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ピンチをアドリブで乗り越える技 81/100(パニック)

自問自答を繰り返しながら、
アドリブと演技の関係を
追求していってみようと思い立ちました。
100回(?!)連載にて、お送りします。


私事で恐縮ですが、実は数日前に大ピンチに遭遇したので、そのお話をしなくてはですね…

連載をしている立場上、恥を曝け出します。

海外のとある島にいたのですが、滞在を終えて帰国する時に、事前に帰りの船のチケットを取るのをサボってました。

行きの船がガラガラだったのと、まあまず満席になることはない航路だと思っていたので、甘くみてました。

いつもならば事前に購入するのですが、なぜか怠ってました。

港につき、チケット売り場へ行くと、満席だから販売できないと言うじゃないですか!

ええええええええええええええええええええ!まずいまずいまずい、まずすぎる!

じつは、この船に乗れないと、国際線の飛行機に乗り遅れます。

しかも、乗り継ぎがあるので、一本目の飛行機に乗れないと、その後の影響は甚大です。

いやあ、そんな状況なのに、なんで買ってなかったんですかね…アホでした。

次の船は数時間後で、これでは港に着いた頃にはもう飛行機が離陸してます。

万事休す。

心臓がバクバクし始め、血の気が引くのがわかります。

列車ならば、車掌との直接交渉でなんとかなるかもですが、船だと厳しい定員がきっとあるのでしょう。船の乗組員と交渉するのは望み薄です。

乗船前にチケットはチェックされるので、とぼけて乗ってしまうことも出来ません。

あなたならどうしますか?

スイッチが入り、身体中をアドレナリンが駆け抜けます。

皮膚がゾワゾワします。
本当に久しぶりの大ピンチです。

悪いのは自分で、とくに相手がいるわけでもありません。一人の勝負です。
ピンチではあるが、パニックにはならないように努めます。

まずはATMに走りました。

現金をあまり持っていなかったのですが、こういう時には、何はともあれ、やはり現金が必要です。現ナマの視覚効果はいまだに強いです。

さあ
漁船をチャーターするか?!
航空券を変更するか?!

どちらもとんでもない金額の出費となってしまいます。

それでも、どちらの方がまだ安く済むか?

いやいや、これは考えてみても無意味です。

航空会社と漁師、それぞれから金額を聞き出さなくては、この選択肢に結論は出ません。

と、いうことは、このふたつのは状況が判明するまでに時間を要します。

それよりも、まずは20分後に来る船になんとか乗る手立てがないかを探る方が先です。それに乗れなかった時に、プランBに移ればいいのです。

まずは直近の時間的制限がある、船への乗船を試みるべきです。

港で船を待つ人たちに話しかけ、状況を説明し、チケットを売ってくれないか頼み込みます。

「自分のミスで、本当に申し訳ないんだが、国際線に乗り遅れてしまう。なんとかお願いできないか?」

と、情報は正確に、でも同情を誘うように、おそらくアンダー・アームの発声をしていたと思います。

演技をしていたわけではありません。

まじで切羽詰まってました、そして、その切羽詰まった状態を、正確に伝えようと心がけてました。

でもなかなか、3時間後の船でも良いと言ってくれる人はいないものです。みなさん次の予定がある。
そりゃそうですよね…

15人ぐらいに声をかけたでしょうか?

ついに船が港に入ってきました。

乗客たちが集まってきます。
この船に乗る手立てはもうないのか?漁船か?!

役者って、社交的だと思われがちですが、実はシャイな人が多いです。

初対面の人に頼み事をするのは、それだけでしんどいです。

それでも

「すみませーん!!どなたか私にチケットを売っていただけないでしょうか?!!」

羞恥心を捨てて、叫びました。

もちろん『三つ目の輪』で。

頭を横に振る人々。

やはり漁船か。揺れるだろうな…

いやいや、諦めるのはまだ早いです。

根気強く、目が合う人に話しかけていきます。
こんどは『二つ目の輪』です。

ついに、若い男性が

「譲っても構わないんだが、学割チケットなんだ。学生証がないと乗せてくれないと思う」

うわー、微妙な選択肢!

どうしましょうか?

ここで、乗船に際して、一番の問題はなんなのか、改めて考えます。

チケットを持っていない。
満席である。
いや、ここで一番問題になっているのは、定員を超える乗船は出来ない、という現実ではないですか?

チケットを持っていないことが問題なのではなく、その定員数に自分が入っていないという点が根源的な問題なんです。

それならば、たとえ学割チケットでも、それを譲って貰えば定員入りは出来る。

「学生じゃないと乗れないよ。学生証の提示を求められるかもよ」
「若く見えるから大丈夫じゃない?」

と冗談を交えながら頼みこみます。

彼には、正規の値段プラスアルファーの額を渡しました。
現金で。

切符は、買う種類を間違えたと言って、差額を払えばいいんです。

ふうー。

このピンチ、なんとか乗り越えました。アドリブで。

今回、私はラッキーだったのでしょうか?
いや、粘り勝ちだったと思います。

なんというか、根拠のない自信?執念?諦めの悪さ?
そしてあの学生に、救われたのだと思います。

ピンチに陥っても、最後まで諦めずに、冷静に取捨選択をし、必要に応じて表現の技術を使えば、アドリブで乗り越えられる、時もあります。

そして、なによりも、
パニックにはならない、
その重要性を再認識しました。

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