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『アホの坂田』は『バカの坂田』やのうて『アホ』やから人気やった件

アホの坂田こと、坂田利夫さんが、昨年末に亡くなりました。
享年82歳、昨今の平均寿命から見ればまだまだお若い年齢ですが、高齢者施設で静かに息を引き取り、特段の病気ではなく死因は『老衰』と発表されています。
最期を看取ったのは、半世紀以上の親交がある間 寛平かんぺいちゃん(74歳)でした。

根っからの吉本新喜劇ファンでこの noteブログでも何度となく吉本新喜劇について採り上げておりますもので、坂田利夫さんの訃報には触れておこうと思ったわけですが、正直、私の中では坂田利夫さん(以下、アホの坂田)という芸人さんはそれほど好きな芸人さんでもありません。
小学校時代に、土曜日の4時限目が終わって走って帰宅し、袋麺(出前一丁かサッポロ一番)を食べながら観ていた『あっちこっち丁稚』に出演していた3人の丁稚、木松きいまつ寛松かんまつ利松としまつのうちの、一番ドン臭い丁稚としての印象が強いかと思います。

あと、同じく『あっちこっち丁稚』で旦那さんの五郎造ごろぞうを務めていた前田五郎さんと『コメディ№1』という漫才コンビを組んでおりましたが、1980年代の『漫才ブーム』の時には既にベテランであり、私の中高時代にはあまりブレイクすることはなかったかと記憶しています。

ただ、アホの坂田の訃報を受けてのネットでの盛り上がりを見るに、やはりお笑い界、特に関西のというか吉本興業界隈では、とてつもなく存在感のあった芸人さんだったんだなぁと思い知らされています。

ご存知の通り、『アホ』は昔から関西圏では親しみを込めた呼び方であり、『バカ』とは厳密に区別されます。関西圏の、特に昭和世代にとっては、『アホ』・『デブ』は人間扱いで、『バカ』・『ブタ』は非人間扱いなのです。
なので、関西で『アホちゃう?』『アホやなぁ!』と言われても一緒に笑って済ませられますが、『バカじゃない?』と言われると人格否定にも聞こえて本気で怒りだします。
そうした地域性の背景あっての『アホの坂田』です。

同じく大阪人のキダ・タロー氏が『アホの坂田』という楽曲を作曲(1972年)し、当人の出囃子やテーマソングとなった時も、その曲がマジで甲子園高校野球の入場行進曲に決まりかけたりしています(最終的には『365歩のマーチ』に決定)。
また、この楽曲にヒットにより『小中学校で坂田姓の子供たちへのイジメを助長する』として教育委員会が自粛を求めたというエピソードも…。
先日の通夜でも、斎場内にずっとこの曲が流れていたそうです。

一方で、『アホの坂田』初期は当人も家族も相当な葛藤があったといいます。
『アホ』はあくまでも芸風で、プライベートではそう呼ばせない。見知らぬ人から『アホ』と呼ばれるとムキになって怒り、舞台でも観客に『アホ』と言われて喧嘩したこともあったと。
母親と二人でレストランで食事をしていて、他の客から『アホ!』と言われた際に、母親は『うちの子はアホとちゃいます!』と泣いて否定したとか。
当人は、自身の芸風を固める上で相当に悩んでいたと聞きました。
彼自身、82歳まで一生独身を貫きましたが、その根底には『生まれてくる自分の子供が「アホの子」と虐められるのが辛い』ということもあったようです。
そんな人知れぬ悩みを聴き、『アホは心の優しい者しかできんのやで』と慰め、諭したのは、同じ大阪の喜劇役者である松竹芸能の藤山寛美さんだったといいます。

因みに吉本新喜劇に於いては、アホの坂田の後任の『アホキャラ』は必須ポジションであり、現在も内場勝則さん(63歳)と吉田ヒロさん(56歳)の二人が『アホボン』というキャラを確立し、自身が座長を務める公演でよく演じています。

内場さんの『アホボン』は、セカンドバッグを高い位置に構えて行進しながら登場する、ダンディなお坊ちゃま。
一方で吉田ヒロさんの『アホボン』は、髪を2つのリボンで編み、蝶ネクタイでチェック柄のスーツと半ズボンで登場する、典型的なアホアホキャラ。

どちらも、『無茶苦茶やけど、いい人』として描かれています。
これって、東京在住の『バカボンのパパ』とよく似た設定なワケですね。
まさに、西に於ける『アホ』に対して、東に於ける『バカ』を愛敬たっぷりに描いたキャラ。

さて、話しが拡がり過ぎましたので、アホの坂田に戻します。
『アホの坂田』命名も、キッカケは『コメディ№1』時代の相方・前田五郎さん。
ある日の舞台で前田さんから『お前はアホか』と言われて、『そうやアホや』と返したら滅茶苦茶ウケた!というのが最初らしいです。

その前田五郎さん、2009年に『中田カウスへの脅迫状事件』に関与していたとの報道により、タレント活動を自粛。さらに参考人として警察の事情聴取を受けるに至って、吉本興業から契約を解除されてしまいました。
本人は一貫して否定していただけに、なんとなくスッキリせずに見守っていました。

その後、前田五郎さんは吉本興業から『居なかった人』としての取扱い。これは、旧ジャニーズに於ける『もう、うちに居ないコ』との感覚、脱退者の活躍を妨害する姿勢と同じですね。そんななか時は流れて、前田五郎氏は2021年ご逝去、享年79歳。その折も吉本興業は『特にコメントはありません』という感じでした。
ここ数日の坂田利夫氏逝去のニュースに関しても、『あっちこっち丁稚』には触れざるを得ないものの、『コメディ№1』に触れた記事は殆ど見当たりません。

ただし、前田五郎氏の最低限の名誉を守る為に、嬉しい出来事もありました。

五郎氏の娘さんが二人、長女の前田真希さんは2005年、次女の前田真美はさんはその翌年に吉本新喜劇に入団し、本名で活躍しています。
どちらも『金の卵オーディション』を勝ち抜いての入団!

父親が吉本興業を追放されているだけにどうなるのか注目していましたが、お二人とも無事に新喜劇座員としてデビューし、かつ姉の真希さんは昨春に新座長に就任した吉田裕さん(乳首ドリルで有名)と2018年に結婚され、お子さんも生まれて産休明けで舞台に復帰されています。

私は、吉本新喜劇のファンであって、吉本興業自体にはあまり良い印象はありませんが、この姉妹が活躍されていることで、前田五郎氏の無念が少しでも晴らされれば…と感傷的になった次第であります。

追、
坂田利夫さんを偲ぶ特番『坂田利夫さん追悼特番』が、明日放送されるらしいですね。
大阪MBSテレビで14(日)午後2時30分から。
出演は、西川きよし・ヘレン夫妻、間寛平、大木ひびき、月亭八光ら。
関西意外での放映があるのかどうかは存じ上げません、悪しからず…

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