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ICTは子どもたちの主体性を奪うのか


この記事の結論

  • ICTはあくまでも道具であり、善悪を語る対象ではなく、「どう使うか」を考えるべき対象である

  • 子どもたちの主体性を伸ばすためのICTの活用を考えていきたい

  • 生徒のメタ認知を促したり、評価基準を明確にすることによって、生徒の主体的に学ぶ態度を醸成することができる

ICTによって急速に変わりはじめる学校現場

近年、学校現場のデジタル化が急速に進んでいます。
GIGAスクール構想による一人一台端末の普及や、コロナ禍をきっかけに広がったオンライン授業など、学校現場でICTを活用する場面が急速に増えています。

さらには、最近話題のChatGPTをはじめとする生成AIが台頭し、文科省がスピーディーにガイドラインを公開するなど、新しいテクノロジーが学校現場に大きな変化をもたらしつつあります。

一方、こうした「教育のデジタル化」や「教育におけるAIの活用」に対して、懸念や疑いをもっている現場の先生も多いのではないでしょうか?

・夏休みの課題をChatGPTで仕上げてしまうようになると、生徒自身の「考える力」や「学ぶ力」が奪われてしまうのではないか?
・生徒がAIドリルの言いなりになって、自分で考えて勉強する力が失われてしまうのではないか?

そんな声はよく耳にします。
自分たちが「大切にしてきたもの」を、ないがしろにされるかもしれない時に、敵対心が湧いてくることはすごくわかります。

しかし、本当にICTやAIは、教育現場が「大切にしてきたもの」をないがしろにする存在なのでしょうか。

ICTは道具。「善悪」で語ることは無意味

ICTやAIに対して、"それ自体"を単純に善悪で語ることは間違いです。

ICTは、あくまでも包丁や車と同じような「道具」です。
包丁のように美味しい料理をつくることもできれば、人を殺める道具にもなり得ます。車のように、現代社会において必要不可欠なものである一方で、人を傷つけることもあるんです。それに対して「包丁は良いものか」という議論をすることはナンセンスです。

ICTや生成AIも同様で、それ自体を論じるのではなく、「どう使うと危険で、どう使うと子どもたちのためになるか」を考えていきたいですね。

子どもたちを学びの主人公にする

「教育のデジタル化は、むしろ生徒の主体性を育む役に立つ」というのが私の考えであり、Libryが取り組んでいることです。

私自身、EdTechを開発している企業ですが、「教育ビッグデータはスゴイので、AIに任せて短期的に知識が習得できればそれで良い」という考えには反対です。

教育の目標は、教育基本法にも書いてあるとおり、「真理を求める態度を養い」「自主及び自律の精神を養う」ことにあります。

学びの主人公は生徒たち自身でなくてはなりません。

ICTはあくまでその「サポーター」として、生徒の主体性を伸ばすために「活用」されるべきものです。私たちはむしろ、ICTを活用することで、子供たちの意志が引き出され、自己決定が促されるような学びの実現を目指します。

そのように、「子どもたちが主体的に学べるようになること」は、国、現場の先生、社会全体の共通の願いであるはずです。
Libryも「一人ひとりが自分の可能性を発揮できる社会をつくる」というビジョンの元に、同じ願いを持っています。

それでは、私たちLibryの、生徒の「主体的に学ぶ態度」の評価や醸成の事例を紹介します。

教育データで生徒の「主体性」を伸ばす

【注意】ここから先は学校の先生向けに書いており、専門用語が頻発しますが、ご容赦ください。

コザ高校・興南高校:「主体的に学習に取り組む態度」の評価・育成の取り組み

沖縄県にある県立コザ高校及び私立興南高校では、Libryの教育データを活用して「主体的に学習に取り組む態度」を定量的・客観的に評価する取り組みをしています。

2022年からはじまった高校の「観点別評価」は、全国の先生に話を伺うと、口を揃えて「どうすればよいかわからない」とおっしゃる非常に課題意識が高い領域です。

今回は「主体的に学習に取り組む態度」について注目して取り組みを行いました。

各観点を「教員の勘」だけで評価するのではなく「教育データ」を活用して評価することで公正に評価していくために、国立教育政策研究所から出ている「学習評価の在り方ガイドブック(高等学校編)」を参考に、各校と「自ら学習を調整しようとする側面」「粘り強い取組を行うとする側面」を定義し、それに基づいて評価を行いました。

「学習評価の在り方ガイドブック(国立教育政策研究所)」より引用

Libryの取り組み状況から、「間違えた問題に再度自分から取り組んでいるのか」や「宿題以外の範囲からどれだけ勉強したか」など、紙の教材のままでは見ることができなかった教育データを参考に、客観的な評価を行っています。

また、評価基準をあらかじめ生徒に伝えることで、生徒が「どう評価されるのか、どうすれば成績が上がるか」を生徒自身が理解できるようにしました。それにより、9割以上の生徒が「成績の付け方が明確になっている方が良い」と回答し、大多数の生徒が「評価が公正だと思う」「自分がどう努力すればよいかわかる」と、生徒自身が自分で考えて主体的に学べるようになりました。

このように「どういう行動が好ましいと考えているか」という評価基準を見せて評価をするだけでも、「公正だと思う感覚」は高まり、何よりうれしかったのが生徒様から「何を努力すれば良いのか明確だったので、勉強しやすかった」と実際の学習行動に影響を与えられたことでした!

