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長谷散歩

原稿のタイトルに行き詰まって、少しリフレッシュがてら長谷に行ってきた。

藤沢から江ノ電でゆられ、海を眺めているうちに長谷についた。前に友達とここに来たとき『うのまち珈琲』というお店を見かけて以来寄ってみたかった。

1人でゆっくりできるお店を見つけたいと前々から思っていたが、ここはまさにピンポイントをついてきた。カウンター席の目の前には本棚があって、"どうぞごゆっくりお過ごしください"と言わんばかりに本が置いてある。wifi完備でテーブルの下にはコンセントがついていて作業もできる。

先に席を取り、カフェラテを注文した。いつもならカフェラテをグビグビと5分ほどで飲み切ってしまう私だが、今日は水を挟みながらゆっくりと飲むことにする。多分カフェラテは5分で飲み切るものではない。

机の上には読んでみたかった、さくらももこさんのエッセイが6冊ほどまとめて置いてあった。家から本を持ってきていたが、「これは読むしかないな」と思い、彼女の本を手に取った。

一冊一冊つまみ食いをするように読んでいく。どの本も想像以上に面白く、1人で肩を揺らしながら笑っていた。笑い声を殺すのに必死で窒息しそうになる。「エッセイってこんなに面白いんだ」と1人で笑っている恥ずかしさより、この本に出会えた嬉しさの方が上回った。世界をこんなに面白く切り取る視点と、それをわかりやすく書いて伝える文章力に、ただただ感動したのだ。

気づいたら2時間ほどカフェに入り浸っていた。まだ読んでいないさくらももこさんの本があるから、まだまだ入り浸られるけど海にも行きたい。そろそろ日の入り時間帯で海の夕焼けが綺麗なはずだ。

名残り惜しくお店を出て、海の方へ向かった。途中、江ノ島の方で山火事でも起きているのかなと思うくらい空が赤かった。私は海のそばをゆっくり歩く。

夕焼けと青空。東の空には色が混ざったように紫がかったグラデーションが生まれている。3人組の女子高生、犬を連れて散歩している人、サーフィンをする人、親子、みんな海の空に見惚れている。

海の反対側には黄土色に光るまるい月が見えた。前も後ろも綺麗な景色に囲まれた私は、外に出てよかったと心から思った。帰り際に気づいたが、この日は皆既月食であった。それもいいが、この日の空の色の方が私は好きだった。


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