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"「海から湧き出るほど」でない現在のあり方を考える" ひみか / 立命館大学2年 / 京都チーム

THE BLUE CAMPに参加する学生たちを、それぞれがエントリー時に提出した自己紹介およびエッセイとともに紹介します。京都チームは、高校生1名、調理学校生1名、大学生5名(うち1名水産研究)の計7名です。

"「海から湧き出るほど」でない現在のあり方を考える"

今回紹介するのは 大谷一花 (ひみか) です。

彼女は大学では食マネジメント学部というところで、食を俯瞰的に文化・経営の側面から学んでいます。特に彼女が興味を持ったのは魚食文化の衰退。地方へインターンを行った際の経験を自ら振り返り、旅先での食の記憶が一つの課題解決のきっかけなのではないかと考えます。彼女は大人しい性格かと思いきや、実は地方へ自分の足で学びにいく行動的な側面もあります。行動的といえば、みんなで料理を作っている時の彼女のつまみ食いへのスピードは凄まじいです、、笑。

応募時 自己紹介

私は、海なし県である岐阜県で生まれ育ち、山々に囲まれた自然豊かな場所で暮らしてきました。学校に向かうために通学路を歩いていると、猿やイタチが道路に飛び出してきます。そのような自然と隣り合わせの生活をしていましたが、海がないため、海とは直接的な関わりを持たず過ごしてきました。

しかし、海が身近にないからこそ子供の頃から海に強い憧れを持っています。私は、生き物の動画や魚を捌く動画をみることが好きで、なにより魚を食べることが大好きです。現在私は、立命館大学食マネジメント学部で食に関する様々な課題を文化、経営、科学の側面から学んでいます。また、私は課外活動で「カノール」という学生団体に所属しています。「カノール」は、生産者と学生を繋ぐ場を提供し、人々と農の関係性を多様化させることを目標に活動しています。私は、農業をする機会を学生に提供するため、農家さんと話し合い企画書を作成したり、SNSでの発信を通して農家さんの魅力を伝えたりとカノールの運営をしてきました。

また、去年私は、和歌山県のみかん農家さんや滋賀県のオリーブ農家さん、熊本県天草郡苓北町のみかん農家さん、長崎の鹿牧場を運営するディアーカンパニーさんのもとでインターンを経験しました。インターンを通して、農業や畜産の仕事は想像以上に過酷だと感じると同時に当たり前に口にしている食べ物がこんなふうに作られているのだと実感しました。

そして、食材に関する情報をより多くの人々に伝える方法は、料理を提供する場だということに気づきました。お客様に料理を提供する際に、おいしい料理と共に生産者の想いをのせ、人々に食材の情報を届けられる人になりたいと思い、去年THE BLUE CAMPに参加していたCenciのもとで現在アルバイトとして働いています。

応募時 エッセイ 
「海と食の未来について思うこと、取り組みたいこと」

現在、地球温暖化に伴う海面上昇の被害や漁獲量減少、水産業の枯渇など様々な問題が存在し、漁業関係の未来は明るいとは言い切れません。私は、この状態が続いていくと、将来、日本の「魚食文化」は衰退してしまうと思いました。そこで私が取り組みたい事は、魚食文化を維持するために、魚料理を通してより多くの消費者に海の課題を知ってもらうことです。食の記憶で旅先の地を思い出すように、食の記憶で海の課題を思い出してもらい、消費者に問題意識を持ってもらえるようにしたいと思っています。消費者の意識が変われば、水産業を変えることが出来ると考えています。このように取り組みたいと思った理由は二つあります。

一つ目は、去年、和歌山県湯浅町で農業インターンをした際に人生で初めて食べた「生しらす丼」がきっかけです。透き通るほどの生しらすは、生臭みが全くなく、信じられないくらい美味しかったです。どうしてこんなに美味しいのか店主さんに話を聞くと、湯浅町は県内有数のしらすの水揚げ地であり、水揚げされて間を置かずに地元の職人によって釜茹でされていると教えていただきました。他にもバッチ網という漁法を使ってしらすを獲っていたり、しらすとちりめんの違いだったり、様々なことを教えていただきました。私は、「あのしらす丼美味しかったなあ」と思い返すと、今でも店主さんの話の内容を鮮明に思い出します。このことから、おいしい料理を通して、それに使われている食材の背景や現状を知ることで、食材の情報が記憶に残りやすくなるのだと気づきました。そして、情報発信の場としての飲食店の存在意義に興味を持ちました。

二つ目は、去年の11月、大学の制度を使い、福井県小浜市に訪れ、水産業や伝統食の現状を現地の方々からお聞きしたことがきっかけです。若狭湾は、リアス式海岸、山からの豊富なミネラル、海底から噴出する地下水、リマン海流と対馬海峡のぶつかる場所という好条件のおかげで、豊富に魚がとれる漁場であったため、漁業が発展しました。そのため、若狭は、古く飛鳥・奈良時代から朝廷に食糧を恒常的に献上する「御食国」として、塩や海産物など豊富な食材を都に運び、都の食文化を支えてきました。しかし、近年海面上昇や巻き網漁の衰退、乱獲、後継者不足などによって、漁獲量が大幅に減っていると聞きました。昔は、「海から湧き出るほど」獲れたと称された小浜のさばが、今では85%も年間漁獲量が減っているそうです。

私はこの話を聞き、思っていたよりも漁獲量や漁業者が減少している事実にとても驚きました。現代は情報が溢れすぎていて、必要な情報が埋もれてしまったり、正しい情報が正しく理解されなかったりすることがよくあります。私自身、小浜市に訪れる前、海の問題をネットで調べていると、情報がありすぎて結局何が重要なのかがわかりませんでした。しかし、現地に訪れ、水産に携わっている方々から海や魚に関する情報を教えていただき、水産業の課題は、複雑に絡まり合っていることを知りました。そのため、まだ私は海の問題について知らないことがたくさんあります。人に情報を伝えるには自分自身が課題を十分に理解する必要があると考えています。

今回のプログラムを通して、多様なバックグラウンドを持つプログラム参加者たちと共に学び、水産業の課題や取り組みを様々な視点から考え、ポップアップレストランの運営を実際に体験することで、今一度「海と食の未来」について見つめ直していきたいです。

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