オイゲン0001

Jazz Bach / Eugen Cicero

「JAZZは、むずかしい…」という言葉をよく耳にします。それは、評論家の先生方をはじめ、私のようなジャズ・ファンにも問題があるのではないかと思っています。
ジャズに興味のない相手に向かって無理やりジャズを語って得意になったり、ファン同士で小難しい議論に熱中し、他の友人を置き去りにする…まったくおめでたい話です。それらは、人々をジャズから遠ざける行為に他ならないと反省している今日このごろ。
まずは楽しめればいいのです。殺風景な時間や空間に、ほんの少し色がつけばいい。乾燥した心に、ちょっとだけ潤いがもたらされれば十分。つまらなければ聴かない、気持ちよければ聴く、会話の邪魔にならなければ聴き流す。そんな感じで付き合いはじめれば、徐々に好みが育ってまいります。そして、5年も経てば小難しいジャズ講釈を語るようにもなってまいります。やめりゃいいのに…
さて、今回ご紹介するのは、オイゲン・キケロさん。耳慣れない名前はルーマニア人だからです。ガチガチ共産圏生まれの人が、何をきっかけにしてジャズに傾倒したのかわかりませんが、クラシックの名曲をジャズにしてしまう名人。しかし、偉大な作品に立小便をひっかけるような演奏ではなく、作品への敬意が伝わる、計算され尽くした見事なサウンドです。クラシック・ピアノを習っている人がこれ聴いたら「譜面を忠実にトレースするだけでなく、時にはあんなふうに踏み外して弾けたらなぁ…」と憧れを抱くような素敵な音楽を提供してくれています。
大作曲家バッハは音楽を量産してきたわけですが、その作品すべてが素晴らしいわけではなく、あくびがでるような曲も山ほどあります。それをジャズ風にアレンジしてみると、新たな生命が吹き込まれる感じで、けっこう楽しく聴くことができますよ。
この状態をSTUDIO 080 のコンセプトで表現すると、「クラシックがジャズに CIEG IN 」となるのでしょうか。このCIEG(チェグ)はポーランド語でステッチ、縫い目、縫い方という意味です。つまり、クラシックとジャズが縫い合わされて新たな音楽の魅力が生まれたわけです。
STUDIO 080は、人と人、人とモノ、人とエリアなど様々なものを縫い合わせて新たな価値を創造する場です。来年4月、仙台市宮城野区苦竹にオープンします。
オイゲン・キケロの演奏は「ジャズは、むずかしい…」という考え方をやさしく変えてくれるでしょう。年末年始、お時間があればYouTubeをCIEG!

良い年をお迎えください。

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