企業再生と地域再生

 私は以前、大井川鉄道の事業再生の陣頭指揮を執る立場にいた。きっかけは北海道のホテルの事業再生の経験から。ではなぜ北海道のホテルの事業再生に携わったかというと「日本の真の復興はローカルから」という思いを以前より持っていたからである。

 ローカルエリアには潜在的な経営資源が眠っている事が多く、その価値は地域の住民や企業とっては空気のような当たり前の存在になっている。しかしそれは都市部に住む方々にとっては貴重なものであり、「価値」がそこに存在しているのである。そしてその価値を地域の店舗や企業を通じて形にする事が地域再生の根幹になるのだと思いそこに参画したいと以前より考えていたからである。

 参画した北海道のホテルや大井川鉄道の事業再生に関しても私は地元出身者ではなく「よそ者」の立場にある。しかしよそ者だからこそ、空気のような存在になっている「物」や「事」に対して潜在的価値として気付きを得やすい。特に鉄道事業となると沿線には多くの人や物そして文化が存在する。また、沿線各所の思やこだわりも違う。しかし大井川鉄道という企業がそれぞれの思いや潜在的価値を繋げる事が出来ればより効率的に効果が発揮出来るのだと考えたのだ。勿論、経営再建を最優先に行わなければいけない為に企業の経営基盤を固める事が優先されたが、「よそ者」だからこその気付きで自社及び地域へ貢献出来る策を各所にて提案し、実際に沿線の魅力を伝えそして実際に地域に来訪いただくことで、地域経済に寄与できたと考えている。

 地域に根ざした企業ほど、その事業性に関連する地元企業も多い。勿論、働く従業員は地域住民。コロナ禍によりサービス業を中心に厳しい経営環境になっている現在、改めて地域を元気にするには地域経済を支える地域企業に対してより多くの支援がなされることを切に願う。何故ならば企業の再生は地域の再生に繋がるから。