校に1年間留学なさっていた鴻上尚史さんによる本をご参照ください。
痛快で、かつ授業の空気感も日記帳で詳細に書かれていて、一気に読み進めてしまう愉快な名著です。とても私には太刀打ち出来ないので、ここではアドリブで書くという手法に逃げさせて頂きました…

イギリスでの俳優教育の基本、技術を学ぶためのロンドンの演劇学校に留学した三十九歳の鴻上氏。…時折演出家の視点が覗くも生徒に徹し、イギリス流ワークショップに取り組む姿がユーモラスな文体で綴られる。俳優志望者だけでなくすべての人の人生に有益な、泣き笑い奮闘記。

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演劇学校では、動作、発声、演技、ダンス、格闘、理論、文学、歴史などの授業に加え、Life Skillsという授業がありました。

この先、プロの役者としての人生を歩んでいくにあたり、『様々な苦難にどう立ち向かっていくか?』という対処法を学ぶ授業でした。

その授業の中で1番印象に残っているのが『ヘリコプター理論』です。そのほかにも色々と教わったと思うのですが、私が日常的によく使うツールは、なぜか、これです。

ある問題に直面したとしましょう。例えば、まさに、ピンチの状態です。

地上に立っているあなたから見れば、今のピンチの状態は、すべてを覆い尽くすほど大きな問題で、他には何も見えないかもしれません。

前回まではこの状況を2次元的に捉えて、今ピンチに陥っている自分の外へ目を向けて、傾聴するという話をしてきました。
RPGゲーム的な視点から、自らを俯瞰するという話もしました。今回は、そのさらに上の目線へと浮上します。

ピンチという真っ暗闇に今あなたは立っています。そんな時、まずは、ヘリコプターに乗ってみましょう。

ヘリコプターはけたたましい音をたてて離陸していきます。地上から5メートルほどの位置に達しました。あなたの陥っていたピンチな暗闇は、今どのように見えていますか?

まだヤバいですよね。

ではもう10メートル。

どうですか?少しは小さく見えて来ましたか?

そのまま更に上昇してみて下さい。

大事だと思っていたピンチの状態、空高くから見下ろしてみると、案外そうでもなく見えてきませんか?

こうすることによって、自分の置かれた状態を、空高くから俯瞰してみる癖がついていきます。

ピンチを引き起こした原因は、そもそもこの場で解決できるものなのか、それとも時間を要するものなのか。もしくは天変地異のような個人ではどうにもならない事柄についてなのか、そこに耳を傾けることによって、いま行うべき判断は当然のように変わってくるでしょう。

ピンチに陥った時こそ、冷静に、部屋の温度を感じて下さい。吸っている空気の温度はどうですか?自分の肌に何を感じるか、匂いはするか、気圧はどうか、何が聞こえるか、手に持っているのはなんですか?汗ばんでいますか?舌には何を感じますか?

視点を俯瞰して、あらゆる感覚や意識に持っていってみれば、おのずと道筋が見えてくるかもしれません。(保証はできませんが!)

さて、視点といえば、、、ピンチに陥った時、あなたの目線は、どこを見ていますか?

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