当然、評価基準やアンケート結果は、コザ高校・興南高校で異なります。
具体的な評価基準をどう定義したのかや、実際のアンケートの結果や生徒の生の声、先生方の取り組む上での課題感などは、2023年8月に行うWebセミナーで先生から直接御説明させていただこうと思っています!(詳細はさいごに)

十文字中学校:「自律学習支援」の取り組み

次に紹介するのは、東京都豊島区にある十文字中学・高等学校が独自に開発している「J-PALM」という個別最適学習プログラムです。
校長先生の「子どもたちがこれから社会を生き抜いていくために、自分で道を切り拓けるようになって欲しい」という熱い想いから生まれたこのプログラムは、現在数学で実施されています。

「J-PALM」には、このような特徴があります。

  • 先生はほとんど授業を行わず、定期的に自分の目標や学習計画を立てて、生徒自身のペースで学習を進める

  • 生徒は友達と教え合いながら、Libryを中心としたEdTechで学習を行う

  • 先生は生徒の様子を見ながら学習の支援を行う

  • 定期的に自分の学習状況を「リフレクションシート」で確認し、自分の学習計画や目標を自己調整する

  • 定期的なチェックテストや定期考査で学習進度の最低限のペースメークを行う

生徒アンケートによると、約8割の生徒が効果を実感していました。
定期的に「リフレクションシート」で自分の学習状況を可視化することにより、自分のわからないところを意識しながら勉強したり、自らの学習状況を理解して学習計画を調整するといった「自己調整学習能力」が養われつつあるようです。

かなり新しい取り組みなので、先生も生徒も(Libryも)試行錯誤をしている中ではありますが、その試行錯誤をする先生の背中を見せること自体も、子どもたちの「主体的に学ぶ態度」や「挑戦する心」を育むと思います。

実際の成果や、実際の取り組みの中での苦労話などは、2023年8月に行うWebセミナーで先生から直接御説明させていただこうと思っています!

結論

以上の取り組み事例からも分かるように、ICTは適切に活用すると、生徒が主体的・自律的に学習に取り組むサポートができます。

最初の話に戻りますが、ICTは、生徒の学習をコントロールし、生徒の「考える力」を奪ってしまうのではありません。むしろ、生徒の主体性を育むために上手に活用していくべきもので、実際そのために非常に有用なツールとするべきです。

ICTはあくまでも包丁や車と同じ「道具」です。
でも、私たちはICTを知らなかった時代には戻れませんし、戻るべきではありません。せっかく、人類が手に入れた道具を「どううまく使ってやろうか」と考えていければ、教育はより良い方向に進んでいくと思います。

私たちのような"企業"も、先生方と一緒に「良い使い方」を模索していかせてください。

「生徒が主体的・自律的に学べるようになって欲しい」という願いは、私たちも一緒ですので、その未来を教育に関わるみんなで追い求めていければ幸いです。

【おまけ(本題)】本取り組みに関するWebセミナーのご紹介(無料)

後半、急に広告っぽくなってしまいました(笑)
今回紹介した事例は、それぞれに本当に素晴らしい事例ですので、心から多くのみなさんに知っていただきたいと思っています!
そこで、今夏、この取り組みを実践している先生に、各取り組みについて直接ご説明いただく機会をつくりました!

オンラインセミナー(無料) 詳細

■学習データを活用した観点別評価の価値と実施の手立て
 8月23日(水)15:00〜16:30
 沖縄県立コザ高等学校 與那嶺 創 先生 (生物科)
 興南高等学校 玉那覇 允 先生 (物理科)

■学習状況を可視化して生徒に自覚させることによる自律学習の促進
 8月24日(木)16:00〜17:00
 十文字中学校 星川 潤 先生 (数学科)

■ICT活用による業務負担の軽減と個別最適な学びの充実
 8月28日(月)16:00〜17:00
 山形県立山形西高等学校 白石 頼人 先生 (数学科)

申し込み方法

下記のURLからお申し込みください(事前参加申込)
https://forms.gle/aW2Yr6aLCwdhbY4W8

学校の先生はもちろん、メディアの方、教育系の企業の方なども、ぜひ奮ってご参加ください!
暑い夏が、さらに"熱い"夏になること間違いなしです!


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