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ピンチをアドリブで乗り越える技 38/100(即興術06) -5Steps 2/4

自問自答を繰り返しながら、
アドリブと演技の関係を
追求していってみようと思い立ちました。
100回(?!)連載にて、お送りします。


5ステップス 〜その弍〜

先週に引き続き、即興の基本となる5ステップスをご紹介します。
1. Environment
2. Relationship

そして、次は
3. Conflict
です。

Conflictというと、争い、対立と考えるのが普通ですが。私たちは違う解釈をします。

「空間」と「関係性」を作り上げることが、まずは物語の土台です。
しかし、そこに主題をおき、物語として歯車が回り始めるためには、
「ずれ」が必要です。

争いや対立は、その「ずれ」の代表格ですが、決して物語には争いや対立が必要、というわけではないと思います。それぞれのキャラクターの立ち位置に「ずれ」が生じていれば、物語は動き出します。

一般的に、ピンチは小さな「ずれ」から生じます。

ピンチに陥る前に、その「ずれ」を認識出来ていれば、ピンチを未然に防ぐことも出来るのではないでしょうか。

では、この「ずれ」とは何なのでしょうか?

それをご説明する前に、インプロの大大大前提である、
Yes, and
という法則についてお話ししなくてはいけません。

全てにおいて、否定はするな、肯定して続けろ
という意味です。

例えば、

「いらっしゃいませ(関係性)」
「えーと、ショートケーキひとつと、チョコレートケーキふたつ下さい(空間)」
「え?あのぉ、うち靴屋なんですけど?」

と言ったらどうなりますか?

お客さんは喜ぶかもしれません。
でもそれは一過性のものであって、何の発展性もなければ創造性もありません。ただ単に相手の役者を陥れることによって、自分が笑いを誘った。
それだけです。

ルールを無視して暴走している型破りな状態。
こんな人とは、一緒に仕事したくないですよね。

これがインプロの前提である「Yes, and」に反している状態です。

ここがケーキ屋であるという暗黙の設定を、否定したことによって、conflictを生じさせてるようにみえますが、これは物語の作り方としては歓迎されません。

でもじゃあ、すべてに肯定していたらどうなるでしょうか?

「いらっしゃいませ」
「えーと、ショートケーキひとつと、チョコレートケーキふたつ下さい」
「はいかしこまりました。お持ち歩きのお時間は?」
「あ、もう直ぐ隣なんで30秒ほどです」
「そうですか、それでは30秒ほどの保冷剤をお入れしときます」
「おねがいします」

うーん、だめだな。
ついつい癖で、物語を面白くしようとしてします。。。

「いらっしゃいませ」
「えーと、ショートケーキひとつと、チョコレートケーキふたつ下さい」
「はいかしこまりました。お持ち歩きのお時間は?」
「1時間ぐらいです」
「かしこまりました。ショートケーキひとつと、チョコレートケーキふたつで1280円になります。1280円ちょうど頂戴します。ありがとうございました」

ね、すべてに関してYes, andで通していると。何も起こらないし、何も面白くないですよね?

物語として成立させるためには、「ずれ」が必要です。

「いらっしゃいませ」
「えーと、ショートケーキひとつと、チョコレートケーキふたつ下さい」
「かしこまりました。チーズケーキもオススメしてるんですが、ご一緒にいかがですか?美味しすぎて、もうわたし今週毎日食べちゃってるんです!」

はい、ここでフラグ立ちました!
『チーズケーキを毎日食べる店員』

「いや、わたしチーズ苦手なんで大丈夫です。」

はい、ここでズレが生じましたね。

『チーズケーキが好きで、勧めてくる店員と、買いたくない客。』

これなら、ここがケーキ屋だということ自体は否定してないですよね、前提は肯定してます。
でもその上で、conflictを生じさせています。

インプロのレッスンでは、この「ずれ」が生じた瞬間に敏感になるために、シーンを行い、「ズレ」が生じた時点で、シーンを止めるというのを、続けざまに何度も行うという、千本ノック的な練習をします。

こうすることによって、「ずれ」に敏感になってくるんです。

ピンチを回避するためには、この「ずれ」にいち早く気づくことが大事かもしれません。

また、ピンチに陥ってしまってからでも、少しさかのぼって「ずれ」を見つけることが出来れば、そこに解決への糸口があるかもしれません。

さらには、インプロでは必要とされている、次の段階
4. Escalation
を意図的に防ぎ、ピンチを未然に防ぐことも可能でしょうか?

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