ここで生きていくために、もう1人の私をつくった



私は売れないキャバ嬢だった。おねだりが下手、愛想も良くない、極度の人見知り。

ここで働くことは、上京することを目的とした大学に通いながらお金を稼げる手段でしかなかった。田舎から都内の大学に通い、授業終わりにお店に行き終電で帰るといったルーティーンだった。




女子校上がりで恋愛経験はほぼ皆無。初めてできた24歳歳上の彼はいたけど、私にとっては半分お父さんのような存在だった。

おまけに思ったことはすぐ顔に出ちゃうし、自分の気持ちに反することをすると心が苦しくなってしまう。

本当に不器用で生き辛い性格だ。



だから、ここで生きていくためにもう1人の私をつくることにした。
その私になってしまえば、本来の私ができないことも彼女ならできる。

彼女は「本来の私」ではないから。



きっと多くの人達が同じようなことをしてると思う。
仕事で、学校で、その世界にフィットできる自分に形を変えなければ、死ぬほど生きづらい。

小さい頃から不器用で、心が弱すぎて繊細すぎた私は自分を上手く変えられず、毎日が生き辛過ぎた。



小学生から高校生まで、虐められてきた。

なぜかいつも一部の女子にものすごく嫌われてきた。私がその世界にフィット出来ていなかったからだと思う。

自分の容姿が嫌いになって人に見られることすら怖くなった。

そして高校生の時に外に出られなくなり引きこもりになった。
そんな私を見たパパが激怒して、私の全身を1時間殴り続けた。泣きながら学校へ行った。夏なのに、私だけ長袖を着て過ごした。

器用に幸せそうに生きている人達がめちゃくちゃ憎たらしかった。




夜の仕事を始めてから、その気持ちがより溢れ始めた。ここは理不尽の塊のような場所だったから。

結局器用なやつが勝つ場所なんだ。何をしても売れれば良いのだ。悪どいことも全然OK。
売れればみんなに姫扱いされて、崇めて貰える。

今まで過ごしてきた環境の中で、色んな意味で1番強烈な場所だった。そして、1番フィット出来ないと感じた場所でもあった。



ただ、ここはある意味フィットしなくても結果を出せれば受け入れて貰える場所でもあるんだなと思った。

ちょっと自分を試したくなった。
もしかしたら、ここで頑張れたら自分の中の何かが変わって、世の中が少し生きやすくなるかもしれないと思った。

もう1人の私を本格的につくり始めた。

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